見出し画像

【潜入ルポ】関東某所。UFOと交信する謎の集団「P」に潜入。※動画有

  東京都内から車を走らせること約2時間、よもや関東とは思えないとんでもない田舎町がある。具体的な場所の名前を明かしてもいいが、面倒くさいことに巻き込まれるのは嫌なので、今は詳細を語るのはやめておく。

 多分、この土地一番の盛り場らしい小さなショッピングモールを抜けると、工事を途中で取りやめたとおぼしきコンクリート打ちっぱなしのヘンテコリンな場所がある。別の施設を建てる計画があったんだろうが、今は手つかずで、コンクリートのひび割れからは雑草がボウボウと生えているし、捨てられたゴミも周囲に散乱している。悪いヤツらにとって格好の遊び場かもしれない。

 地方都市の中でも治安が悪そうなこの場所で、以前から噂が絶えない謎の集団が活動していると聞く。仮に集団名を「P」にしておくが、無数の人が集まり、真っ昼間から夜にかけて、空を通過するUFOと交信するイベント? お祈り? をするそうだ。

 こんな話だけを聞くと、怪しい集団と思ってしまうだろうが(いや、もちろん怪しいのは怪しい)、世の中にはUFOを研究したり交信したりする集団というのはかなり存在する。詳しいグループ紹介は、「月刊ムー」などを読んでほしいが、この団体名は今まで聞いたことがない。さっき紹介したショッピングモールで、地元の人たちに聞き込みをすると、ここ数年のうちに結成されたようで、毎月1回のペースでUFOと交信しているらしい。

 という訳で、地元の人たちの情報から、月初めの土曜か日曜の休日に開催されていることが判明したので、日を改めて、翌月の第一土曜に例の場所に舞い戻ってみたら……いとも簡単にそれらしき集団を発見。どういうワケか、彼らはきれいに並んで行列をつくっている。

なんのために?

そして、みな口々に何かをしゃべっているが、あまりにも声が小さいので内容は聞こえない。お経かもしれない。

誰一人として空を見上げていないことも気になる。でも、この人たちが「P」であることは、なんとなくだが、雰囲気でわかった。

90%以上は男性。派手な色の服を好まないことだけは確かだ。

 この行列の先頭には、(こう書くと嘘みたいに思われるが……迫力が強すぎてカメラで撮影することもできなかった)未来の宇宙服のようなものを着用した、70代ぐらいの男性が仁王立ちし、熱心に空に向かってお祈りをしていた。(これも嘘みたいに思われるが……)そのリーダーらしき男性の両脇には、寺山修司の映画に出てきそうな奇抜なメイクやファッションを施したバイセクシャルな男性二人組がボディガードのように突っ立っている。

 この取材は、何かの雑誌に載せる仕事でもないのに、そんな好奇心をあおられる人物が目の前にいたら話しかけるしかない。怖いけど。

 ずらりと並ぶ列を横目にぐんぐん歩き、先頭にいる未来の宇宙飛行士の近くに立ち、

「すみません、ここでUFOと交信されているんでしょうか?」

 と、生まれてきて初めて使う言葉で質問してみた。一瞬、寺山修司の子分コンビが殴りかかってきそうな目つきをしたが、下界の民には関心なんか無いんだろう。一瞥をくれただけで、プイっと正面に向き直った。一方、未来の宇宙飛行士はと言えば、天を仰いだまま、口をパクパクさせながら、何事かをつぶやいている。全然、おれに関心なんてない。

 仕方なく、列に並ぶ男性の中から、一番コミュケーションが取れそうな人物を品定めし、この場に全然相応しくないエリートサラリーマンのような30代ぐらいの男性に、さっきと同じ質問を投げてみた。すると、エリートは、おれを疑う素振りも、何の警戒心も見せず、

「そぉだよぉ」

と答えてくれた。やっぱり、「P」だったんだな。

 このエリートから情報を得られると確信し、矢継ぎ早に色々と質問を繰り出してみた。基本的には、チンプンカンプンな回答ばかりで、自分の目の節穴加減に辟易としたが、話を整理すると、こういうことらしい。

 エリートはこの活動に参加するようになって半年ばかり。両親の影響で宇宙世界に関心を持ち、本当は宇宙飛行士になりたかったが、その夢を果たすことができず、今にいたると。目的は、UFOと交信することで宇宙の真理を学び、いつか来る宇宙時代を切り開くトップランナーになるための修行中の身だそうだ。とても、壮大な目的である。

 それよりも重要なのは、UFOが本当に空を通過するのか。いや、そもそもこの目で確認することができるのか。それを確かめるため、やっぱり、人懐っこい、人たらしのような表情で話す、エリートに聞くと

「通過するぅよぉ」

と教えてくれた。この人は良い人だ。

「P」のスタッフらしい撮影クルー。頻繁に面倒そうな表情をしていたので、外注スタッフかもしれない。一度も空を見上げて、希望を感じさせる目をしていなかった。

 列にならぶ集団は、ときどき天を見上げては、仲間とモソモソしゃべるだけ。未来の宇宙飛行士は、それとは逆にずっと天を仰ぐだけ。この状態で、昼から夜までUFOが通過するのを待ち続けるのは、相当な忍耐力がなければいけない。いや、もはや、あまりの退屈さに限界を感じ始めている。

 さっきのエリートは、よくしゃべるので、会話する時間自体は長いが、おれの理解力が乏しいため、得られる情報量が圧倒的に少ない。エリートの人生には詳しくなったが。

 体感では10時間ぐらい経過している印象だったが、実際には2時間ぐらい。まだ、夜には半日ぐらい時間があるし、たぶん、いや絶対にUFOを見ることなんてできない。しかも、未来の宇宙飛行士が何かトンチンカンな行動を引き起こすとも思えなかったので、

「よし、帰ろう」

 と、決心したときに、そのエリートの傍らにいた若い男性が話しかけてきた。

「アナタも、宇宙人に会いたいんでしょ? 祈りたいんでしょ?」

 何度もしつこく質問していたおれをみて、そう感じたのだろう。

 どう考えても目上のおれにタメ口で話しかけてくる礼儀のなさに苛立ちも感じたが、こういう交流は大切にしたい。おおむね、「UFOをみるために、この場所にきた」と咄嗟の作り話を披露すると、その若者は目をキラキラさせ、

「じゃあ、一緒に祈ろうよ。もうすぐ、UFOが通るよ」

 嘘をつけ、バカヤロー。

 そんな大変なことがもうすぐ起きるっていうのに、他のやつらは一切動じる様子がない。ずっと、ぺちゃくちゃ。もそもそ。糸電話で話すときみたいな声でしゃべってやがる。

 と、心の中では、そう強く思ったが、ここまできて、何もありませんでした、というのは何だかもったいない。別に仕事じゃないから、いいんだけど、なんかひとつでも大事件がおきてほしい。

 なんか、もう、爆発とかしないかな。

 おだやかじゃないことを考えたり、エリートやその友人とお話をしたり、お祈りするフリをしてみたりで、飛び入り参加のメンバーとは思えない懸命な努力を末、気づけばあたりは真っ暗。これで、なにもなかったら、冷静な気持ちでおウチに帰れやしない。

 でもまあ、さきに結果をお伝えすると、UFOらしきものは通り掛かりました。厳密に言うと、通りかかった「そうです」。こんな変な言い回しになっているのは、結局、おれらがいた場所にはUFOなんてあらわれず、この目で直接見たワケじゃない。

 自宅に帰ったあとに、例のエリートが「うちの近くに来てたよぉ」と間延びした感じの文章と動画をLINEで送ってくれました。

 現場では、一日以上を無駄にしてしまったので、不機嫌な感じで帰っちゃったのに、やっぱりおれと人としての精神構造が違うのかな? そんな不機嫌なおれに親切に動画まで付けて送ってくれたんだから。

 というワケで、そのUFOらしき動画を紹介しましょう。専門家の方々で真意をしっかりと確かめてください。

 それと、このグループとはその後、ひと悶着があったので、その顛末もまた書くことにします。

 UFO動画に関しては、おれはね、ただの飛行機だと思うよ。

Profile.MML鈴木
東京都出身。当時、一大ブームとなった写真週刊誌の撮影アルバイトとして業界入り。数々のスキャンダラスな現場に立ち会い、カメラマンとして活躍した。その後、サブカルチャー系の出版社でライターも手掛けるようになり、90年代は自身の連載を持つほどの売れっ子に。雑誌の休刊が相次ぐ中で、現在は、警備員アルバイト兼WEBライター兼週刊誌のデータマンとして活動している。

 

 


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?