生活保護はお金を渡すだけの制度じゃない!?
菅首相の発言でも注目された生活保護についてソーシャルワーカー的視点で少し考えてみました。
※以下は、”私が”ソーシャルワーカーとして考えていることです。
ソーシャルワーカーは生活保護をどのように見ているのか。
私たち(多くの)ソーシャルワーカーにとって生活保護の見方は、医療保険や介護保険といった社会制度のひとつとして取り扱っていることがほとんどではないでしょうか。
生活保護を利用することは権利であり、健康で文化的に生きるための保証や安定が得られる公的な制度です(公助のセーフティーネット)。
私自身もソーシャルワーカーとして活動する中でいわゆる生活保護のケースを受け持つことも多くあります。
病院であれば生活保護受給者の入院や外来受診もありますし、病気やけがによって就労や生活に支障がでて生活保護を初めて受給する方もいます。
当たり前に地域のなかでも同じようなことが起こり得ます。
ソーシャルワーカーと生活保護の接点。
ソーシャルワーカーの役割として、生活保護制度の紹介から概要説明、新規申請や受給中の手続きにあたる援助を行うことがあります。
私は、被災地などの地域で活動しているときに行政の中にある生活保護課へ本人や家族と同行する業務などがありました。
同行の具体的な目的としては、大きく分けると以下の3つが多かったように思います。
① 生活保護の申請(生活保護の説明を行政職員から受ける等)
② 保護受給中のなんらかの手続き(代行手続き等)
③ 保護受給者が一緒に同行してほしいと依頼があった場合
(行政担当者の言っている意味が分からない、精神的に一人で出向くこと
ができない等)
ここ最近、生活保護を受給するまでの申請や水際作戦と言われている行政対応とどのように戦うかみたいなことが注目されています。
実際、私自身も本人が一人で窓口に行って申請すらできなかったケースが同行した際に対応が変わったということも何度も経験しました。
申請を適切に行ってもらうための本人の代弁者としての機能(アドボカシー)をソーシャルワーカーは持ち合わせています。
また、高齢者や何らかの障害を持っている方にとっては、行政側が言っていることがすぐに理解できなかったり、理解が不十分な状況で返事をしたばかりに後でトラブルになるということもしばしば起こります。
行政側にも相手の特性を捉えながら関わるという技術が求められますが、簡単なことではありませんし、労力と時間もかかることになります。
そういった時にもソーシャルワーカーとして行政と本人たちの間に入って調整したり、行政の言葉を分かり易く言い換えて説明したりしていました。
経済的な援助に加えて必要なこと。
上記のような問題と共に私が重要だと考えていることは生活保護を受給してからの生活に関してです。
生活保護で注目されることの多くは「お金」に関してです(ニュースで取り上げられるのは不正受給などネガティブなことばかり…)。
もちろんお金が重要であることは言うまでもありませんが、最も関わるべき部分はお金や居住を得た後の「生活」だと考えています。
これは、最低限の生活を保障する経済的な支援とともに、精神面や就労支援など自立を促す支援が必要となるということです。
誰が自立を促す為の支援を行うのでしょうか。
生活保護を受給することになると(俗にいう)ケースワーカーという担当者がつくことになり、このケースワーカーが基本的には受給中の生活状況の把握や手続きに関してなど受給者と一番関わる立場と言えます。
では、実際のケースワーカーの動きとしてどうなのかと考えた時、(もちろん自治体や個別性はあるとしても)自立を促すための支援まで行き届いているケースは少ないと感じます。
理由としていくつか考えられます。
ケースワーカーは社会福祉主事任用資格を所持していることが条件ではありますが、ソーシャルワーカーのような視点や知識を持ち合わせているかというと個人差があります(生活保護制度で使われるケースワーカーと一般的なソーシャルワーカーの立ち位置は少し違っています)。
また、ケースワーカーが担当するケース数が多くなり、多忙を極めているという現実もあります。
個人差があるというのは、ケースワーカーといえども福祉や就労支援といった専門的な知識を有している人材ばかりではなく、異動後にすぐにケースワーカーに着任する場合などもあるからです。
そもそも自立とはどういうことなんでしょうか。
自立と一言で言っても置かれている状況や能力などによって一人ひとり目指す自立は変わってきます。
生活保護法の中にも「自立の助長」という言葉も存在しており、詳しい説明も明記されています。ですが、一般の人は読むことはないだろうし、ケースワーカーなどの行政職員も読んで理解しているのか疑問であります。
「自立の助長」を簡単に説明すると、公的な援助を受けながら、能力や経験を身に着け自分の力で社会生活に適応していくために支援するということかなと思います。
ではこの自立の助長をいちケースワーカーだけで行えるのかというとどうなんでしょうか。まず、自立の助長が持つ意味をどう捉えるかにもよりますし、社会福祉的な視点を持ち合わせているかも重要になります(単に仕事を探してくださいと指導することではない)。
ソーシャルワーカーが自立を援助する場合、「連携」や「ネットワーク」といった支援体制をつくることから始めます。
ソーシャルワーカー単一で関わることはほとんどありません。
それぞれの専門性や関係性を上手く活用しながら自立に向けた支援を展開していきます。
生活保護受給している方においてもこの方法は変わりません。
今回の生活保護に関するお話はここで一旦おわります。
またの機会に、ソーシャルワーカーとしてこれまで関わったケースも紹介しながら以下のことを中心にお話できればと思います。
・生活保護を受けるまでの実際
・生活保護に付きまとうスティグマ(偏見やレッテル)
新型コロナの影響などで生活が不安定な方は生活保護の利用を含め近くのソーシャルワーカーに相談して欲しいと思います。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
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