結婚指輪を受け取りに行く前めっちゃ泣いた話

結構前の話。

結婚指輪が完成したとの連絡が入ったので、夫と受け取りに行くことにした。
歩いて40分くらいの場所にあるショップだったので、最近体型を気にしている夫が「俺は走って行く。」と言い出した。
それじゃあ私は自転車で行こうと、夫の自転車に乗ることにした。
これは私が憧れた、走る野球部の後ろを自転車で追いかけるマネージャーの構図。
河川敷の上だと尚良い。
そういう設定でいざ自転車にまたがろうと、なだぎ武のディランマッケイのように脚を振り上げた。
けれど、思ったよりサドルが高すぎて脚がつっかえてまたがれなかった。
夫は、早く走りたい早く痩せたい早くまたがれと言わんばかりに足踏みを始めた。
「ちょっと。何このチャリ。一人で乗れないんだけど。」
文句を言いながら夫から手助けをしてもらい、なんとか自転車にまたがることができた。
夫の自転車はロードバイクという名前の自転車で、私がずっとまたがり親しんでいたママチャリとでは、車輪が二つ付いているというところしか一致するところが無い。(本当はもっとある)
またがれたはいいが、今度は地面に足が付かなかった。
「まだ離さないで!!」
夫の手助けから自立することを恐れた私は焦り叫んだ。
まるで補助輪を卒業する女児と父親のようだ。
夫は「やっぱり二人で歩いて行く?」と言ってくれたけど、私はどうしても野球部のマネージャーがやりたかったので、自転車で行けると言い張った。
そうして地に足つかぬままの危険な状態でなんとかペダルを漕ぎ、車輪が1周、2周と回り、私は夫のサポート無しでヨロヨロ進み出した。
「降りるときは、ゆっくりブレーキかけたら、前にぴょこんって降りるんだよ。」
隣で小走りの夫が降り方を教えてくれた。
なるほど、ママチャリだとすぐに足がつくから、降り方なんて考えたこともなかった。
私は今、地に足がついていないのであった。死ぬところだった。
夫、ありがとう。
しばらくヨロヨロと進み、少し人通りのあるT字路に差し掛かろうとしていたので
私は夫に教わった通り、恐る恐るではあるがゆっくりとブレーキをかけ
恐る恐るではあるが思い切ってぴょこんっと前に飛び降りた。
するとその瞬間、私の股間という股間のど真ん中に、ただならぬ衝撃が落ちた。
私は地に足がつかないのに、フレームの部分に思い切り飛び降りていた。
想像できるだろうか。
魔女がほうきに乗っている姿を想像していただけると分かりやすいかと思う。
私は全体重を委ねて、宙に浮かぶ魔法のほうきにまたがり飛び乗ったのだ。
「いっっっっっ!!!!!!!!」
”た”まで言葉を発することができない痛みだった。
そして自転車と共に倒れ込み、両手で股間を抑えてへたり込んだ。
声にならぬ痛みが、股間の真ん中から胃や肺に込み上げて喉の辺りまで到達し、弱々しい吐息として私の口から放たれた。
「い、痛い・・・ち、血がでた・・・絶対血ィ出た・・・」
やっと言葉が出た私は、絶対に股間から出血していると確信していた。
夫は「大丈夫?立てる?」と、心配してくれた。でもどうすればよいか分からないといった様子でオドオド慌てていた。
私は「痛いよぉ〜〜〜〜〜」と、子どものように泣き出した。
本格的に補助輪卒業女児と父のようになってきた。すると
「何してんの?」
今絶対に聞きたくない言葉が聞こえた。
声のするほうを見ると、元勤務先の常連のおじさんが不思議そうな顔をして立っていた。
「あ・・・ちょっと、自転車から降りるのを失敗してしまいまして。」
自転車から降りるのを失敗して泣いている28歳の女を見た常連のおじさんは、このときどう思っただろうか。

結局、私と夫は歩いてショップに行き、結婚指輪を受け取った。
ショップでトイレに行かせてもらったが、出血はしていなかった。

みなさんも自転車に乗るときは、地に足がつく状態で乗ることをおすすめします。


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