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日本強化書:消費税ゼロの方法を考えてみた(9)

政治資金のウラ金問題で安倍派(清和政策研究会)の五人衆(松野博一官房長官・西村康稔経済産業相・萩生田光一党政調会長・高木毅党国会対策委員長・世耕弘成参院幹事長)の更迭が噂され、東京地検特捜部も動いていると言われています。

そんな中で宏池会という別派閥ですが、岸田内閣の支持率は12月NHK調査で23%と先月より6%下落し発足以来の最低支持率を更新中です。戦後の内閣で支持率25%を切った内閣は半年程度で100%倒れていますので、岸田政権は「すでに終わっている」と言えます。ご本人の名誉のためにも、せめて残された期間はまともな功績を残してもらいたいと願います。

岸田派の宏池会ですが、別名「広島財務省」とでも呼べそうなほど、広島出身の財務官僚ばかりです。加藤勝信(元厚労相)・後藤茂之(元経済再生相)・寺田稔(元総務相)・小林鷹之(元経済安保相)・木原誠二(幹事長代理)の各氏などです。まあよくもこれだけ増税メガネを集めたものです。

プライマリー・バランス

財務省の主張はプライマリー・バランス(基礎的財政収支)の正常化と国債残高の縮小です。それ自体は正論で、歳入の範囲で歳出をしなければいけません。なにしろ、財政法第4条で「国の歳出は、公債又は借入金以外の歳入を以て、その財源としなければならない」とし、国債の発行を原則として禁止しているのですから。

えっ?国債発行してるじゃんて? そうです、それは同条の但し書を悪用しているんですよ。「公共事業費、出資金、そして貸付金の財源について、公債や借入金を認容する」という但し書で、国会議員の良心の呵責から「建設国債」というポジティブなネーミングにして自分に言い訳しながら発行したのです。理屈は「これらの支出が消費的支出ではなく、国の資産を形成するための支出であり、しかも、こうした資産から国民が得られる利益も長期にわたるから、将来の世代に相応の負担を求めてもよい」という悪魔のようなご都合主義で、世界でも例を見ない国債が発行されることとなったのです。まあ、戦後の復興の段階では税収も少なくインフラ整備も必要なので容認するとしましょうか。

しかしさらには、禁断の赤字国債に議員たちは手を出しちまいました。1964-1965年の山一證券破綻寸前になった大型不況で「特例法によって赤字国債発行」。1973年にオイルショックで「特例法によって赤字国債発行」。それ以降、ほぼ毎年のように「特例法によって赤字国債発行」となって今にいたる訳です。なんのこっちゃ!

それで1989年に導入されたのが新たな財源の「消費税」。3%からスタートしました。「消費して景気に貢献してるのにナンデ税金払わにゃいかんの?」普通そう考えますよね。そして段階的に税率が引上げられ、とうとう現行の10%です。

歳出を減らし、歳入を増やす王道

宏池会は発足当初は何らかの崇高な理念があったのかもしれません。しかし、私の目には「財務省(旧大蔵省)出身者が自己の権益を保持するために他の派閥や省庁、大企業と税制や予算枠の貸し借りをやっているだけ」としか映りません
その良い例が、租税特別措置法での大企業優遇です。大企業から27億円の献金を受けた見返りに大企業に対する優遇措置での効果は1兆円を超えるという話もあります。いずれこの辺りは議員か司法がメスを入れてくれると期待します。

ここでは単純に「どの歳出を減らし、どう歳入を増やすかについての私見」を述べます。

令和5年度予算
歳入 114兆3812億円
個人所得税 21兆480億円
法人税        14兆6020億円
消費税  23兆3840億円
公債金        35兆6230億円
その他         19兆7242億円(特別法人事業税2兆円含む)
歳出 114兆3812億円
社会保障関係  36兆8889億円
公共事業    6兆600億円
文教科学振興     5兆4158億円
防衛関係    10兆1686億円
経済協力費               5114億円
その他     13兆6870億円
地方交付税  16兆3992億円
国債費    25兆2503億円
歳出はこのままでは分からないので公務員の給与を見てみます。
国の公務人件費 8兆3975億円
国家公務員    5兆3008億円(58.1万人)
行政機関           3兆983億円(30.2万人)
自衛官・他    2兆2025億円(27.9万人)
地方公務員の人件費 20.2兆円(231万人)
すべての公務員(国+地方) 25.5兆円(289.1万人)

個人の所得税か又は消費税分がすべて公務員の給与等に使われています。それ以外の関係費は赤字国債で賄われている構造です。

  • これを見ても「行政のスリム化と公務員の削減が歳出カットの最大テーマ」であることが分かります。以前にLGBTのような不要な法律が1本増えるだけで、それを執行管理する行政組織が増えて歳出が発生すると書きました。既存の肥大化した法律体系をスリムにしないと行政のスリム化はできません。

  • 人手不足と言われる中で、公務員を民間に転籍させることが必要だと思います。それは、派遣労働者96万人と公務員289万人のうちの3割を正社員として民間に転籍させることで、外国人労働者182万人をゼロにしてもカバーできてしまう施策です。

  • しかし、消費税をゼロにしようとすると23兆円の税収がなくなるのでそれをどのようにカバーするかが一番問題です。

消費税に代わる新税

消費税は幅広く課税し徴収できるとしていますが、一方で消費という経済行為に抑制的効果をもたらしデフレ的圧力を高めます。私は「流動資産税」が望ましいと考えています。しかも「個人ではなく法人に限定」です。具体的には預貯金に対する課税で、将来の備えとして必要な雇用安定準備金や設備投資準備金などの控除対象の準備金を新設し、それ専用の銀行口座勘定を新設して、その準備金口座以外の法人の普通預金に毎年5%課税します。

民間の事業法人の現預金残高は2021年時点で320兆円あります。そのうち資本金10億円以上の大企業だけでも79兆円あります。仮に320兆円の半分が課税対象となって5%の課税をすると8兆円の税収となります。また民間ではなく、公的非金融法人の現預金残高も13.4兆円あります。これらは日本たばこ産業、NTT、日本中央競馬会や地方の公営事業などです。これを同様に加えると3350億円の税収となります。

次に、租税支出です。租税特別措置法は典型的な大企業優遇税制です。あるシンクタンクの試算では租税特別措置法による減収額は国 1兆4700億円、地方 4600億円で合計 1兆9300億円に及びます。これらは軽減税率や税額控除、準備金の損金算入、圧縮記帳、特別償却などの形で恩恵が付与されます。これには2つの問題があります。①企業間に不公平な格差が生じることです。例えば、減収額が最大である研究開発税制は、その恩恵を享受するのは全ての納税法人約109万社のうち1万社程度であり、業種別では適用額の80%が製造業(輸送用機械、化学、製薬、産業用電気機械)に集中し、サービス産業の適用は少なくなっています。②法人税率が国際競争力の観点から歴史的に引き下げられたにもかかわらず租税特別措置法が残っている点。1989年時点で資本金1億円以上の法人税率は40%でした。海外諸国との競争力を考え引き下げられ現在は23.2%です。現在は祖特法は不要です。こんなモノが残っているのは、政党交付金が作られたのに相変わらずパー券で政治献金をもらっている感覚と同じと言えます。

この祖特法廃止を加えれば、10兆3000億円程度の税収増が可能となる計算です。それでも消費税ゼロにするには13兆円ほど足りません。
これに先ほどの公務員3割転籍をすれば、歳出は7兆6500億円減ることになり、実質の不足額は5兆3500億円まで縮まります
また、何年も垂れ流してあまり効果がないODAを減らせば経済協力費から3500億円は可能かもしれません。(私個人的にはアフリカ支援など何十年も資金援助しても一向に国づくりが改善しない国は資金援助しても無駄だと思っており、本来は先進国に移住して成功した黒人が帰省して国づくりに励むべきだと思っています。)

いずれにせよ、これで不足は5兆円です。そして最後の聖域は宗教法人を含む公益法人です。2001年時点で古い数字ですが、すべての公益法人の資産は126兆2218億円です。ここに前述の「法人流動資産税」を課税すれば概ね賄えることになります。

以上、何のしがらみもなく荒唐無稽な話をしたかもしれませんが、これくらいドラスティックにしないとならないと思います。消費税10%がゼロになれば、単純計算で消費は1割伸び税収は1割増えるかもしれません。しかし、ここではその効果は計算に入れていません。その分のプラスのおまけは国債の繰上げ償還に使ってくださいね。



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