クランチ文体でバイオハザードre4 その1
私が好きな文体の「クランチ文体」を使ってバイオハザードRE4を勝手にノベライズしてみました。/=─などの記号を使った文章なので人によっては読みにくいと思いますが独特なテンポを感じていただければ幸いです。
縦書きで読めるようにPDFもダウンロード出来るようにしました
プロローグ
スペインの田舎道を走る警察車両=年期の入ったジープ──気だるそうに運転する相方。夜中にも関わらず出動──いけ好かない金髪野郎への協力。目的を聞いても「迷子探しだ」とはぐらかされる。
「その迷子はVIPかなんかか?」
後ろを振り返りながら=助手席の警官──カスタニョ巡査。急に駆り出された所以が気になる。署長命令で仕方なく手伝ってると不満をこぼしながら体を戻した。すると背後から
「それでこんな時間に三人でピクニックってわけだ。最高だろ?」
金髪野郎の返答──暗に肯定。俺だって面倒臭いんだぜと含みを持たせて。「なかなか言うじゃねえか」──軽口が気に入った。仲良くなった記念だとばかりにここだけの話を教えてやる。最近は遭難者が多いと、まるで神隠しみたいだと、先週も一人捜索したばかりだと。対する金髪の友人の返答。
「心強いな。今回も頼む」
思わず口角が上がる──皮肉な言い回しだがバカにされた感じはしない。さて、と会話を切り上げる──目的地まであと少しだなとぼんやり景色を眺め始めた。
後部座席/窓枠に肘を付き顎を固定──舗装されていない道路の振動が肘を伝い金髪を揺らす。レオン・S・ケネディ=合衆国エージェント──浮かぬ顔。現地の警官との会話を終え窓の外に視線を向ける/記憶と共に景色が流れる。かつての記憶=ラクーンシティ。かつての記憶=アムパロ。浮かぬ理由──今回の指令との共通点=少女の存在。
指令内容=誘拐された合衆国大統領の娘の捜索──手元の写真を確認。
エージェントを続けている理由を考えたら本当にとんだ皮肉だ。理由=少女が人質に。理由=少女が研究対象に。少女に限らず助けた女性はみな不幸になっている気さえする。いや、自分が守れなかっただけなのでは──あの日、掴んだ手から落ちていった女性の存在。ふと重火器をぶっぱなしていた女性が浮かぶ──彼女は例外だな。
「着いたぞ、この辺だな」──運転していた警官の声で物思いから引き戻される。ちょっと待っててくれと巡査──車の外へ。相方とのやり取りから用を足しに行ったらしい。相方はというと一服始めていた。タバコの箱をシート越しに出される=一本どうだ。右手をひらひらと無言には無言で返す。そして数分後、無下に扱った借りを返すことになる。
「どうしたんだ。えらい遅いな。穴にでも落ちたか?悪いんだが……ちょっと見てきてもらえないか?」
運転手の警官の疑問/提案=バックミラーでこちらを見ながら。素直に外へ──片方は車に残るべきだしなと自分に言い聞かせる。少し歩いた所で追撃の言葉が飛んできた。「俺は車を見張っておく。駐禁とられたくないしな」──ニヤニヤしながら。ふう、とため息を付きながら再び歩き出す──泣けるぜ=レオンの本音。
chapter1-1「老人」
奥へ続く道を進む──生い茂る草木/遮る月明かり。やがて現れた廃屋──いや民家だろうか。扉に手を掛ける/扉が開く=施錠はされていない。向かって左へ続く廊下──いくつかの部屋/生活の痕跡=灯るランプや蝋燭。「誰かいるか?」と呼び掛けるも返答はなし。拭えぬ違和感──あまりに不衛生。
巡査は一体何処へ──廊下の突き当たりを右へ。正面に動物の骨で飾られた扉。しかし施錠されているので後回し──警戒度を上げる/心拍数が上がる。さらに右へ──最奥の扉に手を掛ける/鍵は掛かっていない。室内へ向かう押戸──死角は右側/右利き/ホルスターは右腰──不利だな=レオンの思考。左胸のホルダーにある軍用ナイフに手を掛ける。しかしすぐにその手を下ろした──ここはラクーンシティでもジャングルでもない。
部屋の中へ──数秒前の自分を罵った。
開けたドアの影から老人──汚れにまみれた衣服でこちらを睨む。意表をつかれて「うっ」と壁側に後ずさる。しかし敵意は無い模様──レオンに興味を無くしたかの様に無言で奥の暖炉へ。人見知りなのかそれとも侵入者に驚いているのか──まずは無断侵入を謝るべきだなとレオン。
「勝手に入ってすまない」──謝罪に続き警官を探している旨を伝えた。しかし問いかけには答えず暖炉の鍋に構っている。まさかウェルカムスープでも振る舞ってくれるのか──生還者の性分=緊張を和らげる冗談。当然スープを準備する気配はない。
仕方なく辺りを見回す──床に落ちている物に気付く/屈んで手に取る。血の付いた警察手帳=助手席に居た男の顔写真、その下に「マリオ・フェルナンデス・カスタニョ巡査」と記載。
脳内でアラートが鳴り響く──意識を周囲へ/背後に気配。振り返れば先程の老人が薪割り用の斧を振り下ろしていた─レオンの動じない冷静な判断=左胸に装着していたナイフを抜き放つ。ナイフの腹に左手を添え両手で受け止める。常人らしからぬ膂力──明確な殺意。なんとか押し返す/距離を取る──しかし老人は再び斧を振り上げ襲いかかる。レオンの左回し蹴り──踵が老人の首に叩き込まれた。ブーツ越しに不快な感触=首の骨が砕けた。やりすぎたというレオンの後悔より速く老人が吹き飛び壁に叩きつけられる/地面に崩れ落ちる。すかさずホルスターから銃を抜き動かぬ老人へ向ける──警戒を維持。
「何が起きてる……」──レオンの口から素直な疑問がこぼれる。
発端の確認──巡査が行方不明。
現状の確認──現地の住民を反撃で殺害。
状況の確認──情報が足りない。
周囲の確認──首がくの字に折れ曲がった老人
その老人の横に横に転がる鍵=倒れた衝撃でポケットから落ちたのだろう。鍵を拾い、ひとまず部屋の見回す。テーブルのに何らかの料理──腐敗/発酵。手を付けた様子もない。棚に野菜──もれなく萎びていた。暖炉に鍋──訳のわからない煮込み。まるで料理や食事といった、生活のガワをなぞっているだけの様な不気味さ。先程の老人といいお世辞にも普通とは言えない。情報収集を続けるべきだ──不測の事態に陥った際の定石。
まずは鍵の使い道だな──骨で飾られた扉に思いあたる。部屋を出て扉へ。鍵を差す/回す=がちゃり──ビンゴ。ゆっくりと扉を開ける。手には銃──もう油断はない。暗闇が出迎える──左手でフラッシュライトを構える/点灯する。向かって右に下りの階段。天井と壁からは動物の骨が無数に吊るされていた──イカれてる。
地下室へ──階段同様に骨で飾り付け。部屋のど真ん中に鹿の死体──ニセモノではなさそう。その横には仕切りカーテン。ライトで照らしながらカーテンを開き周囲を見回す。床に倒れる人──見覚えのある色=警官の制服。
「おい!」──呼び掛けながら走り寄るレオン。警官の顔を照らす──カスタニョ巡査発見。口から大量の出血──制服の胸から腰の辺りまで血痕=立った状態で吐血した。目からも出血──見開いたままの目/文字通り血の涙。「ザザっ」と巡査の胸に装着された無線機が鳴る。なにやらスペイン語で叫んでいる=運転手の警官の声/同時に聞こえてくる騒音。巡査の無線機を手に取りレオンが応答する。
「おいっ、どうした」──返答はない。
「返事をしろ」──無線が切れる。
「どうなってんだ」──無線を叩きつけながら。
助けに行くべきだな。巡査には悪いが彼はここに置いていくしかない。ひとまずここを出ようと階段へ向かう──階段の軋む音=上階から人。レオンの素早い反応──ライトを逆手に持ち換えて銃を構える右手の下に添える。部屋の中央まで移動し階段辺りを照らす。軋みに混じってガラスを引っ掻くような甲高い音が聞こえる。
それがライトの照射範囲に入った──首の折れ曲がった老人。両手を前に突きだして走ってきた──既視感=ウイルスによって化物に変えられた人達。反射的に警告もせず老人の胴体に銃弾を二発ぶちこんでいた──止まらぬ猛進。老人の手がレオンの首を掴む/締め上げる。異常な握力で首を絞められレオンの頭部が鬱血──視界の端がぼやける。
意識が薄れるなか、レオンはナイフを折れ曲がった首に突き立てた。首が折れても死なない相手の首に攻撃して意味はあるだろうか──遅れて湧くレオンの疑問。はたして効果はあったようで老人の手が緩む──前蹴りで距離を開ける。再び銃弾を二発叩き込む──老人は糸が切れたようにその場に崩れた。
「こいつは一体」
疑問は増えるばかり。ライトで倒れた老人を照らせば、傷口からなにやらひらひらしたものが出ている。調べようとしたが上階から物音──まずは脱出が優先か。
急いで一階へ──骨飾りの扉に到達した辺りで廊下の先、来たときには突き当たりだった壁が吹き飛ぶのが見えた。そして薪割り斧を持った男性が侵入──まっすぐ家の入り口方面へ。レオンはしゃがんだまま音を消して前進──壊れた壁に到達。男はまだこちらに気づいていない。ゆっくりと壊れた壁を越えると物置のような空間と階段があった。
破壊された壁や破片を見る──扉を偽装して壁のように見せていたのだ。つまり隠すべき何かが在るということ。素早く階段を上りその先の扉を開け中へ──扉に鉄製の閂が付いていたのでスライド/ロック。壁に村のものと思われる地図といくつもの写真──一枚の写真に目が行く。横たわる金髪の女性の写真=服装から見るに大統領の娘。左耳に指を当ててインカムを起動。
「HQ こちらコンドル1」
《こちらハニガン。状況は?》
「ターゲット、大統領の娘はこの村にいる可能性が高い」
《良いニュースだわ。さすがね》
同じチームに所属する通信官の女性に報告。調査を続けながら会話──壁にある地図の湖畔付近に赤い丸、さらに廃屋を赤い丸で囲んでいる写真を発見。おそらく監禁場所だろう──断定はできないが向かう他無し。
「湖に手がかりがありそうだ。誘導を頼む」
《了解。付近の情報を調べる》
「急いでくれ。なにが起きたかわからないが、この村はマトモじゃない」
そのレオンの発言を肯定するかの様な轟音。ズガァン─外側からドアに斧が叩き込まる/その切っ先が見える。再び叩き込まれる──穴が広がる。さらに叩き込まれる──ドアが吹き飛ぶ。三人の男が室内へ──一人はサーベルの様なものを所持。
「悪いな。またあとで」──ハニガンへ。通信オフ。
「邪魔したな」──三人の男へ。
窓に向かって両手足を閉じて飛び込む──きれいに手、肩、背中の順に接地して回転。二階からの着地の衝撃を分散。立ち上がる──窓から見下ろす男と目があった。しかし男は興味を失ったかのようにふっと窓から離れる──追わなくてもどうせ死ぬとでも言うかのように。
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PDF版
テキスト画像貼り付け版
元々は「TATEditor」という縦書きできるアプリで書いたもので、noteの記事にする際に微妙に変更しています。なので縦書きの環境で読めるバージョンを画像投稿機能を使って用意してみました。
PDF貼れたのでそっちに変更
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