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学校づくりのスパイス~異分野の知に学べ~

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学校のリーダーシップ開発に20年以上携わってきた武井敦史氏が、学校の「当たり前」を疑ってみる手立てとなる本を毎回一冊取り上げ、そこに含まれる考え方から現代の学校づくりへのヒントを…
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#教師

#69「モノ」とも対話しよう|学校づくりのスパイス(武井敦史)

 今回取り上げるのはジェームズ・ダイソン氏の手による自伝『インベンシ ョン 僕は未来を創意する』(川上純子訳、日本経済新聞出版、2022年)です。筆者はこの本を読むまで「ダイソン」という企業をほとんど知りませんでした。記憶にあるのは、(今ではよくある)サイクロン方式で稼働する掃除機のテレビコマーシャル、そして空洞から空気が流れる送風機を家電量販店で見てびっくりしたのも覚えています。  本書の原題は‘Invention: A Life’で、発明に魅せられた一人の人間の生きざま

#52「四角い学校」のリスク~藤森照信『藤森照信 建築が人にはたらきかけること』より~|学校づくりのスパイス

 前回は自然を鏡にすることで、私たちはより安心して変化を受け入れられるのではないか、という提案をしてみました。しかし自然とは、人にとって常にそうした「心のよすが」であったばかりではありません。天変地異の経験や魑魅魍魎の伝説にも象徴されるように、自然には得体の知れない、畏れの対象としての側面が昔も今もついてまわります。  今回は『藤森照信 建築が人にはたらきかけること』(平凡社、2020年)を手がかりに、こうした「未知の存在としての自然」と教育との関係について考えてみます。

#49 心のガラクタを大切にしよう~スティーブン・ジョンソン『世界をつくった6つの革命の物語 新・人類進化史』より~|学校づくりのスパイス

 今回はスティーブン・ジョンソン氏による『世界をつくった6つの革命の物語――新・人類進化史』(朝日新聞出版、2016年)を手がかりに、創造性と教育について考えてみたいと思います。「創造」というと、才能に恵まれた人のヒラメキによって生まれるもので、現在の学校のような制度的教育とは相性の悪いものとイメージされがちです。  けれども、毎日の服装のチョイスから夕食の献立に至るまで、小さな発想の工夫は私たちの生活の至るところにあります。こうした「草の根の創造性」こそが、一人ひとりの生