四月二十日 春の口の五行歌

春の口のことである。


のどけき光の未だ落ち着かぬ頃
花弁のひとひら落ちて
残りの花蕾が崩れてゆれる
そんなにも長いこと
一人きりでいるなど夢にも及ばず


木と汗と
土と油の姦しさ
青空の澄まし顔を恨みつつ
変わらぬことの有り難さよ
首を垂れて、春愛おしむ


ささくれた指先の
焦がれること請うことを
許さぬそれがもう一度鳴く
潮の匂いの
恋しさだけを

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