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クランチ文体でバイオハザードre4 その9

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chapter4ー3

 思いの外に強くなる雨/夜空を走る雷=土砂降り──自然と速まるレオンの足。目の前には木製のゲート=石切場の出入口──前回同様に走り抜けようとした。

ゲートをくぐり石切り場へ──バシャンと轟音×2=背後/前方──出入口に丸太製の扉が落ちる。待ち伏せ──閉じ込めらた。どうやら夕方は待ち伏せ歓迎会の準備が出来ていなかっただけらしい。

からん──激しい雨の中に妙に響く音──レオンが入ってきたゲートのさらに上=石切場の縁に立つ赤いローブの人物/鹿の骨のような被り物/火の灯るランタンがついた杖。「幹事様のお出ましか」──ため息混じりにレオン。カラン/ガラン──赤ローブが杖を掲げてランタンを振り始めた。離れているのに頭に響く声

栄えあるグローリアスプラーガよ、偉大なるグローリアスプラーガよ」

 赤ローブが唄い/唱え始める。するとバァンと凄まじい衝突音──入ってきたゲートの隣にあった鋼鉄の門=向こう側から冗談みたいに膨らむ/歪む。数回の衝突音の後に吹き飛ぶ鋼鉄の門──現れる大男。レオンが思わず叫ぶ
「なんだこいつ!」

 大男で収まらないデカさ──ビルは言いすぎだが三階建ての家に相当するデカさ=まさに巨人。禿頭に加え歪んだ顔立ち、ボロボロのパンツだけを身に着け土色の肌が見える。

体に比してやけに大きい手足──レオンの胴体程の太さの指。曲がったままの膝/筋肉で隆起した背中──首が前に出ており背中と頭頂部がほぼ同じ高さ=さながらおとぎ話から飛び出した。巨人はレオンを睨みつけ周囲の雨粒をも吹き飛ばす咆哮を放った。

 レオンに向かって歩き出す巨人──ズンズンと歩くたび地面が揺れる/土砂が飛び散る。走り出すレオン──途中で脇にあった作業小屋に持っていた円盤状の鍵を投げ入れる/せっかく取ってきた物を壊されても困る。

さらに移動──鍵を投げ入れた作業小屋から距離を取る=巨人の横を走り抜け西側へ──巨人が足元を走るレオンを蹴りつける/拳を振り下ろす=どれも当たらず。レオンが壁を背に巨人と向き合った──同時に巨人が左の拳を地面に叩きつける/レオンを睨みつける。

前面に出た左腕/左肩──こちらを向く頭頂部──低い前傾姿勢=アメリカンフットボールのラインマンを彷彿。巨人が地面を蹴る/後方に大量の土砂が舞い上がる──猛進=巨人のショルダータックル。レオンは直線上から外れる様に左へダッシュ──誰もいない場所に突進する巨人を見送る=巨体が西側の壁に激突──石切場全体が揺れる。巨人との馬鹿げたタイマン──突破口をなんとか探さなければ=努めて冷静なレオン──前に通ったときはさっと見渡しただけだったので石切場をもう一度確認した。

 四方を切り立った石壁で囲まれた楕円の石切場。

 西側──さっきまでいた場所。今は衝撃のあまり頭をさする巨人がいた。壁の上部には木製の足場が組まれている。

 東側──鍵を投げ入れた作業小屋。

 北側──現在地。入ってきた湖側の木製ゲート/壊れた鋼鉄の門。

 南側──目的地。教会側の木製ゲート/作業小屋その二。

 利用できそうなもの──巨人そのもの。


 レオンの計画=あいつの攻撃を利用して木製ゲートの破壊、そして脱出。あの激突で頭をさする程度のダメージ──手持ちの武器では倒せる見込みがなかった。

頭から手を離した巨人がこちらを向く。より注意を引くため挑発/発砲──一番効果がありそうな顔面へ。土砂降りのせいで眼球を狙うことは出来ず──ものともせず歩いてくる=誘導成功。レオンは円を描くように外周を走り南側ゲート付近に到達/巨人は東側の小屋付近──レオンとの距離十数メートル。レオンの期待=もう一度突進してこい──さらに挑発で数発撃つ。

 だが予想外=巨人が近くの作業小屋に近づき両手で持ち上げる/メリメリ音を立てて床を残して剥がれる。

「反則だろ……」──小屋を見上げながらレオン。

 巨人が頭上に持ち上げた小屋をレオン目掛けて投げつけた。レオンより僅かに手前の地面で小屋が炸裂──小屋の破片がレオンを直撃=吹き飛んで地面を転がる──散弾銃の負紐が切れて落ちる/ハンドガンが手から飛んでいく。

目の前がチカチカ──顔を打つ雨で仰向けに倒れているとわかった。早く起き上がらなければ──振動が/足音が近づいてくる──自分で起きるより先に体が地面から離れる。巨人がレオンの胴体を掴み持ち上げる/締め上げる──肋骨が軋む痛みでレオンの意識がはっきりと戻った──自身の状況を把握=把握される自分。

目の前に巨人の顔──自分を掴む巨人の手に何度も拳を打つもビクともせず。ならばとナイフを抜く──巨人の親指の付け根あたりに突き立てた──両手を使ってぐりぐりと抉る。

巨人が叫んだ──生臭い息と唾がレオンの顔面を襲う。レオンは全身に掛かる圧力が緩まるのを感じた──「もう一度だ」レオンがもう一突きしようとした時、体が巨人の手からすっぽり抜ける。爪先、足首、膝、股関節と順に曲げて衝撃を逃す──だが逃しきれず──さらに転がって衝撃を散らす=全身泥まみれ。

レオンはナイフを胸のホルダーに戻すと近くに落ちていた散弾銃を拾う──ハンドガンは見当たらず。軽くフォアエンドを動かし壊れていないことを確認。見上げれば血が流れる左手を抑える巨人と目が合う──その目には憤怒の炎が宿っていた。

 睨み合う巨人とレオン──両者が同時に動こうとした──待ったを掛けるようにピカッと石切場全体を照らす閃光=雷──一瞬遅れて聞こえる雷鳴/遠吠え。巨人もレオンも注意を奪われた──見上げれば石切場の縁に天を仰ぐ狼の姿/再び雷──雨で濡れた白い体毛が雷光で煌めく。

数メートルの高さから、段差を利用して地面まで降りてくる──レオンの横に並び巨人に相対。レオンがちらりと目線を狼にやれば後ろ足にはまだ血の滲む傷が見えた──昼間に助けたあいつ。狼が巨人に吠えたて、低い唸り声を上げる──剥きだす牙+前方に重心+逆立つ体毛=巨人へ威嚇/警告。

「手伝ってくれるのか?」

 僥倖──突然の協力者。言葉が通じぬ相手にレオンは思わず問いかけていた。

 狼──弾かれたように走り出りだす=行動で答える。巨人の背後に回り込み、左足の腱に噛みついた。狼の咬合力はさすがに効いたらしく巨人が反射的に足を蹴り上げる──狼が振り払われる/勢いよく飛んでいく。狼がぬかるむ地面で数回バウンド──石壁にぶつかる──べしゃりと地面へ。だが尚も立ち上がり巨人へ走り出す。


 レオン──狼が走り出すのに合わせて行動開始。ハンドガンを探す──狼を散弾で巻き込む訳にもいかず/散弾銃だけで切り抜けられるとも限らず。激しくなる雷雨の中で何とか発見=石切場の東寄り──走ってハンドガンを回収。

泥を拭い落とし動作確認──その背後を何かが高速で通り過ぎる=振り払われた狼──遠くで鈍い音が聞こえた。だがすぐに目の前を狼が走り過ぎていく。こいつを死なせてたまるか=湧き上がる使命感/闘争心。

様々な人の助けを借りながら、しかし誰も助けられなかった過去の悪夢ラクーンシティの記憶がよみがえる。レオンは狼の援護射撃を開始した

 巨人──与えられた命令=敵を排除しろ──だが敵が一匹増えた。しかし悩まず──両方潰せば問題なし。白いやつが懲りずに向かって来た。潰してやろうと何度も踏みつける/蹴りつける──ぜんぜん当たらず。

顔と肩にチクチク──金のやつが遠くから何かしてくる=うっとおしい。近づいて両腕を思いっきり振り下ろす──泥水と砂利が盛大に巻き上がる。同時に足首に熱さ──又の下を走り抜ける金のやつ=ついでにナイフで切っていった。二匹が並んで遠くからこちらを睨んでいる。

どちらも小さくてイライラする──思いっ切り叫んで怒りを発散=まとめて潰してやる


 レオンの人生初、野生動物との即興連携──意外にもうまく行っていることに充足感。石切場の西側で合流──互いにずぶ濡れ/泥まみれ。巨人と対峙──今まで一番大きな咆哮が巨人の口から放たれビリビリと空気が震えた。

狼が負けじと吠えている──逃げ出す様子もなく/置いて逃げる訳にもいかず=いつのまにか脱出から撃破に計画変更──だが倒す手立ては思いつかず──無謀な挑戦は慣れたもんさ。

 巨人が再び前傾姿勢=ショルダータックル──一回目より疾い。レオンと狼──示し合わせたかのように左右に別れ走り出す。狼は難なく回避。レオン──紙一重で回避、すれ違う巨人の風圧/地面のぬかるみ──足を取られて転倒。

同時に地面が揺れ、強烈な激突音が響き渡る──巨人が石壁に突っ込んだ。激突した反動で巨人の上半身が仰け反る──脳震盪を起したのかフラフラ/倒れまいとして何もない空中を掴もうと手を躍らせている。

 レオンは起き上がり石壁に異変を感じ距離を取った。二度に渡る衝撃のせいか壁に組まれた足場が外れて降り注ぐ──続けて切り立つ石壁に走る一筋の亀裂。そして雷の如く一瞬で亀裂が全体に広がった──石壁が堰を切ったように巨人へ向かって崩れた。

かなりの埃が舞うが大雨ですぐに落ち着く──そして瓦礫の下敷きになって動かぬ、うつ伏せの巨人が見えた。


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