人生に疲れた。

そう思いながらも死ぬほどの勇気もなく、今まで通りの一日を送っていた私は、唐突に仕事を辞めた。

仕事を辞めたら人生が少しは楽しくなると思っていたけど、有り余る時間の使い方がわからないという事実に気付かされただけだった。

「よし」

蓄えがないわけではない。

また唐突に、今度は荷物をまとめると私は一人旅という趣味を始めた。

これまで一人旅なんてしたことがなかったが、思い切って外の世界に踏み出してみると、思いのほか一人旅は気楽であった。

しかしお金というものは使えばなくなる。

私は一人旅最後の地として沖縄を選んだ。

テレビの中でしか見たことのなかった青い海を見ながら砂浜で私は物思いにふける。

私は生きることへの疲れを感じていたはずで、気持ちとしてはもう死んでいたはずだったのに、いつしかそんなことを考えていたことすら忘れていた。

そしていま、眼前に広がるただただ綺麗な海が私の中に残るいろいろな想いを連れ去っていった。

心の中を満たす穏やかな青い海。

今はまだ凪。

これがまた荒れ始めた時には、旅に出よう……。





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