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PWM制御回路の部品選定

 鉄道模型の速度制御はPWMが主流になってきました。DCCでも使われていますね。PWMはパルス幅変調 (Pulse Width Modulation) の事で,その名の通りパルス幅を変える事で速度を調節します。マイコンなどを使ったディジタル制御がしやすいのでファンの回転数の制御等各所で使われていますね。パルスの幅は可変ですが,パルスの周期は一定です。ではパルス周期はどれぐらいに設定すれば良いでしょうか。実験してみました。まずは駆動回路に使う部品を選ぶところから始めます。

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ディスクリートで組んでみる

 パルスを作る回路は,電動機の正転・逆転を制御するのでフルブリッジ回路を使います。スイッチング素子はトランジスタ又はMOSFETを4つ使えば実現できますので安くできそうです。あるいはモータードライバーICを使うと部品点数を減らせて小型化できます。どちらが良いかはちゃんと駆動して確認してみましょう。まずは実験という事で,トランジスタで構成する回路はハーフブリッジにしました。

 これは電動機の12V電源波形です。1枚目と2枚目はハイサイドの波形,3枚目はローサイドの波形です。逆起電力を吸収するための保護ダイオードはちゃんと入れているのですが,パルスON時やOFF時の逆起電圧が酷いですね。
 1枚目はパルスON時も一定周期でひげが出ています。使い古した電動機なので,摩耗した整流子の影響でしょうね。これで回転数を算出できそうです。
 2枚目は電動機の両端にスナバ回路を入れてみました。ひげはなくなりましたが,逆起電圧は小さいですがまだ残っています。
 3枚目はフライホイール搭載の最新動力ユニットです。波形はきれいですね。電動機の構造も変わったのでしょうか。

MOSFET

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図1 BS170 - ZVP2106A ローサイド

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図2 BS170 - ZVP2106A ハイサイド

 次はMOSFETを使ってハーフブリッジを組んでみました。使った部品は,
  BS170 (ON Semiconductor) ※N-ch
  ZVP2106A (DiodesZetex)   ※P-ch
です。図1がローサイド駆動波形で,青線は駆動信号,赤線は電動機の電源波形です。MOSFETの構造上内部に寄生ダイオードがあるので保護ダイオードは省略しました。逆起電圧はトランジスタより吸収されていますが不十分ですね。図2の様にハイサイドはピーク電圧が30V以上出ていました。

MOSFETアレイ

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図3 TPC8408 ローサイド

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図4 TPC8408 ハイサイド

 次に試したのはN-chとP-chが1つずつの2素子入りIC,TPC8408(東芝)です。こちらも同様に保護ダイオードを入れずに動かしています。コンプリメンタリなので相性は良さそうです。図3のローサイド電源波形はレンジを変えているので変化が大きく見えていますが,BS170 - ZVP2106Aの時と大差ありません。図4の様にピーク電圧が40V超えているのは問題ですが。

モータードライバーIC

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図5 LV8548MC (ON Semiconductor) ハイサイド

 電動機駆動専用のICだけあって逆起電圧がしっかりと抑えられていますね。

 この投稿でLV8548MCはPWMで休止時間が入ると書きましたが,2チャンネルある内使っていない方をブレーキ等の駆動状態にしておけば休止モードに入りません。したがって20kHz以上の信号でも使う事ができます。データシートには使える周波数範囲が書かれていないので上限がわかりませんが。

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図6 BD6231F(ローム)ハイサイド

 逆起電圧はこちらの方がさらに抑えられていますが,パルス信号に対する応答は少し遅めでしょうか。Nゲージ1両に使うにはオーバースペックなので仕方ないのですが。こちらはPWM周波数の推奨動作条件が20kHz~100kHzとなっています。

まとめ

 ディスクリートでは部品選定をしっかり行わないと難しそうなので,モータードライバーを使う事にします。モータードライバーは正転・逆転変更時の突入電流を抑える遅延回路や過電流保護回路,過熱保護回路があって安全性も高いので安心ですね。周波数を変えた実験では20kHz以下でも行いたいので,LV8548MCが良さそうです。次回は起動状態(走り出し)と周波数の関係について実験してみます。


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