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浦島坂田船夏ツアー静岡公演は最高だったって話をさせてください。


2019年、過去最多公演、ファイナルは幕張メッセでの夏ツアーを無事完走させた浦島坂田船。
次なる目標はアリーナ。2020年の夏は7周年目のアルバムを引っ提げてアリーナツアーを回る、はずだった。

2020年2月頃から流行した某憎きウイルスによって、開催が決定していた春ツアーも予定されていた夏ツアーも全部が無くなった。
悲しみと虚無感と悔しさと、色んなマイナスな感情から救ってくれたのは、浦島坂田船の配信や動画投稿やツイートや彼らの言葉だった。

苦しい1年間を乗り越えて2021年春、1年ぶりの対面ライブが実現し、夏にも大規模なツアーが決定した。
日常が戻ってきた、と喜ぶのも束の間、またもや某ウイルスの影響で、ツアーファイナルだった幕張公演が延期となる。
年末まで引き伸ばされた夏ツアー、その終演後には12月だというのに夏ツアー完走がトレンド入りした。

そして長い夏が終わり、すぐに春が来る。全国のホールやアリーナを回る春ツアーが始まる。
令和浪漫の衣装に身を包み全国を駈けるツアーは、終盤まで好調だった。春こそ何事もなく最後まで、と思った矢先。バンドリーダーであり、浦島坂田船のマネージャー的存在でもある、坂田さんの言葉を借りるなら「浦島坂田船のマブダチ」であるSumさんがコロナウイルスによりファイナル直前で離脱。
ツアー自体は完走を果たすも、「次こそは全員で!」という気持ちも強く残るツアーになった。

そして、2022年、夏。
悲願のアリーナツアーが開催される。

オリコンチャート1位を獲得したアルバム「Toni9ht」を看板に、全国8ヶ所14公演を回るアリーナツアー。
2021年の春ツアーや2021年のハロウィンライブでも演出を手がけた志麻さんが総合プロデュースした今回の夏ツアーは、どの公演も、どの席から見ても、全力で楽しめる、ライブに来た全員が幸せになれるライブとなった。

仙台公演を皮切りに、順調に進む夏ツアー。複数の公演に参戦するcrewたちは、手元に増える特典のピンバッジを並べてニヤニヤしたことだろう。

9月7日に9周年を迎え、10年目を走り出した浦島坂田船。何年目を迎えても変わらない仲の良さやファンを想ってくれる気持ちと、毎年毎季節変化し、進化していくライブパフォーマンスや演出。
浦島坂田船なら、このままどこまでもいける。

そして迎えたツアーセミファイナル、静岡エコパアリーナ公演1日目。

神奈川住みで財布の中身に余裕の無かった私は、地元から在来線を4時間ほど乗り継いで静岡の地に降り立った。
同じく財布の中身に余裕のない連番3人と在来線の車内で合流し、財布の中身に余裕が無いことを理由に某激安イタリアンで昼食を頂いた。静岡の有名なハンバーグや餃子は、ライブ終演後や明日食べようと話し、胃袋にミラノ風ドリアを詰め込んだ。

会場に着いてみると、思ったよりも風が強かった。
推しのぬいを痛バの中に仕舞い込み、前髪とメイクが崩れないように傘を最早盾にして、山の上に聳え立つエコパアリーナを目指す。ようやく入場口付近に着いた時には、前髪は濡れてぺちゃんこになっていた。

会場内のトイレでツアーグッズでもあるアロハTシャツに着替え、ペンライトを準備したらいよいよ公演が始まる。連番4人お揃いのアロハが横並びで、それぞれ推しの色を灯していく。時に双眼鏡で推しの顔面やら脚やらをガン見し、時に推しすら見えなくなるほど全力でペンラを振り、時に手が爆発するんかというほどのどデカい拍手をかまし、時に衝撃のあまり膝から崩れ落ち、時に止めどない涙を流しながら心の中で愛と感謝を叫んだ。

ライブ、超楽しい。
参戦すると語彙力と記憶力が吹き飛ぶのはどのオタクも同じなのだろう。終演後、もしかしたら夢?幻覚?と連番たちとたった今起きていた事実を確かめ合う。

会場に微かに流れるToni9htの曲たちを聞かながら、規制退場で呼ばれるのを待つ。その間にスマホの電源を入れて、Twitterを開いて、としようとした時、普段とは違うアナウンスが流れた。

「現在会場付近に雷雲があり危険ですのでお席でお待ちください」

記憶力が雑魚なので正確には分からないが、このような旨をスタッフさんが繰り返し伝えていた。確かに、ライブ最後の挨拶の際、会場外から雷の音が聞こえていた。外の様子はまるきり分からないし、ひとまず座席で待つことにする。
が、いくら待っても雷雲は去る様子がない。外はバケツをひっくり返したような大雨。
どうしようにも出来ない状況下、会場では待つことしかできないcrewたちと、お待ちくださいと繰り返すスタッフさんと、流れ続けるToni9htの曲たち。
ライブの感想を言い合ったり明日の予定を話したりしてるcrewたちの頭上で、楽しげな声が響く。

「足踏みしてないで!」

うらさか曲の「どっちつかずLOVERS」の坂田さんの一節。可愛いコールに拍手でレスポンスを返す、去年の「生涯ライバル」に続いて遊び心のあるこの曲。

この一節を聴いたcrewたちは、皆一斉に曲に合わせて手拍子をした。何回何十回と聴いたフレーズで自然と身体が動くように。

「もっとClap your hands!」

もっと、もっと!曲に合わせたピッタリとそろった拍手に、思わず会場中から歓声があがる。
さらに粋なことに、音響さんが音量をあげ、照明さんがライトを使って誰もいないステージを輝かせる。
次々流れる曲に合わせ、crewたちはペンライトやぬいぐるみなどを持ち、立ち上がって踊り出す。アルバム以外の曲も流れ出し、仕舞いにはカメラが登場し、自由に踊るcrewたちをステージ横のモニターに映し出す。映されたcrewは喜んだり照れたり決めポーズをしたり推しの写真をスマホに表示させてアピールしたり。会ったことも話したこともないような人達が、間違いなく一体となった時間だった。

結局、私と友人たちが会場を後にしたのは終演後2時間ほど経った頃だった。その間一瞬たりとも退屈することなく、スタッフさんやcrewのあたたかさに触れ、感動さえ覚えた。

会場を出た後は、ただひたすら雨の中を歩き耐えた。タクシーを待とうにも列は一向に動かない。在りし日のひきフェスの物販より動かない。電車は全て止まっていて、コンビニには人が溢れかえる。
結果私たちは、会場から歩いて40分ほどのホテルに滞在することになった。街灯も無いような山道を進み、ホテルの看板が見えた時は何よりも安堵した。

それぞれ推しの配信やツイートやLINEやボイスメッセージに励まされながら、明日のためにも早くお風呂に入って早く寝よう!と慌ただしくホテルの部屋であれこれしている最中、通知が鳴る。

「9/24(土) 「浦島坂田船SUMMER TOUR 2022 Toni9ht」静岡エコパアリーナ公演 台風15号に伴う開催実施に関するお知らせ」

オタクの心臓はお知らせとかご報告とか、そういう文字列に弱いので勘弁してほしい。恐る恐る貼られた画像を見ると、明日の公演については、朝10時に発表するとのこと。
急いで天気予報アプリを開くと、台風のピークは既に過ぎようとしており、明日はむしろ晴天らしかった。

「明日晴れるらしいからいける!大丈夫!」

そう言葉をかけ合って、私たちは狭いベッドに身を寄せあって眠った。

翌朝、8時57分、まだ回らない寝起きの頭でその通知を見た時、私は自分がどんな顔をしているか分からなかった。
ただ、画像の真ん中辺りに書かれた「中止」の文字をぼんやりと見つめて、誰も何も言わないホテルの一室で、音もなく涙を流した。

悲願のアリーナツアー、待ちに待ったファイナル公演。何事もなく進んで、その船旅は順調だったはず。
それなのに、どうして。彼らがどうしてこんな。

そんな感傷に浸る時間は私たちにはなかった。今いるのは山の中のホテルで、駅までのタクシーも駅から自宅までの電車もない。今日中に帰れるのか?帰れなかったらもう1泊?ホテル今から予約して、明日のバイトは代打を探して、家族に連絡もしなきゃ、と溜まる不安で頭を回す。
友人やフォロワーの安否が知りたくてTLを見たりパブサをしたりすれば、推したちに対する外野からの攻撃的な言葉が目に入って、思わず枕を握りしめた。

奇跡的に捕まったタクシーで駅まで向かい、奇跡的に乗れた新幹線に乗って、私たちはなんとか地元まで帰ることができた。
新幹線を待っている時に、スマホの時計が15時を示した。本来なら、と考えてしまうのは仕方の無いことだった。

友人と別れ、家路に着く。
ひとりになると途端に涙が溢れてきて止まらなくなった。

ツアーをファイナルまで見届けたかった、何事もなく終わって欲しかった。けれど今こうして地元に辿り着いたことへの安堵。昨日大嵐の中優しくしてくれた会場のスタッフさんや、コンビニの店員さんや、ホテルのスタッフさん、忙しい中丁寧に声をかけてくれたタクシーの運転手さん、たくさんの優しい人たち。現場を実際には何一つ見ていない人たちの冷たい声。情報を回して見えない誰かを助けようとするTL。イヤホンから流れる浦島坂田船の曲たち。フラッシュバックする昨日のライブの光景。

後悔も、悲しい気持ちも、悔しい気持ちも、山ほどある。
けれどそれよりもずっとずっとずっと、感謝や愛情や尊敬や、言葉に出来ないプラスの感情の方が大きかった。

私はきっと、この2日間のことを生涯忘れないと思う。
静岡に来なければ、知ることのなかった優しさや感動がある。
浦島坂田船に出会わなければ、知ることのなかった縁や感情が沢山ある。

浦島坂田船夏ツアー2022 Toni9ht、静岡エコパアリーナ公演は本当に最高の公演だった。
浦島坂田船、ダンサーさんバンドメンバーさん、浦島坂田船運営スタッフの皆さん、エコパアリーナの運営スタッフの皆さん、様々な支援をして下さった掛川市の方々、タクシーやコンビニやホテルなどのスタッフの方々、共に静岡にいたcrew、遠く家から声をかけ続けてくれたcrew、全てに感謝の気持ちが溢れている。

インターネットには様々な声がある。
ひとつの悪意がたくさんの善意を食い潰すことだってある。

だからこそ私はもう一度、胸を張って言う。

浦島坂田船夏ツアー2022Toni9ht、静岡エコパアリーナ公演は本当に最高の公演でした!


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