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逆行者 読書記録35


人間はなぜ決心ばかりして実行できないのか?それは、人間が新たな挑戦を避けるように進化してきたからだ。もし原始時代の人が新しいことに挑戦しようとしてジャングルの奥地に入ったりトラに飛びかかったりしたら、大ケガをするか死んでしまったことだろう。無謀な挑戦などせずに、隠れて待っていたほうが生き残れる確率は高い。おとぎ話とは違って、勇者はお姫様と結ばれるどころか、DNAを後世に残すことすら難しくなる。現在生きている僕たちは、したたかな臆病者の子孫なのだ。
この用心深い遺伝子は生存に欠かせないものだったが、現代においては劣等なもの、すなわちクルージとして残った。昔は挑戦が命を脅かしていたが、今はそうではない。YouTubeやブログ、新たなプラットフォームに挑戦して失敗したとしても、死ぬことはない。それにもかかわらず、僕たちの臆病なクルージとなまけ者の脳は「そんな無駄なことはしないで、ポテチでも食べなよ」と命令を下す。
ただし、今日の社会で何もせずにいれば、自由を奪われてしまう。自分の人生をコントロールできず、お金と時間に縛られて生きていくしかない。挑戦と革新が優先事項となった今、臆病なクルージは自己啓発をはばむ大きな障害物になる。人間を貧しく生きる順理者にしてしまう、致命的なウイルスだ。

「1千億ウォンが欲しいかい?それとも、脳を自動化したいかい?」

もしも悪魔がこんなふうにささやいたら、僕は1秒も迷うことなく後者を選ぶだろう。
「脳の自動化」に成功すれば、お金は自動的に貯まるし、幸せになることができるのだから、わざわざ1千億を選ぶ必要はない。1千億ウォンより、このチャプターで解説する「脳の最適化」と「脳の自動化」のほうがはるかに重要だ。
「脳の最適化」とは、読書や、文章を書くことによって脳の筋肉を育てることを意味する。頭脳を一度最適化すれば、一生にわたって知能が発達していく。これを「脳の自動化」と言う。
複利〔元本についた利子に、さらに利子がつくこと]的に知能が伸びるようになり、時が経つにつれて、雪だるま式に知能が高まっていくのだ。脳が最適化されると、あえて勉強したり何かを考えようとしたりしなくても脳が自動的に働き、自然と頭を使うようになる。人生を楽に生きられるようになる。このセッティングを済ませた人と、そうでない人の10年後は雲泥の差がある。
脳の自動化について理解してもらうために、「囲碁を打つ囚人」の例を挙げてみたい。
罪を犯して、刑務所に収容された囚人がいた。居室にはテレビがあり、いつもつまらない囲着番組が流れている。興味のなかった囚人は1年間、番組を無視して生きていた。そんなある八月、四人は外部から来た講師に1カ月間マンツーマンで囲碁を教わることになった。実力アップのために、他の房の囚人と対局することもある。囚人の頭は、囲碁への興味と知識で満たされた。その後、彼は毎日、囲碁番組を見ながら実力をつけていった。1~2年後にはさらに実力がアップするだろう。囚人は刑務所の中でも囲碁の実力と理解を高めていくのである。
知能が伸びる人とそうでない人は、言うなれば「囲碁番組を無視し続ける囚人」と「自ら囲碁の実力を上げていく囚人」だ。かつての僕は、流れに身を任せて生きていた。ごはんどきになると食事をし、腹が立ったら怒り、ゲームが目の前にあればゲームをするだけだった。未来がなく、知能は低かった。20歳の頃の僕の社会的地位は100人中ビリのレベルだった。
しかしある日、本を読み始めた。その中で、世の中を解釈する能力が生まれた。背景知識
〔ある知識を理解するための土台となる知識]が身についたおかげで、生きているだけで世の中の法則が見えてくるようになった。
囲碁を学んだ囚人のように、僕は毎日が新鮮で楽しい。書店に行くと、売れる本の法則が見える。売上1位の本を作る方法が自動的に構想される。YouTubeを見れば、人気コンテンツの法則が見える。これを取り入れて、僕はYouTubeで再生回数50万を獲得する動画を作る。
外食をしたときも、その店が流行っている理由、あるいは流行らない理由が自然にわかる。最初は囲碁番組を無視していた囚人が、刑務所の中とはいえ、毎日テレビを見ながら楽しく過ごせるようになったのと同じだ。

僕がご説明したいのは、「脳の複利」の概念だ。複利の力は大きく、10億ウォンを毎年20%ずつ増やした場合、20年後には383億ウォンを超える大金になる。投資の達人であるウォーレン・バフェットは、1965~2014年まで年平均21・6%の収益を上げ、これが複利で累積して182万%もの累積収益率を記録した。
複利の概念がピンとこないなら、ゾンビを例に考えてみよう。隣国と戦争が起こった。我が国にソンピが1体いるとする。このゾンビを敵国の陣営に送ったらどうなるだろうか。ゾンビが敵国の1人の軍人に噛みつく。たちまちゾンビは2体に増える。そのゾンビたちがそれぞれ1人ずつ軍人に噛みつくと、ゾンビは4体になる。そして8体、16体、32体……。敵国の軍人がどんどんゾンビに変わっていく。ゾンビが半数を超えたら、次のステップでは残りの半数が一瞬にしてゾンビになる。複利はこのように幾何級数的な増加をもたらす。最初は元金のみで利子(ゾンビ)を生むが、2回目以降はその利子も利子を生むからだ。
かつて、僕が破格的な成長を遂げることができたのは、この複利効果のおかげだった。たとえば、もともとの知識が100程度だったとしよう。そして、1ヵ月に本を1冊読むと、知識が1%アップすると仮定する。こうして1年に12冊本を読んだとしたら、10年後の知識の量はどれぐらいになるだろうか?なんと330、つまり3・3倍に増える。1ヵ月にたった1冊読んだだけなのに!当時、僕は1年強の間に数百冊の本を読んだ。もちろん全冊を精読したわけではないし、中には良書とは言いがたい本も多かったが、重要なのは、頭の中に新たに人ってきた知識がゾンビとなって次の知識を伝染させ(吸収して)、また次の知識と結びついて伝染させるステップが、途方もないスピードで進行していったことだ。いつの間にか複利で増えた知識のおかげで、大学受験から7年も経っていたのに、国語で満点をとることができた。
このように、知識は複利で増えていく。周囲を見渡してみれば、すぐにわかる。あまり読書をしない人は、1年に1冊も本を読まない(実際ほとんどの人がそうだ)。こんな人たちは本だけでなく新聞を読むのにも苦労して、ネット上で文章を読んでも内容を正しく理解できず、見当違いな解釈をして腹を立てる。話が通じなくてイライラする。しかし、ふだんから本をよく読んでいる人は、どんな本でも読みこなし、その他の文章も正確に理解する。だから、いつだって貴重な情報を入手できる。この2つの部類の人々には、ほぼすべての面で違いが生じる。語彙力や理解のスピードはもちろん、何と言っても、新しい知識を受け入れる姿勢と、浸透する深さが違う。地道な読書で鍛練を重ねてきた人は、新常識も古くからの教えもすばやく吸収する。あるドキュメンタリー番組に出ていた教授が「恐ろしいことに、読書量の差は、経済的格差以上に人生を二極化する」と言った。
読書による二極化も複利で広がっていくため、1歳でも若いうちに読書を始めなくてはならない。若い頃に何の投資もせず、60歳になってから複利の金融商品を運用しても、たいした成果は出せない。ウォーレン・バフェットが人生で後悔していることの一つに、11歳まで株を始めなかったことを挙げたという事実は、「早く始めること」の重要性を教えてくれる。僕も中高生の頃にゲームばかりしていたことがひどく悔やまれる。あと10年、いや5年でも早く読書を始めていたら、今とは比べものにならないような成功を収めることができただろうから。
「良書を読むことは、数百年前に生きたもっとも素晴らしい人と会話するようなものだ」

本当にその通りだ。たとえば、一人でもがいているとき、優秀な先輩のちょっとした言葉で頭がクリアになり、パッと目の前が開けることがある。本とは、優秀な先輩レベルではなく、当代最高の知識人と専門家が生涯学んできたことが凝縮されたものだ。本当にいい本を選んで最大限に吸収できたら、著者が数十年かけて習得した知識と真理をタダで得るも同然だ。
20歳から脳の複利貯金を始めた人が30歳になると、何も考えずに生きてきた同い年の人々とは次元の違う人間になる。ここからは読解力が上がり、他の人々よりも早く知識を吸収して、再解釈できるようになる。そのうえ、もう読書をしなくても自動的に知識が増えていく。背景知識があるので、映画を観ただけでも既存の知識が発揮されて、新たな思考が生まれる。ビジネス関連書籍をたくさん読んだ人なら、ラーメン屋に行っただけでメニュー構成、インテリア、スタッフ教育のレベル、店の純利益が自然と浮かんでくるだろう。その人にとっては、毎日利用する数十カ所の企業や店舗がケーススタディになる。
遊んでいるときや休んでいるときも、頭を悩ます問題が自動的に解決する。突飛なアイディアを生み出し、一日で1年分の年収を稼ぎ出す。生きているだけで、知識が複利で増えるのだ。一方、脳の複利貯金をしていない人は、何も発見できない。ひと足遅く気づいたとしても、早く始めた人との差を埋めることはできない。みんなも走り続けているからだ。

あなたも自分の石を並べよう。
何も持っていないなら、何をすべきだろうか?運転代行をやってみよう。大手物流センターでアルバイトをしてみよう。カフェのアルバイトでも何でもいいからやってみよう。そして同時に、そこで起こる現象を学びながら、読書をしてほしい。運転代行をしたとして、「僕の人生はなぜこうなんだろう」と考えていては意味がない。話術の本を読破してから運転をしよう。乗客に話しかけられたら、学んだテクニックを使ってみよう。カフェでバイトをするなら、カフェ開業に関する本を20冊ぐらい読んでみよう。意味なく働いている時間はない。
現実は甘くない。よくない環境に置かれていると、この世のすべてが否定的に見えて、何もしたくなくなる。当然だ。本能がそうさせるからだ。でも、遺伝子や世の中によって作られたレールの上を、不満だらけで歩いて死んでいく人生でいいのだろうか。本能に逆らわなくてはいけない。未来を描き、環境を設定していかなくてはならない。未来を描いて、本能を抑える人だけが、運命に逆らうことができる。
あなたは今、目の前の課題を解決することだけに必死になっていないだろうか?長期的な手を打つために、何をすればいいのかを考えてみよう。何も思い浮かばないなら、自分がやってきたことを振り返ってみてほしい。残業の多い会社よりは、100万ウォン稼ぎが減るとしても、楽な会社に転職しよう。増えた時間で運動をして脳を最適化し、一日1時間本を読もう。バイトを2つやっているならどちらかを辞めて、できた時間にクリエイティブな集まりに参加したり、本を読んだり、自分より優秀な人に会おう。その場の短期的な報酬を得るために必死になって人生を食いつぶすのは、順理者の典型的な行動であることを忘れないでほしい。

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