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『不適切にもほどがある!』

今期のテレビドラマでは『不適切にもほどがある』が秀逸に思う。昭和を生きて来た世代にとっては、ドラマで描かれている日常は当たり前であった。現代では通用しない言動も、ドラマを通して顧みると中々興味深いものが感じられた。

現代でのコンプライアンスは本当に正しいものなのか、必要なものなのかを改めて問われているようだ。テレビ局は番組のスポンサーのご機嫌を損ねないように内容を吟味して製作するが、末端である視聴者が番組に興味を持たなくなって来ているのも実情である。つまり番組がおもしろくないということだ。皮肉な物で、コンプライアンスに沿って番組作りをすれば反応が薄く、緩めると批判される。制作側とすれば、何を作れば良いのか迷う一方である。そのドタバタ劇を見せられていると、確かに今のコンプライアンスは行き過ぎの面もあるのではなかろうかと視聴者も思ってしまう。

時折コンプライアンスを軽視した動画がSNSなどで発信されると炎上するが、寧ろ良くも悪くも個人が製作した動画の方が反響が大きいというのは悲しいかもしれない。テレビの衰退はこのSNSの発達により拍車を掛けられたように思う。昔、行き過ぎた番組については視聴者がテレビ局に電話して苦情を言うも、担当スタッフからは『貴重なご意見として承ります』としてかわしてきた。余程の反響がない限りは、番組が視聴者に対して謝罪することもなかった。

しかし今は、番組独自のSNSを発信し、それに対する反響もSNSに登録すれば即時誰でもわかってしまう。余りに視聴者の反応を気に掛けていては、多くの番組をライブ配信にしてSNSの状況を見ながら放映していかなければならないようなことになってしまう。

するとライブ配信するドラマが誕生するも考えられる。セリフにもダメ出しが出ると、その場でテイク2へ。60分枠のドラマでも遅々としてストーリーが進行せず、予定回数内で完結するかどうかも不明となる。ある意味、テレビを通じて舞台を観るようなものになる。まあ、それはそれでおもしろいと思うが、俳優陣の力量が明白になるので厄介なことにもなるだろう。

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