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学校づくりのスパイス~異分野の知に学べ~

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学校のリーダーシップ開発に20年以上携わってきた武井敦史氏が、学校の「当たり前」を疑ってみる手立てとなる本を毎回一冊取り上げ、そこに含まれる考え方から現代の学校づくりへのヒントを…
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#lifeshift

#42 いろいろな自分を生きよう!~平野啓一郎『私とは何か~「個人」から「分人」へ』より|学校づくりのスパイス

 前回は、自閉症の東田直樹氏の著作を手がかりに、「首尾一貫した一つの意思を持つ個人」としての「主体」という発想を疑ってみる必要について考えてみました。  今回はこの論点を一歩進めて、さまざまな自分を持つことの必要性について、作家の平野啓一郎氏による『私とは何か―「個人」から「分人」へ』(講談社、2012年)を手がかりに考えてみたいと思います。平野氏は学生時代に投稿した作品で芥川賞を受賞した逸材ですが、氏の作品にはこの本で取り上げている「分人」のモチーフがしばしば登場します。

#7 公教育の「埋蔵金」~ リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット『LIFE SHIFT』より~|学校づくりのスパイス

 「人生100年時代」という言葉を頻繁に耳にするようになりました。2017年には内閣官房に「人生100年時代構想会議」が設置され、2017年の流行語大賞にもノミネートされました。ただ、急速に広まったためか言葉だけが一人歩きしてしまい、長寿命社会の展望を生産的に議論する向きは少ないように思います。これはもったいないことではないでしょうか。長寿命社会についての話題の火付け役となった、ベストセラー『LIFE SHIFT――100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社、2016年)には、