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道徳心は22種類???

道徳をやらないといじめが起こる!?

 今まで教育現場では、年間35時間やるべき道徳の授業を軽視し、行事の準備などに充てていることもあった。また、教師が独自に準備した資料などを使うことも多いため、道徳の授業で扱われる価値項目が偏ってしまうという問題点もあった。だから、学校現場でのいじめがなくならない。それを解消するためには道徳を教科化し、共通の教科書を使い、すべての価値項目をバランスよくとりあげることが大切だ。

 というのが文科省(政府)の主張であり、道徳は教科化された。教科となったので教科書使用義務が発生し(それまでは使用義務のない『副読本』だった)、年間35時間を欠くわけにはいかない。

 文科省の言う通りに道徳の授業を行えばいじめがなくなる、という発想自体が意味不明だが、これを信じてしまう人が一定数いることも事実である。もしくは多少の疑念は抱きながらも、教育委員会の指導通りに授業を行う教師が多数派だろう。上からの指示に異を唱えるより、疑問を押し殺して従った方が楽だからだ。


道徳心は22種類

 道徳の内容はA~Dで示される。今までは現場の教師任せにしていたため、この価値項目の取り扱いのバランスが悪かった。教科化することによってすべての価値項目を取り上げ、バランスよく道徳教育を行うことで、子どもたちの道徳心が育つ、ということらしい・・・

A 主として自分自身に関すること
 1)自主、自立、自由と責任 
 2)節度、節制
 3)向上心、個性の伸長 
 4)希望と勇気、克己と強い意志
 5)真理の探究、創造 

B 主として人との関わりに関すること
 6)思いやり、感謝 
 7)礼儀 
 8)友情、信頼 
 9)相互理解、寛容 

C 主として集団や社会とのかかわりに関すること
 10)遵法精神、公徳心 
 11)公正、公平、社会正義 
 12)社会参画、公共の精神
 13)勤労 
 14)家族愛、家庭生活の充実 
 15)よりよい学校生活、集団生活の充実 
 16)郷土の伝統と文化の尊重、郷土を愛する態度 
 17)我が国の伝統と文化の尊重、国を愛する態度 
 18)国際理解、国際貢献 

D 主として生命や自然、崇高なものとの関わりに関すること
 19)生命の尊さ 
 20)自然愛護 
 21)感動、畏敬の念
 22)よりよく生きる喜び 

 文科省が示す道徳心は以上の22種類である。つまり学校の教師は、この22種類の道徳心を子どもたちに植え付けることが求められる。

 違和感を覚えないだろうか?
 まず、道徳心を22種類にまとめるのが謎である。何の科学的根拠もない括りであり、しかも「民主主義」や「人権」、「平和」などの項目はない。

 A・Bは一見もっともらしい気もするが、要は価値観の押し付けである。
 Cは「わがまま言わずに決まりに従うこと」や「喜んで人のために尽くすこと」、「国や郷土を愛すること」が求められる。つまり、戦前の『修身』の内容の焼き直しである。
 Dに関しては、項目だけ見ると反対しづらく思えるが、内容的には宗教的要素が強い。そもそも道徳の教科化を強く後押ししてきたのが、政権を支える宗教団体や、宗教団体から派生した政治団体なのだから当然かもしれない。

 私の考え方が100%正しいなどと言うつもりはないが、多くの人が歴史的背景を知らず、まともな議論もないまま、「これが正解だから、この通りにやれ」と押し付けられる方針に違和感と危機感を覚える。





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