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クランチ文体でバイオハザードre4 その2


前回となるその1はこちらです↓


chapter 1-2 広場

 レオンは家に背を向け森の奥へ進む──気が付けば夜が明けていた。湖に向かうにはまず村に行かなければ──先ほどの地図である程度の地理は確認済み。ハニガンからの連絡までの時間を無駄に出来ない。廃墟や橋を越え進む。

 その途中で何度か村人と思わしき暴徒に襲われる──なんとか振りきる。こいつらもあの老人のように化物なのだろうか──人なら殺すわけにはいかない。だが明らかに殺意をもって凶器を向けてきている。どうするべきか──悩みながら歩を進める内に身長の倍はあろう鋼鉄の門に辿り着く。ふんっと踏ん張りながら両手で押す。

 軋みながら開く門──どさっと何かかが落ちる=包帯に巻かれた人間の生首。見上げると門の上にはまだ幾つも乗っている。村人たちの仕業か──運転手は無事だろうか。その答えとばかりに声が聞こえてくる。

 扉の奥──村の広場になにやら人だかり。広場の入口付近の石垣に身を隠して双眼鏡で観察/驚愕。人だかりの中心に木にくくりつけられた警官──足元には大量の薪。松明を持つ村人が歩み寄る──躊躇いなく松明を放り投げる=火炙りバーベキュー開始。広場に警官の叫び声が響く──無表情で眺める村人達。

「なんてことを……」

 思わず声に出るレオン。努めて冷静な思考を保つ──救出対象一名減。目標──広場の突破。見える範囲を素早く観察。



 東側──集会場らしき建物と鐘塔=向かって正面。
 北側──小屋と民家が二棟=向かって左手。
 南側──牛小屋と民家=向かって右手。
 広場──村人が少なくとも十人ほど。

 なんとかやり過ごすの得策か──レオンの選択。広場を抜ける道がどこにあるか不明──とりあえず外周沿いに移動=北側へ。今時にしては珍しく裏庭には所有を示す境界線となる柵などがなかった──共有財産? 共同生活? 何か思想的なものを感じる。裏庭を音を立てずにさらに進む=東側を目指す。

 一棟目の民家を過ぎた辺りで藁を鋤でほぐす女性を発見──まだこちらには気づいていない=仕留めるなら好機。逡巡──もしこの人がまともだったらどうする。ラクーンシティから変わらないレオンの甘さ。戻って南側の道を探るべきか──そんなレオンの躊躇を知ってか知らずか女性が振り返る。クソっ──小さくこぼすレオン=明確なミス。こちらを指差しスペイン語でわめき立てる。

 戻るよりも進むべきと判断──レオンのダッシュ=女性の脇を走り抜ける。民家を過ぎ鐘塔前に到達。北側──向かって左に続く道を発見。しかし道に立つ手斧をもった髭面の男性と目が合う──進路変更=集会場の扉へ走る。しかし逃げ場はないとばかりに鍵がかかっていた。ガンッ──顔の横を手斧が掠め、不思議な紋章が描かれた集会場の扉で跳ね返る──投げて来やがった。振り返ると広場の村人はレオンを包囲しようと集まっていた。

村人の手で光る包丁/農具/松明=次はお前を火に焚べてやる。

chapter 1-3 襲撃

 レオンがまだ活路はあるはずと目を左右に動かす──北側手前の民家=開いた扉/二階建て。即断即決、走り出す──村人の隙間を抜け民家へ。横を走り抜けるレオンに向かって凶器が振り下ろされたが当たらず。なんとか屋内へ辿りつくレオン──追いすがる村人。

 扉を村人との押し合いの末に閉じる──扉と柱に付いたL字フックにそばにあった鉄板補強された板をはめる。家の鍵が閂なんていつの時代だよ=レオンの文句。壁に空いた小窓から外を観察──どんどん集まる村人達。

 どるんっ、どっどっどっ──エンジン音が空気を震わせる。チェーンソーを持った大男の到来=頭に目の部分を切り抜いた頭陀袋/すでに血塗れ。さらに上の階から窓が割れる音。

「おい、うそだろ……」

 さすがに焦りが声となって滲むレオン。ひとまず階段へ──家の外からは呪詛めいた村人達の声/入口付近から金属同士が擦れるけたたましい音。扉から火花=扉を切り裂こうとするチェーンソー/止まぬ喧騒。

 二階へ到達/周囲を一瞥──壁に飾られた年期の入った散弾銃。迷わず手に取る──ポンプアクション式で狩りに使われる一般的なタイプ。家の正面方向の窓を見れば割れて梯子が架かっている──走り寄って梯子を押し倒す。

 文字通り梯子を外された中年男性が宙を舞う──数秒の空の旅。下から扉が破られる音/男性が地面に到着した音。落ち着いてグリップを少し引きチャンバー内を確認──当然、弾は入っていない。その間も容赦なくエンジン音が近づいてくる。銃があるなら弾もあるはずと辺りを探す──数発入った箱を見つけ中身をポケットへ。

 大男が二階へ到達──混合オイルや潤滑油の焼け付く匂いが充満。回転する鎖鋸を見せつける様に振り上げ大股で大男が歩み寄ってくる。

「おい、止まれ」──散弾銃を向けたレオンの警告。

「撃つぞ、止まれ」──二度目の警告。

 頭陀袋に開いた穴から充血した目が見える距離──状況的に射撃もやむ無しと判断。レオンは素早く散弾銃の排莢口からエマージェンシー弾薬を滑り込ませる/リロード引き金を引くズドンッ。銃撃/衝撃──硝煙の向こうで変わらず立つ大男。

 至近距離の散弾を数歩下がるだけで済ます驚異の耐久力。それを見てすぐさま踵を返すレオン──散弾銃の負い紐を肩に掛けながら割れた窓へ。本日二度目の二階からジャンプ──外で囲まれる方がマシ。

 着地/索敵──大半がレオンが居た民家に集中して意外にも手薄。そのまま正面民家の脇へ走る──曲がり角、右へ。民家の裏手、屋根から続く日陰棚を抜けたところで死角から伸びる腕。村人がレオンを後ろから抱き締めるようガッチリ捉える。

 どっどっどっどっ──エンジン音が聞こえてくる。先程の曲がり角から大男到来。日陰棚の柱を伐りながら接近──大男の背後で盛大に棚と屋根の一部が崩れる。振り上げられたチェーンソーがレオンに迫る。

 レオンの生存者サバイバーたる危機回避──全身を脱力させ膝を落とす。村人の抱擁から下方向へ逃れその腕を掴み前方に投げる=背負い投げ。不憫にも村人が目の前にあったチェーンソーに背中から刺さる──その隙に逃げ出す=広場の方向へ。

 後方では先ほどの村人が獣の様な雄叫びをあげ痙攣していたが真っ二つにされ沈黙。大男が再び猛進──邪魔な村人を斬り飛ばしながら進んでくる。逃げるレオンの前方には複数の村人達=逃げ場なし。

 ゙ゔあ゙あ゙あぁぁ──後ろから迫る大男が咆哮と共に再びチェーンソーを振り下ろした。南無三──レオンはナイフを取り出し振り向き様にチェーンソーを受け止めた。一瞬、目の前で花火でも上がったかの様に火花が散る。


 バチンッ──チェーン刃が切れて機関内部に絡まりチェーンソーが停止=整備不良と不憫な村人の肉と脂で限界に到達。直後、ごーんごーんと鳴り響く鐘の音──大男や村人達が動きを止め一様に同じ方向=集会場の先に微かに見える塔を見つめる。

 そしてなにやらブツブツ呟きながら歩き始める村人達──手に持つ凶器をその場に落としながら。いつの間にか開いていた集会場──全員が吸い込まれるように入っていく。最後の村人が入るとガチャンと鍵がかかる音が聞こえ──訪れた静寂。

「どうなっているんだ」

 一向に状況が把握できぬレオンが問うようにこぼす。炎の中で骨が見え始めた警官だけがパチパチと自らの焼ける音で答えた。


PDF版

 元々は「TATEditor」という縦書きできるアプリで書いたもので、noteの記事にする際に微妙に変更しています。なので縦書きの環境で読めるPDFも添付します。



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