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学校づくりのスパイス~異分野の知に学べ~

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学校のリーダーシップ開発に20年以上携わってきた武井敦史氏が、学校の「当たり前」を疑ってみる手立てとなる本を毎回一冊取り上げ、そこに含まれる考え方から現代の学校づくりへのヒントを…
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2022年6月の記事一覧

#30 今こそ尖った教育論を!~ 森本あんり『異端の時代 正統のかたちを求めて』より~|学校づくりのスパイス

 コロナの感染拡大が国内では少し落ち着きましたが、その波紋は今後とも続くでしょう。学齢期の子どもが学校に毎日登校して学ぶことは自明ではなくなり、オンラインを活用した学習の可能性も拓かれました。そして同様の事態が再び起こりうるとなると、その課題は危機対応だけには収まりません。従来の「学年主義」「履修主義」の前提を一度括弧に入れて、公教育全体を再デザインする必要が出てくるはずです。  こうした時代の転換期にあって、柔軟で足腰の強い議論を展開するために必要なのはどんなことでしょう

#29「かけがえのなさ」の危機~竹下文子(文)、町田尚子(絵)『なまえのないねこ』より~|学校づくりのスパイス

 今回取り上げるのは竹下文子氏と町田尚子氏による『なまえのないねこ』(小峰書店、2019年)という絵本です。本文だけならおそらく1千字にも満たないこの本は、絵本に関するたくさんの賞を受賞し、ネットの評価を見てもすごい人気です。その背景には単なる「ネコブーム」では片づけられない普遍的な社会課題が潜んでいるように思います。  ちなみに、筆者の竹下さんは静岡県の下田市在住だそうです。筆者も仕事でときどき下田に行くことがありますが、町を歩いていると、港町のためか路地裏などにたくさん