四月十四日 やがて夏は来ぬ

石灰岩の下に
夏が眠っている
長い冬のわずかな日光を吸って
その中に夏が眠る

海岸松の木漏れ日に
夏が遊んでいる
熱波の到着を待つ間
ジョウビタキと戯れる

灌木の下に
夏が潜んでいる
むせ返るその温かさで
シスタスの薫りを弄ぶ

全ては、午睡の沈黙の中で、
息を潜めて、静かだ。

その静けさの向こう側で
夏が大きく伸びをする。

廃墟、
崩れた橋、
古い教会、
錆びた要塞、

そういうものを気にもかけない大らかさで
夏が間も無くやってくる。

そのジョウビタキの曾曾曾曾曾祖父のことや
そのシスタスの親株が根を生やしていた崖のこと
天にも届くその海岸松がまだ芽吹いたばかりの夏、辛くも嵐を生き延びた夜のことなどを、

問わず語りに思い返すその道行に
石灰岩の岩肌を、夏が駆け降りてくる。

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