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すべてはKATO DIGITALから始まった

 Nゲージを始めたのは3歳の時です。KATOのPASSPORT 220というセットでちゃんと線路の上を電気で走らせていました。そして,少し大きくなってからKATOのカタログを見ていたら気になる写真がありました。KATO DIGITALでした。

 KATO DIGITALは今のDCC (Digital Command Control) とよく似ています。線路には常に電圧をかけておき,その線路にディジタル信号を乗せて各車両を制御します。その為,列車の前照灯や尾灯,室内灯は停車中でも点灯し,同一線路上の列車を個別に動かす事ができます。そして,パソコンとつないで自動運転も可能でした。灯火類の制御もさることながら,自動運転にとても惹かれたのです。KATO DIGITAL用のソフトウェアを開発していた会社もあるようです。詳しくはTrain Commanderをご覧下さい。
 ところが,KATO DIGITALはHOゲージ用に開発されていてNゲージにそのまま適用するのは困難でした。自分で動かすより勝手に動いている車両たちをぼーっと眺めたかった,ではなく勝手に動くものが好きでしたので何としてもNゲージの自動運転をやりたいと思っていました。

 そういう思いが潜在意識としてあったのか,幸い電気は小学校2年生の理科で行った乾電池と豆電球の実験でも楽しかったぐらい好きで,鉄道でも制御機器や駅設備等に興味を持ちます。高校生の頃に白色LEDが普及し始め,室内灯に使ったら蛍光灯を再現できるから変えたい等と考えていました。
 そして大学はその様な回路設計を学べるところを選び,たまたま入れた学科に電子制御工学研究室があったのでその研究室で基本的な回路設計や制御方法を習得しました。
 就職してからも回路設計やディジタル通信等を行っていくうち,Nゲージの自動制御システムを設計するのに十分な知識と経験が得られたので本格的に開発を始める事にしました。

 KATO DIGITALはほとんど普及することなく終焉を迎えたようです。そして現在,DCCは全米鉄道模型協会 (NMRA; National Model Railroad Association) が策定した規格が事実上の世界標準となっています。同規格のDCCは日本ではKATOがHOゲージとNゲージ向けに,ロクハンがZゲージ向けに取り扱っています。
 また,車両制御以外の信号・ポイント・建物の照明等を制御する為の規格として LCC (Layout Command Control) も提唱されているようです。サイトを見ると楽しそうです。もうこの世界に転職しようかな。

 DCCを使えば基本的な事はすべて行えますが,DCCは自動運転を目的としたものではないので,PC上のアプリケーションソフトで制御を工夫する必要があります。YouTubeでDCC運転されている動画をよく見るのですが,みんな急発進や急停車を行っており動きがおもちゃの様です。こんなんで満足しているのかな?
 これは制御方法を考えると致し方ない面があります。走らせる時は列車に対して速度を指令すると,対象の車両はすぐその速度で走るように設計されているからです。パワーパックの目盛りの最小から最大までを128分割して,走らせたい速度の目盛りまでパワーパックのダイヤルを一気に回すのと同じです。ソフトによってはダイヤルの回し方をゆっくりに設定できたりするみたいですが,ディジタル信号としては設定速度に達するまでの途中の速度を細かく送信しています。これでは列車の数が増えると処理が重くなって対処しきれなくなります。

 そのままDCCを使わない理由は,現時点で252列車2249両を所有しているのですべてを市販のDCCデコーダーでDCC化すると結構高くつくのと,システム的に対処しきれない気がするからです。そもそもすべての車両を乗せられるほどの線路も持っていなければジオラマも作った事ないのですが。自作する場合は学んだ知識が活かせるというのもあります。

 自作に際しては基本的にはNMRAのDCC仕様を踏襲するのですが,列車の加速度を車上デコーダーに判断させて(デコーダーにはマイコンが使われているのでそのぐらいの処理は簡単にできます),速度指令を受信したらその速度まで設定した加速度で加速・減速するデコーダーを開発しようと考えています。
 直流電動機(DCモーター)の速度制御はPWMが一般的ですが,これも適切な周波数を探ってなめらかな発進と停車が行えるようにしたいと考えています。
 そして自動運転で一番必要なのは,駅などの停止位置に正確に停車するために自分が今どこを走っているかを知る事です。その為,列車位置の検知手段も考える必要があります。

 やる事は他にもいろいろありそうですが,まずは車両を動かすところ,電動機制御から始めていき,その開発過程をここにまとめていこうと思います。何年かかるかわかりませんが,小さい頃からの夢ですから人生をかけても良いでしょう。もし興味があれば覗いていって下さい。

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