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フットボール的ディスクガイド Oi!編

またまた某ファンジン用に書いたものですが、記録も兼ねて残しておきます(若干改編してます)。その道の方々が山ほどいるなかで自分のような者がしゃしゃり出るのは恐縮の限りですが、暇潰し程度にご覧ください。媒体の性質上、これから入門する人に向けた内容にしてます。

Cock Sparrer / England Belongs To Me
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78年のデビュー時からフーリガンバンドとして売り出されていたというUK Oiの大ベテラン。こちらは愛するWest Hamのホームスタジアム前で撮影されたジャケがナイスな缶入りベスト盤。おいしいところはほぼ全て網羅されており、イングランド代表戦で応援歌に使われることもある「England Belongs To Me」や「Trouble On The Terraces」などフットボールカルチャー関連ソングも豊富。Oiって何から聴けばいいの?というあなたにもオススメ。

Deccaから出したがまるで売れなかったという真の1st(Shock Troopsじゃないよ)から1曲。実はAdictsより早いDroogsスタイルバンドでした。イングランド代表の試合前、荒れ狂うフーリガン達を大人しくさせる目的でこの曲を生演奏させられたっていう話をなにかで読んだ気がするんですが事実なんですかね?しかもメンバー達は皆West Hamのユニフォーム姿で登場したとか…。

Cock Sparrer / Forever画像12

COCK SPARRERの2017年作なんて…とナメ切ったスタンスで聴くと一撃で沈められますよ。20年ぶりのアルバムとは思えぬこのクオリティ、1曲目からクライマックス、まさにTAKE 'EM ALLフォーエバー…!どれだけ歳を重ねたって彼らはCOCK SPARRERなのだと再確認させてくれるシンガロング必至のキラーチューンが詰まった傑作。ちなみにWest Ham派のイメージが圧倒的に強い彼らですが、初期から在籍するSteve BruceはなんとMilwallのファンなんだとか。↑のジャケ写とか、一体どんな気分で写ってるんでしょうかね…。

Cockney Rejects / Greatest Hits Vol. II
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彼らの代表曲「Oi Oi Oi」がOi PUNKという呼び方の発祥になったというのは有名な話。West Hamのフーリガン集団Inter City Firmのなかで結成されたバンドであり、パンクとフットボールカルチャーの繋がりを示す象徴的なバンドと言えます。West Hamサポーターの間で古くから歌われている「I'm Forever Blowing Bubbles」はもはや彼らがカバーしたバージョンの方が有名なほどで、2016年に新スタジアムへ移転する際にはグラウンドで生演奏が行われ話題になりました。アルバムどれか一枚選ぶならジャケ色がナイスなこちらを。

これを初めて観たときの衝撃たるや。TOTPに出演したフーリガンはそう多くはないでしょうね。

Cockney Rejects / Goodbye Upton Park画像4

前述のホームスタジアム移転に伴いリリースされた2016年作シングル。愛に溢れた歌詞もさることながら、長年の思い出が詰まったスタジアムとの別れを惜しむメンバーたちが映ったMVはこちらもグッとくるものがあります。直筆サイン入りバージョンが公式で売られてました。

Los Fastidios / The Sound of Revolution画像5

UKのOPPRESSED等とともにS.H.A.R.P.(差別、偏見に反対するスキンヘッズ連合)シーンの代表格としても有名なイタリア・ヴェローナが誇るレジェンダリーOi / SKAバンド"LOS FASTIDIOS"。「LOVE FOOTBALL,HATE RACISM」を体現し続ける姿勢もさることながら、そういったポリティカルなとこを抜きにしても単純に曲が良い。初期はゴリゴリのSTREET PUNKスタイルが主でしたが、中期以降はRANCIDやINTERRUPTERSあたりにもリンクするキャッチーなSKA PUNKに移行しており、2017年作であるこちらも飲んで踊って楽しい1枚になっております。今のほうが音楽的にはかなり幅広い層に受け入れられそうな気がするのですが、いかんせん日本での知名度がクソ低いもんで…。そういや昔ユルネバのカバーシングルなんかも出してたそうで、フットボール周りの方で興味あれば是非チェックを。

The Oppressed / Antifa Hooligans

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UKウェールズの雄Oppressedのカヴァーシングル。この表題曲、本当は上のLOS FASTIDIOSがオリジナルなんですが、ここでは敢えて無骨さがカッコいいOppressedバージョンを…。ジャケットは欧州サッカーの応援席で旗や横断幕としてよく取り入れられるデザインでもあります。ジャケ写は1stプレスのレッド盤ですが、2ndプレスはブルー盤でジャケも水色にマイナーチェンジしてます。

Vanilla Muffins / The Drug Is Football画像7

スイスの愛すべきDRUNK ‘N’FOOTBALLラッズが残した2003年作ラストアルバム。ジャケでクリスタルパレスFCのエンブレムをパロっているのはセルハースト(クリスタルパレスのホームタウン)のスタジオでレコーディングしたからなんだそうで。COCK SPARRERにも引けを取らないメロディセンスがなにより魅力で、タイトな8ビートでガシガシ進んでいく演奏のノリはOiというよりRamone Punkのそれに近いかも。溢れるフットボール愛でマッチデイの空気感を存分に高めてくれること請け合い、アウェイ遠征の際にはぜひカーステレオのお供に。

Last Resort / A Way of Life Skinhead Anthems画像8

Millwall派も紹介しなきゃ不公平というもの。「ミルウォール・ロイ」として名を馳せたフーリガン、ロイ・ピアースが在籍していたLast Resortの1st。ロイさん、胸にデッカくMillwallのエンブレムのタトゥー入ってますからね。見た目は正直おっかないですが、非常に紳士的な方だと聞き及んでおります。Cock Sparrerあたりと比較すると燻し銀なサウンドで初めはしっくりこないかもしれませんが、「スキンヘッズとは何か」を本質的に理解したいのなら本作の歌詞を読み込んだうえで反芻するという行為は避けて通れないのではと思います。タイトルの通り生粋のスキンヘッズたちに捧げるバイブルであり、僕のような半端者が講釈垂れるには畏れ多い1枚。THE PRISONER景山潤一郎氏のライナーノーツが読み応えアリですので国内盤がオススメ。
ちなみに本作は解散後にリリースされたもので、ロイさんはのちに4 Skinsへと移籍。

The Old Firm Casuals / This Means War画像9

Rancidのラーズのバンドでしょ?くらいの認識の方が大半かと思いますが…。MLS(アメリカのプロサッカーリーグ)のクラブに応援歌を提供(2014年に7インチ化)するなど、実はフットボールにも縁の深いバンドなのです。そのうえラーズはアメリカ生まれながらMillwallのファンだそうで、彼のギターには目立つところにデッカいライオンのステッカーが。Last Resortのライブに飛び入りして4 Skinsの「A.C.A.B.」を一緒に演ってる映像もあります。また、本作収録曲「Perry Boys」のMVではメンバー全員フレッドペリーに身を包んだカジュアルスタイルで演奏しており、なるほど伊達にカジュアルズ名乗ってないな、と上から目線で感心いたしました。まあPerry Boysはマンチェスターユナイテッドのカルチャーだけどね。

The Business / Hardcore Hooligan画像10

もっといいアルバムは沢山あるんですが、企画の趣旨的にこれを。Hardcore Hooligan”といういかにもなタイトルのとおり「サウスゲイト」や「ボビー・ムーア万歳」といったレジェンドの名を冠した曲が並ぶイングランドのフットボール賛美歌集のような作品。「マラドーナ」という曲もありますが、その内容は「今じゃお前は売春婦にしかゴールを決められないクソ野郎だ!」とい うもの。絶対に神の手&5人抜きのこと根に持ってるじゃん…。フロントマンのMicky Fitzは2016年に癌のため逝去。

B.O. / DIE ELF VOM NIEDERRHEIN画像11

オリジナルは2009年リリース、つい先日再発されたばかりの恐らくオブスキュアであろうGERMAN Oi/STREET PUNK。ジャケットから見受けられる通りドイツの古豪ボルシアMGのサポーターで結成されたバンドらしく、まあ言ってしまえばそれ以上でも以下でもないのですが…。フックの効いたメロディは確かに湧き上がるものを感じさせるし、チャントをそのままOiパンクにしました!的な曲も潔くてアルバムとしては十分及第点。ただ、ピアノをバックに歌い上げるバラードは個人的にはちょっと…。

Booze & Glory / London Skinhead Crew (Singles Collection)画像12

2010年代のOiシーンを席巻したロンドン・スキンヘッド・クルーの2013年作シングル集。最近見かけないなと思いきや、中古でも高騰しつつあるみたいですね。「Drinkin’ Beer and Forever Blowing Bubbles!」なんて隅から隅までWest Ham愛に溢れたリリック、さあビール飲んで肩組んで歌おうぜ!と言わんばかりのコテコテでキャッチーなメロディ、これはまさにCockney Rejectsの正統後継者というに相応しいのではないでしょうか。昔とは若干異なるテイストながら、最新作も好内容だったので3月の来日を楽しみにしていたんですが、メンバーに癌が見つかるという予想外の事態にあえなく延期。早期の回復を祈っております。


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