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東北に昔から伝わる山の仕事着を研究したら素敵なシャツができてしまった

東北で昔着られていた仕事着の一つに、「山シャツ」と呼ばれるものがありました。形はシンプルな詰襟の長袖シャツで、野良や山仕事の時に着られていたものです。
その山シャツの形を借り、モノを大切にする暮らしの知恵を借り、“長く着続けること”を考えたen・nichiの「YAMA SHIRT」が出来上がりました。

ものを大切にする暮らしの知恵

東北で昔着られていた衣服には、服の上から生地のハギレを何枚もつぎはぎして作ったものが多くあります。
布を重ねることで冬の厳しい寒さから身を守ることができ、また、服の弱くなった箇所の補強にもなりました。厳しい暮らしのなかで自然と生まれた、ものを長く大切に使っていくための工夫です。

昔の人々がつぎはぎしてまで服を大切に着たのは、ものが貴重だったから、貧しかったから、という理由だけではなく、長く着た分だけその服に刻まれた人の時間や思いを大切にしたからでした。

en・nichiのYAMA SHIRTも、そんなふうに長く愛着を持って着て欲しいという思いから、昔の人々の暮らしの知恵を取り入れ、長く着られる丈夫な1着に仕立てました。

東北の仕事着"山シャツ"との出会い

どのようにして、YAMA SHIRTが誕生したのか。
私たちは、モノを作る前に、とことん調べ、話し合います。
どんなものがあったらいいかと、みんなの作りたいものを提案しあったり、東北の地に昔からあった服の形をリサーチしたりしながら商品企画を進めていくんです。

SAPPAKAMAに合うシャツがあったらいいなあなんて思っていた頃、東北で昔着られていた衣服の中に「山シャツ」と呼ばれるシャツがあることを知ります。

「山シャツってなんだろう?」
商品企画メンバーは、初めて聞いたけれどなんだかそそられるそのシャツのことを、まず知ることから始めることにしました。

色々調べてみると、どうやら山シャツというのは、むかし野良や山仕事をするときに着ていた仕事着のシャツのことをいうようでした。

暮らしに必要なものは自分たちで作るのが当たり前だった時代。山に入って木を切ったり、畑を耕したり、糸を紡いで布を織ったり、暮らしていくためには毎日たくさんのしごとがありました。土地のほとんどが山である東北の地では、山の中に入ってする仕事も多かったでしょう。

仕事着にはさまざまな形があって、山シャツもその暮らし方の中で生まれた衣服の一つでした。

山シャツはシンプルな詰襟の長袖シャツの形をしています。袖はカフスがついているものもありました。

詰襟やカフス付きの袖は今もよくあるシャツの形ですが、この形だと首回りや手首回りに隙間が少ないため、作業する時に木屑や土が服の中に入りにくく、体を守ることができるのだそうです。

布は自分たちで織った麻の布を使うことがほとんどでしたが、麻の布は目が粗く、夏は涼しいけれど冬の厳しい寒さにはつらかったので、寒さから身を守るための工夫がされました。

刺子をしたり、生地の端切れをつぎはぐように重ねたり。そうすることで暖かくなったし、生地の補強にもなっていました。

”en・nichi”の山シャツを作りたい

「”en・nichi”の山シャツを作りたい。」
昔着られていた山シャツは、当時の暮らし方に寄り添った衣服でした。
いま、私たちがシャツを作るのだったらどういうものがいいだろう。

現代の暮らしの中で、毎日山に入って作業をするという暮らしをしている人はそれほど多くないでしょう。体を守るために服を着ているという感覚は、今の暮らしの中ではなかなかないかもしれません。

でも昔も今も変わらないこと、そしてen・nichiが大事にしていきたいことは、「服を大事に長く着ていきたい」という考え方。

東北の人々が昔、生地をつぎはぎしたボロとも言われる服を長く大切にしていたのは、ひとえに貧しかったからだけではありません。長年着た服には愛着があり、継ぎ足す生地の一枚一枚には願いを込めて、親から子へと引き継がれていくものでした。

en・nichiで作る服も、長く愛着を持って着られるものでありたい。

流行に左右されず、一生かけてお気に入りにしていきたくなるようなそんな1着。

山シャツや昔の服にある工夫は、体を守るためだけでなく、服を補強し長く着るための工夫でもありました。

そんな工夫を私たちなりに取り入れて、一生着ることができるような丈夫な服を、en・nichiの山シャツを作ろうと、山シャツ作りがスタートしたのでした。


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