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2023年8月の記事一覧

「すずめの戸締まり」にみる震災と天皇の表象可能性について

1.はじめに  2023年、日本のアニメーションは重要な転換点を迎えている。数々の日本発のアニメーションが中国や韓国を筆頭とする世界各国でこれまでにない大ヒットを記録しているのだ[1]。新海誠の「すずめの戸締まり」もその一つだ。日本で2022年11月11日に公開された本作は、中国でも公開され約8億元(約155億円)もの売り上げを記録し、韓国でも日本映画の興行収入記録を更新した[2]。    いまや世界的に人気を誇る新海誠だが、「すずめの戸締まり」という作品は挑戦的な作品

コンテンツ飽和時代、人生を着実に退屈にする「効率重視のパラドックス」を乗り越えるためのたったひとつの冴えたやりかた。

 初めに、いまから200年ほど時をさかのぼって、その時代の天才詩人ゲーテの代表作『ファウスト』を見てみよう。  この疾風怒濤の一大悲劇の主人公ファウスト博士は、万巻の書を読み尽くし、いくつもの学問を究め、その結果、「何もわからないことに気づいた」人物である。  かれはその後、悪魔メフィストフェレスをともなって現実世界で快楽や権力を追求することになるのだが、それはともかく、今日の視点でこの『ファウスト』の冒頭を見ると、さすがに時代の違いを感じないこともない。  ファウスト博士が

「三鷹の森ジブリ美術館」ツアーに参加したら日本人は私ひとりだった

世間がコロナ一色になる前の夏。 ジブリ関連の書籍を読みあさってた時期、どうしても「三鷹の森ジブリ美術館」に行きたくて仕方ない気持ちになっていた。 近所の図書館にあったジブリプロデューサー、鈴木敏夫さんの本は殆ど読んだと思う。 行きたい気持ちを全く抑えられなかったので、急遽東京旅行を決めた。 「三鷹の森ジブリ美術館」はチケットを取るのが難しい。 日時指定の予約制で、毎月10日午前10時から、翌月入場分のチケットが販売される。 「そうだ、明日行こう」のノリでは行けない美術館だ