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植物にパンを

ぷんたの散歩中。
食べ物らしきものの匂いを察知したぷんたは、それが落ちているところまでグイグイと私を引っ張った。
こういう場合は大体、お菓子やパンの袋か、犬のウンチか、人間のゲロが落ちている。(犬のゲロと、人間のウンチだった場合は今のところ無い)
ぷんたという犬は、なんでもご馳走だと思って食べてしまうので
いつもならグイーとぷんたを引っ張って去るが、
今日は思わず私も近寄ってしまうような物が落ちていた。

鉢に植えてあるオシャレな植物の土の部分に、輪切りにされたコッペパンが落ちていたのだ。
落ちていたというか、供えられているような感じだった。

え?と思い、近づいてよーく見てみた。
すると、やっぱりオシャレな植物の土に、輪切りにされたコッペパンが供えられている。
ぷんたは、散歩史上最強のご馳走を見つけたので、コッペパンめがけて必死に走っているが、リードを持つ私の力のほうが強いので全然到達しない。

輪切りのコッペパンは、土の上に置けるだけ置いてあるような状態だったので、合計4つあった。
そして、鉢の後ろの小さな棚のようなものに3つ。
鉢の下に1つ。これは風で鉢から落ちたのだと思う。

おかしなイタズラをする人もいるもんだなー、酔っ払いかな?とか考えてみたけど、
酔っ払いのイタズラで置かれたにしては綺麗に切られすぎている。
断面が、絶対にパン切り包丁で切られたものだったからだ。
酔っ払いのイタズラなら、1、2口食べてそのままポイと投げると思う。
そんなことをする酔っ払いもなかなかいないと思うけど、もう全てがどうでも良くなって酒に走って荒れてどうやって帰ったかも覚えていないような酔っ払いなら、やりかねないと思う。
そして、財布の中のコッペパンのレシートに疑問を抱き、恐怖に震え、ストーリーに上げると思う。
でもそんな状態の酔っ払いはコンビニでコッペパンなんか買わない。
そのときは自分の体なんて添加物で破壊されればいいと思っているので、牛丼かカップ麺かレンジでチンする豚の油のラーメンだと思う。

あと、全てのコッペパンが切ったほうの断面を上に向けて並べられていることから、ますます酔っ払いの可能性は薄くなった。
酒に酔っていたら、こんな並べ方できるはずがない。
もう全てがどうでも良くなっている人なんだから、こんな几帳面なことをするマインドでは到底ない。

酔っ払いの可能性はゼロに等しくなった。

では、酔っ払いじゃなければ誰がこんなこと・・・。

みなさんは誰がこんなことをしたと思いますか?
私は子どもだと思う。
幼い子どもが、植物さん大きく育ってねという願いを込めて
家にあった輪切りのコッペパンを置いたのだ。お母さんなら、コッペパンをパン切り包丁で輪切りにするでしょう。
絶対にそうに違いない。

私も幼かったころ、庭に咲いた一輪の綺麗な雑草にポテチを供えたことがある。
おばあちゃんが大切にしていた、大物が来客した際にしか使わない貴重な器に盛って供えたので、それは怒られた。
あのとき私は、庭のあの一輪の雑草を見た瞬間に『家を守ってくれる神様だ』と思ったのだ。
コッペパンを供えられたこのオシャレな植物も、きっとこの辺に住む子どもに神様だと思われたのだろう・・・。
それ以外、考えたくなかった。

目の前にあるのに全然届かぬご馳走に、ぷんたもそろそろ限界を感じている頃だと思ったので、「結局なんなんだよこのパンは」と思いながら家に帰った。


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