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エイプリルフールを過ぎても、桜はまだ咲かない

もう10年以上も前の話。僕がまだ第二新卒で初めての転職で2社目に入社してすぐの頃。

ずっと「会社の人」=上司や先輩や同僚とうまくコミュニケーションが取れなかった。(10年という時間を経てもなお、悩んでいるんだけれど。)

何を話したら良いのか、分からない。

会社って、仕事をする場所だし、みんな忙しそうだ。
話しかけて良いのか、悪いのか。その判断がつかない。
仕事、の確認や相談以外に何を話せばいいんだろう。

休日は何をして過ごしたか・・・彼氏とのデートを「彼女」に変換して、伝える?結婚の話、家族の話。スポーツの話、野球やサッカー、どこそこの優勝やだれ選手の活躍。「会社の中で雑談として扱われる話題」にほとんど興味がもてなかった。それは、僕がゲイだから・・・?
いつもなんとなく会社では浮いていて、居場所が無いように感じていたんだ。

これは、嘘のようなほんとの話なんだけれど、某ゲイが利用するマッチングアプリで、会社の先輩をたまたま見つけてしまった。大企業なら同じ職場内にゲイの人がいることも普通だろうし、少しづつLGBTQって言葉が一般的になってきた。でも、10年前ってまだまだ「こっち」に対する社会的理解って進んでいなかったように思う。

当然、その先輩も職場では全くそんな素振りや、話題を一切出すことはなかったし、僕も全く気づかなかった。彼は気さくな性格で、社交的で、上司からも期待されて転職で中途入社してすぐに重要なエリアをまかされていた。
でも一度だけ、「あれ?」と思ったことがある。

それは、その先輩と初めて一緒に出張に行った夜。
大きな展示会が開催されている関係で、近くのホテルはどこも満室で、
僕は先輩とツインの部屋で一緒に泊まることになった。
夕食は取引先と接待があり、飲めない酒でふらふらになってホテルに戻ってきたあと。先輩は突然、緑色の少々派手なボクサーブリーフ一枚で腕立て伏せを始めた。
先輩だってしこたま飲まされて顔も真っ赤だったのに、その状態で寝る前に筋トレ!?と僕は面食らったのだけど、そういうルーティンの人もいるんだなぁくらいで特に気にも留めずにそのまま就寝した。もちろん、何かあるはずもなく、出張は無事に終わったんだけど。

僕はわりとすぐにまた転職をしてしまい、以来その先輩とも連絡を取ることもなく今に至る。たまたまマッチングアプリで先輩を見かけた時は、「驚いた!」というよりも怖かった。マッチングアプリだから、わりとみんな普通に顔を出した写真を載せているし、先輩のプロフ名は本名をそのままイニシャルにしただけだった。当時も、今も、周りにカミングアウトせずに生きている僕は、アプリで身バレするリスクをリアルに感じて本当に怖かったのだ。もちろん、僕はすぐにアプリ上でその先輩をブロックした。

もしあのとき、少し勇気を出して先輩に声をかけていたらどうなっていたんだろうと思う。もしかしたら、ゲイであっても的確に自分の職場でポジション築いていく「処世術」を学べたかもしれないなぁと思う。
僕は今の職場に入社して5年以上経つのに、未だに職場に馴染めなさを感じているこのモヤモヤが少し軽くなっていたかもしれないなぁと思う。

今年は3月半ばにはもう都内の桜開花宣言があって、エイプリルフールを過ぎた今、すっかり見頃は過ぎてもう葉桜。嘘のようなこの話は、きれいな「満開」=めでたしめでたしを迎えることなく、モヤモヤしたままで終わります。読んでくれてどうもありがとう。

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