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「この中途採用使えない」のウラにある、「暗黙知」問題を考える

こんにちは!

マレーシアの日系企業にはなぜかいっつもいっつも人を募集しているところがあります。退職したかたに聞いてみると、「昔の日本っぽくてついていけなかった」「体育会系すぎて」って方が少なくなかったりします。

海外の日本人社会って、ある意味、時代が止まってることがあるんです。
なのに、応募者の方は、「日本社会がいや」できてたりするので、いつまでもギャップが埋まらない。

華村さんがこんなふうに書いてます。


日本では絶滅しつつあるはずのパワハラコンプラ無視オヤジが、博物館のような綺麗な保存状態で残されているのが海外の日本人社会だったりするのだ。
僕は中国に来てから中途採用でいくつかの日系メーカーに勤めました。そこで感じたのは、中途採用者に対する過剰な期待と、技術・知識を伝えるためのノウハウの欠如です。
「中途採用なんだから、新卒じゃないんだから仕事ぐらい自分で覚えろ」「なんでも聞こうとせず、自分で理解しようとしろ」という言い方にも一理あります。でも、どこの会社でもそうだと思うのですが、一つの会社にはそこで醸成され積み重ねられてきた暗黙知やノウハウがあります。自分で調べて覚えられることばかりではありません。特に中小製造業、こと海外拠点は現地責任者の権限が大きいため、ローカルルールで成り立っていることが多いように思います。

これ、日本でも「同じ会社にずーっといる人」が多い会社では起きてるんじゃないかなぁ。

ローカルルールは本当に「ローカル」です

日本のローカルルールって、「そこの会社だけ」「その地域だけ」で純粋培養されたものが、そのまま伝承されちゃったりします。金融機関とマスコミでは、時間感覚も別世界みたいに違うんです。

家庭だってそうで、家庭ごとの「常識」ってホント違う。結婚してる人で、「夫の家族と全部常識が同じでしたー!」って人はいないと思います。

ただ、問題は、このローカルルールを「暗黙知」だと思い込んでる人が多いことなんです。

スタンフォード大学工学博士の飯野 謙次さんが書いた「仕事が早いのにミスしない人は、何をしているのか?」によると、多くの会社の「伝達不良」の原因が、メンバーが共有しているハズの「暗黙知」だそうです。

初期のメンバーで仕事をずっと進めていく上では問題は起こりませんが、厄介なのがこのグループに新しい人が来たときです。「当然の知識」はもともと言葉にしにくいものが多く、新参者にはなかなか伝わりません。

飯野さんは、これを防ぐためには、言語化し、メモにすることが重要だと説いています。「暗黙知」をキチンと新しい人に共有するノウハウが求められるのですが、実は、「赤の他人」にきちんと説明するのは、実は難しいのです。
「表現」の訓練をほとんどしない日本の教育を受けた人には、尚更です。
noteに「もやもや」を言語化するのが難しいのと同じです。

「知らない人の力」を借りるってこと

企業側に求められるのは、「知らない人」「よそ者」の力を侮らないってこと。

かつての、人の流動も少なく家族的だった昔の日本企業は、暗黙知を駆使して、効率よく市場を開拓していました。しかし、企業のグローバル化とコスト削減のための人の流動化が当たり前となった今では、知識は明確に文章に落とし込んで共有しなければ、どこかで内部情報のズレが起こり、失敗が発現して厳しい競争に負けてしまいます。

編集者にはこの「知らない」「成長しない」って能力が求められることがあります。「雑誌編集者は成長してはいけない」って言われることがあるほどです。

私もマレーシアにもうすぐ9年になるので、「転校が当たり前」とか「3カ国語学ぶのが普通」とか「学校行事の予定が変わる」とかが、もう当たり前の「暗黙知」になっちゃってます。

だから、あえて日本にいる(マレーシアを知らない)編集者の力を借りて、知らないことを教えてもらっているわけなんです。

「知らない」ってときにパワーになるんですね。

一番すごいのは子どもで、ほとんどの偏見や知識がないですから、けっこうズバズバと本質をついてきます。
だから、子どもと話すと本当にたくさんの学びがあるのです。

話を華村さんに戻します。

こういった状況に海外日本人社会特有のムラの狭さ(悩みを誰にも相談できない)や、先述したようなパワハラ的支配の横行などの悪条件が重なり、ますます仕事ができなくなっていくことで「現地採用は使えない」「中途の人間は聞くばっかりで自分でものを覚えようとしない」などのコンセンサスが出来上がっていくのかな、と想像します。そのコンセンサスは次の悪循環を生み出し、今もどこかで強化されているのかな、とも。

企業側は、一人雇うのにも、高い費用をかけて採用活動するのです。
中途採用のやる気を削いでしまっていたら、お金をドブに捨てるようなものなんです。

ここに気付いた人は、感情的に誰かを叱ったり、馬鹿にしたりするのではなく、「暗黙知」をキチンと言語化して文章化することが重要なのかな。

これが日本企業の生産性の向上にもつながると思います。

それではまた。

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