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【毎日読書感想⑦】パンデミックの文明論

最近購入して読んだ本です。

ヤマザキマリさんと中野信子さんによる、古代ローマから現代の新型コロナまで、東西の感染症をテーマにした対談を一冊にしたものです。

感染症を軸にさまざまな分野についても言及されています。読み物としても面白く、お二人の博識や見識の深さ、洞察力に感銘を受けました。

常に学ぶ、考える、議論する姿勢は本当に大切ですね。

さて、私が印象に残ったのは中野さんが「蘇民将来」という日本の民間伝承について説明している箇所です。

ある旅人が裕福な家に立ち寄って、一晩の宿を乞うた。ところが、その家の家長は裕福であったにもかかわらず、旅人を追い返してしまった。しかし、家長の兄である蘇民将来は、貧しいけれど、旅人をこころよく迎え入れたのです。その旅人は実は神で、兄は福をもらったのに対し、裕福な弟は災いをこうむった。ここまでだとよくある因果応報譚なんですが、それから、人々の間で「蘇民将来の子孫」と書いた御札を貼っておけば、疫病がよりつかないと言い伝えられているというのが面白いところです。日本人にとって疫病は「避けるもの」であって、「戦うもの」ではないようですね。(P.53)

中世からヨーロッパでは、感染症を敵だとみなし、戦う対象としてとらえるのに対し、日本では昔から戦う対象ではなく、天災と同じように避けるもの、やり過ごすものなのではないか。マスクが受け入れられているのも、疫病に見つからないように顔を覆うという感覚があるのではないかと語られています。

蘇民将来の伝承について知らなかったので、ひとつ勉強になりました。そして、感染症に対する東西でのとらえ方の違いも、「ああ、なるほどな」と感じるところがあります。




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