尻屋崎 (17th Jul. 2013)

2013年5月の頭に訪れた陸奥にて聞いた話が興味深く、今まであたった文献には載っていなかったため、備忘のためここに記録しておこうと思う。

尻屋崎とは、青森の北端、斧の様な形状をした下北半島にある。
その斧の、柄にあたる部分の突端に存在している。
寒立馬が主な観光資源となっている、海に向かって生きている土地である。

尻屋崎は、もともと海賊の村なのだと言う。
海賊が住み着いたものか、住民が海賊になったものかは定かではないが、
ともかくもそこにかつて暮らした人々は、海賊なのだそうだ。

そしてその尻屋崎には、一風変わった決まりごとがあるのだそうだ。
なんでも、尻屋崎一帯の漁業権は、昔からその集落に在する家にしか与えられていない。
また、漁業権を増やさないためなのか他に理由があるのかはわからないが、
戸数を増やさぬよう次男以下は集落を出ることが決まっているのだそうだ。

尻屋崎は良い漁場だと聞いた。
海水の循環がない陸奥湾に比べ、南北の海流がぶつかり合い、様々な魚が獲れるのだそうだ。
海賊の末裔たちが今なお、漁業権を守り豊かな海を跋扈している。

果たして真偽のほどは定かではないが、
百年ほど前まで確かにそこにあり、そして消え失せてしまった人々の生活に想いを馳せるばかりである。

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