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「普通」って何ですか?

 以前、東京のセミナーで出会った一人の若者に私の考えを聞かれたことがあります。
 それは、「『普通』って何ですか?」でした。
 その瞬間、私は返す言葉が見つかりませんでした。若者の手首には何本ものリストカットの痕がありました。

 何も言えない私は、どうしてその質問をするのかを教えてもらいました。
 その若者は、これまで「普通」という言葉に苦しんできたと言いました。
 小学校から中学校まで常に先生たちから言われ続けた言葉が、「普通のことくらいしなさい」だったのです。
 周りの友だちができることが自分にはできなかった。周りができるのは「普通」で、できない自分は普通のこともできないダメな人間なのだと、何度も何度も自分を傷つけたと言いました。
「みんなの学校」の校長は「普通」という言葉をどんなふうに理解して使っているのかと問われたのです。

「普通」というくくりに子どもをはめ込んできた過去を振り返らざるを得ませんでした。このことに気づいた今も「普通はね……」などと口走っている自分の言葉があるのです。

 この社会の「あたりまえ」は学校が生んでいるのだと痛感させられた若者との出会いでした。子どもの周りの大人が、今こそ学校のあたりまえを問い直すときではないでしょうか。

次回は2月1日(水)更新予定です。

初出:『教職研修』2018年11月号5頁。一部文面を変更のうえ掲載しています。


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