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心と体と

”夢の中で鹿になって恋する話”

そう聞けば、なんてファンタジックな映画なんだと思われるでしょう。でも実際はそうでもないのが、この映画の面白いところ。

映画の舞台となるのは食肉処理場です。暴れる牛を押さえつけ、殺し、吊るし、頭や足を切り落とす。血で真っ赤に染まった床を掃除する。そんな、食肉処理の残酷な現実を背景に、現実と夢物語の差を見せつけるような、ひと味違った恋愛映画でした。

処理場の経理部長を務めるエンドレは、片手が不自由な中年男やもめ。新しく職場に入ってきた品質検査官のマーリアは、人づきあいもコミュニケーションも苦手で職場で浮いている、ちょっと不思議系の若い女性。この2人による、非常にぎこちな~い職場恋愛が始まります。

ある日、職場で起きた事件をきっかけに精神分析医による全職員のカウンセリングが行われます。そのカウンセリングにより、エンドレとマーリアが同じ夢を見ていることが明らかになります。夢の中の2人は鹿の姿で、2頭一緒に森の中にいます。餌を探して森を歩き回ったり、湖で水を飲んだり、夢の2人(2頭)はとても平和で穏やかです。

"同じ夢を見る"って、ほぼ奇跡ですよね。そんなことが起こったら、どんな相手でも、まあ意識してしまいますよね。この2人も、"同じ夢を見ている"ということに運命的なものを感じ、現実世界でも距離を縮めていきます。

しかし、きっかけが運命的だったとしても、それだけではうまくいかないのが恋愛。たとえ、"同じ夢を見ていた"という奇跡が味方をしてくれても、現実世界で恋愛を成功させるためには、お互いを思い合い、気持ちを伝え合ういうことが必要なのです。この映画は、単なる運命的な夢物語の恋愛話ではなく、すれ違いや、いら立ち、そういう現実的な過程もちゃんと描かれています。

夢の中で描かれる美しい2頭の鹿。一方、現実世界で描かれるのは食肉処理所で殺される血まみれ牛たちと、不器用でぎこちない人間2人。それらの動物の対比が面白い作品でした。

”同じ夢を見た”って言ってみよう

映画終了後、友達とビールを飲みながら、”同じ夢を見た”っていうセリフ、使えるんじゃないか?という話になりました。気になる誰かに、それとなく昨夜の夢の話をさせて、その直後に「私もおんなじ夢見た!」って言ってみる。ちょっとは意識してもらえるんじゃないでしょうか。ダメでしょうか。

そういえば私の友人に、「昨日の夢に〇〇が出てきたよ」と気になる相手に言う、というワザを使っている人がいます。これは確かにドキッとしちゃいそう。夢という無意識の世界を使って距離を縮める作戦、アリかもしれません。




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