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多様性は、うんざりするほど大変だし、めんどくさい。けど

有名なこの本を読みました。

「ぼくはイエローでホワイトで、ちょっとブルー」

綺麗事でもなんでもない“多様性に富んだ”現実を、
鋭くやさしく描く一冊。

年齢も住む国も違う
遠いイギリスの中学生の物語が
そのまま私たちの問題になるってことを
やさしく提示してくれたのでした。

印象的なエピソードをいくつか引用して
ご紹介したいと思います。


世界の縮図のような「元・底辺中学校」での日常を描く、

落涙必至の等身大ノンフィクション。

優等生の「ぼく」が通い始めたのは、人種も貧富もごちゃまぜの
イカした「元・底辺中学校」だった。
ただでさえ思春期ってやつなのに、毎日が事件の連続だ。
人種差別丸出しの美少年、ジェンダーに悩むサッカー小僧。
時には貧富の差でギスギスしたり、アイデンティティに悩んだり。
世界の縮図のような日常を、思春期真っ只中の息子と
パンクな母ちゃんの著者は、ともに考え悩み乗り越えていく。

Amazon 紹介ページより一部抜粋

多様性とはずぶ濡れになること

多様性とは

この本には文字通り多種多様な人(子ども)たちが登場し、
人種差別的な発言をしたり、いじめがあったりします。

ここで書かれていることは
多様性の尊重=いいこと
人種差別=悪いこと
みたいな二元論ではありません

経済的格差、教育環境の違い、人種の違いは歴然と存在します。
その上に、
偏見、差別、固定観念、文化といった個々人のモノの見方が
複雑に網のように絡まって、この社会を形作っている。

善し悪しは置いておいて
それが現実としてそこにあるのです。
網のように誰も逃げられない。

この本で描かれているのは
その現実の避けられない絡まりの中で中学生のぼくはどうするのか?
ということです。

それは、ある時は「ずぶ濡れになること」でした。

中学生の決断


中学生の「ぼく」はある時、雨の日の学校までの送迎をめぐって
板挟みにあいます。

学校まで送ってあげるという親切な申し出はそれぞれ
人種差別丸出し美少年ダニエルの、お母さんと、
貧困家庭で喧嘩っ早いティムの、お兄さんから。

ティムとダニエルは仲がよくありません。
お互い人種や出身を差別し合う2人。

ぼくとしては、雨だし、車で送ってもらいたいのは山々・・・。

でも、
ぼくは結局、歩いて学校に行くことを決めます。
ダサいので傘はささない中学生男子の後ろ姿を見て、

「どうやら息子にとって、
今のところ多様性とはずぶ濡れになることのようである」

というのはそれを見た母ちゃん(著者)の言葉。


誰の肩も持たない、誰の味方もしないことは
痛みを伴う。

”多様性の中で偏らず中立を保つ”
美しいし、かっこいい、私もそうありたい。

ああ、だけど、
それにはずぶ濡れになる覚悟が必要なんだなあ、と

偏らず生きるために
魅力的なオファーを断り、
雨の中ずぶ濡れに行けるのか?
私は?

自問させられるエピソードでした。

ユニフォーム・ブギ

ある時、母ちゃんは、
古い制服を補修して貧しい学生に渡す
ボランティアをはじめます。

貧困家庭のティムが
肘の擦り切れた制服を着ていることを思い出したぼく。

母ちゃんが直した制服をティムにあげたい
と思うのですが、そこではたと困ります。

「でも、どうやって渡せばいいんだろう」

普通に渡したらティムは傷つくだろう、
と、ティムの気持ちを想像します。

母ちゃんも一緒にあれこれ悩んだ末、
これ!という案はないものの、
彼を家に招待し、自然な流れで持って帰ってもらうチャンスを狙うことに。

が、結局うまくいかず、
帰り際にぼくが玄関で制服が入った紙袋を差し出します。

「ティム、これ持って帰る?」

「でも、どうして僕にくれるの?」

母ちゃんがハラハラ見守る中、ぼくの答えは

「友だちだから。君はぼくの友だちだからだよ。」

サンクス、と答えて帰るティム。

途中、何度か目をこすりながら歩く後ろ姿が見えます。

それを見てぼくは、

「ティムも母ちゃんと一緒で花粉症なんだよね。晴れた日はつらそう」

相手のプライドを守ること
相手がどんなバックグラウンドだろうと
傷つけてはいけないプライドがあるということ。

制服の渡し方から花粉症に至るまで
中学生のぼくの、それを深く理解した発言と行動に
私は唸ってしまいました。

自分と異なるほど、
相手のプライドへの配慮は難しくて重要で、
とても繊細なもの。

押し付けないように優しくするのは難しいから
優しくすることさえ諦めてしまうこともあります。

だけれども、相手の心まで守れる優しさは
やはりとても尊いと思ったのでした。


誰かの靴を履いてみること


ここまで書くのに本を読み返しながら
もっともっといろんなエピソードを振り返りたくなりましたが、
この辺にとどめて。
心に残ったフレーズを一部抜粋することにします。

多様性は、うんざりするほど大変だし、めんどくさいけど、無知を減らすからいいことなんだと母ちゃんは思う。

でも、よく考えてみれば、誰だってアイデンティティが一つしかないってことはないはずなんですよ。

EU離脱や、テロリズムの問題や、世界中で起きているいろんな混乱を僕らが乗り越えていくには、自分とは違う立場の人々や、自分と違う意見を持つ人々の気持ちを想像してみることが大事なんだって、つまり、他人の靴を履いてみること。

全て本書より引用


いつでも、一度誰かの靴を履いてみることが
そして、無知を減らすことが
優しくなるための第一歩なのだと思います。

おわりに


人種が違う
所得が違う
肌の色が違う
ルーツが違う

多様性って一言で言っても本当に様々な切り口があります。
この本で出てくるのはありとあらゆる多種多様なひとびと。

私がこの本を読んだきっかけは、コーチに紹介されたことです。
理想の姿について問われた時
どんな価値観も受け止める人間でありたい」
答えました。
それならばこの本いいよ、と紹介してもらったのでした。

私の生きている社会は、「ぼく」の中学校と比べたら
均質な世界です。
うんざりするほど大変だし、めんどくさい、ことを知らない。
だから、むしろ
そこを飛び出したいと思っている自分がいます。
もっと色々な人と出会いたい。

ただ、いざ飛び出した時、
理想の「多様な価値観を受け入れる私」でいられるのか?

相手の価値観に寄り添い、偏らず、
思いやりを持って、中立に、
振る舞うのはどうしたらいいのか?

そんなことを考えていました。

この先色々な価値観の人と出会っても
どこまでもニュートラルに、接することができる人
それが私の理想です。

そんな私に、いつも優しく真ん中にとどまる
「ぼく」の姿はとても眩しく見えたのでした。

続編もまた読んでみたいと思います。

ここまで読んでくださったご縁に感謝して。終わり。

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