マガジンのカバー画像

学校づくりのスパイス~異分野の知に学べ~

72
学校のリーダーシップ開発に20年以上携わってきた武井敦史氏が、学校の「当たり前」を疑ってみる手立てとなる本を毎回一冊取り上げ、そこに含まれる考え方から現代の学校づくりへのヒントを…
運営しているクリエイター

#学校運営

#60 同調圧力克服法~大塚ひかり『くそじじいとくそばばあの日本史』より~|学校づくりのスパイス

 教員にしても児童・生徒にしても、とかく「足並みをそろえる」ことが重視されてきたのが日本の学校現場です。この原因の一端は従来の日本社会のあり方自体に由来するものであろうし、よい面も確かにあるのですが、一方で学校という社会集団に必要以上の同調圧力を産む可能性もあります。  2021年の中央教育審議会でまとめられた、「『令和の日本型学校教育』の構築を目指して~全ての子供たちの可能性を引き出す、個別最適な学びと、協働的な学びの実現~(答申)」においても「従来の社会構造の中で行われ

#47「死」という発明~スティーヴン・ケイヴ『ケンブリッジ大学・人気哲学者の「不死」の講義』より~|学校づくりのスパイス

 前回の連載では、私たちの人生の文脈を無視して訪れる「死」の意味について考えました。本連載の50回目となる今回は、『ケンブリッジ大学・人気哲学者の「不死」の講義』(日経BP、2021年)を足がかりに「死」というものの存在が、生きている人と社会に対して果たしてきた役割とその可能性について考えてみたいと思います。 「死」と人類の進歩 生物が個体の死からできるだけ免れようとするのはごく自然な現象です。叩こうとすれば虫は逃げ、植物は光に向かって伸びます。けれども死を日頃から意識して

#25「捨てる技術」の時代~ 羽生善治『大局観 自分と闘って負けない心』より~|学校づくりのスパイス

 新型コロナウイルスの猛威が学校現場にも大きな陰を落とそうとしています。この原稿を書いている2020年4月上旬の時点では影響がどの程度長引くか見通しが立っていませんが、学習指導要領に定める授業時数を年度内に消化することができない学校も少なからず生じるはずです。  そうした局面での学校の課題は、大状況を俯瞰して現場レベルで活動を取捨選択して再組織化することで、児童・生徒に対する教育的効果を最大化することです。今回はこうした大局をつかむ知の働きについて、将棋の棋士の羽生善治氏に