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春雷戦慄き飛禽遊ぶ

早春の訪れを告げる
雹と嵐が去って
まだぐずぐずとした蒼色の東の空に
特別に許された高度で
人間の愚かな建物群を見下ろす高さで、
西の丘から覗く
最後の日の光を受けた海鳥が隊列をなして
白く金色に輝く

洞穴に暮らして久しく
陽光を見れば視力を失う人間たちは
その眩い背中を見つけて
1日の終わりを知る

雨の底に
わずかな腐臭を漂わせる
小さな街の
小さな日曜日が
百合鴎の背中に乗って
明日へと去っていく。

午睡を起こされた街鳩達が
グルグルとおしゃべりを始めて
鶺鴒に戒められたのち
まだこの街に残された
僅かな、しかし馬鹿にはならない藪の陰で
再び腰を下ろす。

鳩の卵を見たことはあるかい
鶺鴒の雛を見たことは
鵲が烏を揶揄うことなく過ごした昼時を、
未だかつて
過ごしたことはあるか。

マグノリアの大袈裟な花弁を嫌った雨雲が
冷徹な雹の礫でそれを撃ち落とす
鶫はその、惨めな様を見せないように
自らの子を5月に孵すのでした。


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