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「五感」を大切にしたドレッシング作りに注力。時代を見据え、女性従業員の活躍にも期待。【フンドーキン醬油株式会社(前編)】

九州の醸造メーカーを中心に構成される「九州ビネガー会」。各社のものづくりへの思いを紹介するシリーズ『TSUNAGUレポート』の第3回。今回は大分県臼杵市のフンドーキン醬油。創業から161年、先端技術を取り入れながら数百年前の醤油・味噌の造り方にこだわり“九州トップブランド”を確立。近年では、ドレッシング、ぽん酢、青柚子こしょうなど人気商品を送り出しています。前半では、同社のドレッシング工場長・堺留夫さんに、ものづくりにかける思いを伺いました。


醤油・味噌に続く次の一手がドレッシング

フンドーキン醬油のドレッシング工場は、1999年に設立され、現在は従業員数78名、生産品目は約80品目に上ります。
 
昔から醤油・味噌作りには定評があった弊社ですが、昭和40年代に入った頃から、市場が厳しくなりました。技術革新で大量生産ができるようになり、醤油・味噌の価格もどんどん下がっていった。スーパー、デパートで価格競争の時代になっていったんです。そこで、注力するようになったのが醸造技術を生かした加工調味料。その一つが、ドレッシングだったのです。 
 
ドレッシングは、1985年頃から本社工場で生産が始まりました。醤油ベースの和風タイプで、具材感を出すために荒くカットした生玉ねぎを入れた「醤油ドレッシング」です。その頃は、他メーカーさんも試行錯誤しながらドレッシング製造を始めていた頃で、チルドで配送・販売されていました。その後、フンドーキン醬油は常温流通の技術を確立し売り上げも右肩上がりになりました。
 
「醤油ドレッシング」は反響が大きくて、製造すれば、その日のうちになくなるほど活況になりました。生産数量の飛躍的な伸びに合わせて工場も大きくなり、4つ目の工場として建設したのが、今のドレッシング工場。1999年のことでした。
 
私が入社したのは1979年で20歳のときです。フンドーキン醬油など、大分県内の同業者が集まって1977年に醤油製造の一貫工場が創業。その法人である大分醤油協業組合に入社したことが始まりなんです。
 
その後2001年に、フンドーキン醬油のドレッシング工場製造課長として異動してきました。それまで醤油造りは長年手掛けてきたものの、ドレッシングは全くの未経験。まずフンドーキン醬油のドレッシング造りを覚えようと、それだけで一生懸命でした。


「手づくり感」と「生醤油」の風味を大切に

ドレッシング工場では、できるかぎり「手づくり感」を大切にしています。ドレッシングに入れる玉ねぎ、ニンニクは手でカット。土がついたものを仕入れて、当日原料にするものをその日にカットすることで、野菜本来の風味、食感を残すことができ、さらに原料のチェックもできるのです。

そしてドレッシングには「生(なま)醤油」を使用。「生醤油」とは加熱をしていない醤油のこと。すぐそばの自社の醤油工場から、搾りたての醤油が手に入るメリットがあり、新鮮で搾りたての「生醤油」の風味を活かしたドレッシングができます。
 
さらに原材料は複数の生産地から調達しています。玉ねぎは1年中使うので4月から九州産、10月からは北海道産など、他にも関西、北陸、関東周辺から仕入れ年中新鮮な玉ねぎを使用しています。

「手間をかける」。これがフンドーキンの伝統ですね。ドレッシングは一つの「料理」。基礎調味料とは言えない。ドレッシングが調味料の集合体なので、ある意味「料理」なんですよね。工場の従業員にも「料理をつくる感覚で、ドレッシングを造るように」と言っています。


人気の「ごまドレ」「ウェルサポシリーズ」

「深煎り焙煎ごまドレッシング」など、「ごまドレシリーズ」はロングセラー商品。これは、ごまの風味を生かすために、仕入後、自社ですりごまにしているのが大きな特徴です。香りが全然違う。容器に充填する直前に、香りを閉じ込めたすりごまを入れることで、香りが一際立つんです。それが人気で、当社の代表的なドレッシングの一つとなっています。

 
「ウェルサポシリーズ」も人気です。「ウェルサポ糖質50%オフ 完熟オリーブとハーブのドレッシング」など、女性や健康を気にしている方にも「おいしく食べられるドレッシング」に開発した商品です。油量を調節しながらも物足りなくならず、野菜サラダがおいしく食べられるようにと。

同シリーズの「フルーツドレッシング」はインバウンド向けに開発された商品。APU(立命館アジア太平洋大学)と共同開発して「ドレッシングの枠を超えた商品」として話題になりました。ラズベリー、パッションフルーツなどそのまま飲み物にできるぐらいで、工夫次第でいろいろな料理に使える商品です。
 
これらの商品全般は本社の開発チームが企画しますが、工場で製品化する際、味、工程に不都合が起こる場合もあります。小さな鍋、釜ではできるが、大きなロットでは思ったような風味が出ない。
 
それを開発チームと製造の我々で、実際のプラントを前にやり取りしながら、ボトリングできるように考えていくわけです。初回のテスト製造から、3回製造までに問題点をクリアしないと商品にならない。フンドーキンの開発チームが企画する商品の完成度は元々高いので、それを我々製造がどう実現させていくか。それが工場の仕事なんですね。


「五感」を養うため、試食を毎日行う

工場でのものづくりでは「人の感覚を大切にしたい」と考えています。今は成分規格があり、そのための分析機器がたくさんありますが、それだけではなく「五感」を大事にして商品を造っていこうと。そんな従業員の「五感」の一つ、「味覚」を養うため、試食は毎日行っています。今日自分がつくった製品に間違いがないかどうか、担当者全員で試食する。様々な味の要素を皆それぞれがチェックしていきます。

さらに「想像力」を持つことも重要。作業者と品質の危険を察知する、新しい技術を開発する、もっと安定したものづくりを研究するなど、常に考え想像することが大事で、従業員にもいつも言っています。
 
これからは若い人たち、とりわけ女性に活躍してもらいたい。食に携わる上で、女性の感覚はとても大事です。女性に愛される商品でないと未来がない。現在、フンドーキン食品科学研究所チームも半分以上が女性ですし、工場も約半数が女性です。将来的には、現在4つあるフンドーキン醬油の工場でも女性の管理職や女性の工場長が活躍できる時代が早く来てほしい。私はそう思っています。
 
―前編 おわりー

(プロフィール)
堺 留夫 さかい とめお
フンドーキン醬油株式会社 取締役 ドレッシング工場工場長。1958年生まれ。1979年大分醤油協業組合に入社。その後、2001年フンドーキン醬油のドレッシング製造課長に就任。その後、大分醤油協業組合理事工場長、ドレッシング工場工場長として、人の感覚を大切にした製造管理を行っている。

●フンドーキン醬油㈱ホームページ
https://www.fundokin.co.jp/ フンドーキン 検索

●フンドーキン醬油株式会社 公式note
https://note.com/fundokinnews/

●公式インスタグラム
https://www.instagram.com/fundokin_shoyu/