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人権教育(犯罪被害者等)

犯罪被害者等基本法
(前文から抜粋)犯罪被害者等の多くは十分な支援を受けられず、社会において孤立することを余儀なくされてきた。さらに、犯罪等による直接的な被害にとどまらず、その後も副次的な被害に苦しめられることも少なくなかった。国民の誰もが犯罪被害者等となる可能性が高まっている今こそ、(後略)

 まず犯罪被害者等の「等」とは、『犯罪やこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす行為の被害者及びその家族又は遺族』を指します。


 扱い方が非常に難しい題材です。単純にやってしまいそうなのは、「被害者遺族の手紙を読んで共感する」というような授業です。惨たらしい殺され方をした被害者の遺族の声は怨嗟に満ちています。当事者の苦悩は計り知れず、犯人にも同じ苦しみを味わわせたいと願う人もいます。その気持ちは当然ですし、誰にも否定する権利はありません。
 しかし、基本的人権である「個人の尊厳」や「プライバシー」などを尊重することと、憎しみの気持ちに同調することは違います。憎しみの感情は「正義の声」として拡散され、世の中に憎悪を振り撒きます。これは新たな人権侵害の火種を生み出します。
 
 人権教育で考えるべきは陳腐な正義感ではありません。犯罪被害者等の中には、生命、身体、財産上の直接的な被害だけでなく、精神的ショック、失職・転職などによる経済的困窮、捜査や裁判の過程における精神的・時間的負担、無責任なうわさ話、執拗な取材・報道によるストレスなどによって、基本的人権を侵害されている人がいるという事実です。凶悪犯罪者を極刑にして社会的な鬱憤晴らしをしても、真の問題解決には至りません。


  また、性犯罪事件では、被害者が警察に届けたり、裁判に訴えたりしない場合が相当あります。なぜ訴えないのでしょうか? それは、訴えることによって、さらに傷つけられるからです。勇気を出して訴えても、捜査の過程で尊厳を傷つけられたり、被害者が社会的に責められる事例もあります。問題は個人の尊厳が尊重されにくい社会そのものにあります。
※『Black Box』伊藤詩織。『涙のあとは乾く』キャサリン・ジェーン・フィッシャー。被害者自身の著書です。読んでみてください。

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 ちなみに、いわゆる「先進国(これも差別的な名称ですが)」の中で、いまだに死刑が執行されるのは日本とアメリカくらいです。他の「先進国」では、死刑は再犯防止に役立たないだけでなく、憎悪を拡散し、新たな人権侵害を生み出すと考えているからです。日本は、人権に関しては「後進国」であると言えます。

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