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学校づくりのスパイス~異分野の知に学べ~

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学校のリーダーシップ開発に20年以上携わってきた武井敦史氏が、学校の「当たり前」を疑ってみる手立てとなる本を毎回一冊取り上げ、そこに含まれる考え方から現代の学校づくりへのヒントを… もっと読む
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2022年10月の記事一覧

#38「よそ見」をする力~郡司ペギオ幸夫『天然知能』より~|学校づくりのスパイス

 今回は前回の連載をふまえ、AIとは異なる人間(や生物)に固有の知の性質とはどのようなものかについて、理学者の郡司ペギオ幸夫氏による『天然知能』(講談社、2019年)を手かがりに考えてみたいと思います。この本は本連載でいつも取り上げている本に比べるとちょっとむずかしく、筆者も理解するのに何度も繰り返し読む必要がありました。  けれども「百家争鳴」状態のAI論争において、問題の本質をこれほど徹底して突き詰めて考えている著作を筆者はほかに知りません。 「一・五人称」の知性 本

#37「泥臭い知性」の時代~養老孟司『AIの壁 人間の知性を問いなおす』より~|学校づくりのスパイス

 今回と次回はAIの進化と人間の知の働きの違いについて考えてみようと思います。まず今回は解剖学者の養老孟司氏の『AIの壁――人間の知性を問いなおす』(PHP研究所、2020年)を取り上げます。  この本は棋士の羽生善治氏、経済学者の井上智洋氏、AIを倫理や美の問題の観点から論じてきた哲学者の岡本裕一朗氏、「ロボットは東大に入れるか」プロジェクトを推進してきた数学者の新井紀子氏といった、AIと人間の知性との関係に関心を持って来られた方々と養老氏との対談集ですが、本書を手がかり