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学校づくりのスパイス~異分野の知に学べ~

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学校のリーダーシップ開発に20年以上携わってきた武井敦史氏が、学校の「当たり前」を疑ってみる手立てとなる本を毎回一冊取り上げ、そこに含まれる考え方から現代の学校づくりへのヒントを…
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2021年12月の記事一覧

#18 コミュニケーションの鍵は「弱さ」にある~岡田美智男『〈弱いロボット〉の思考』より~|学校づくりのスパイス

 筆者は「コミュニケーション力」(コミュ力)という言葉がキライです。  一般に「コミュ力」があるとされる人のイメージというと、初めての相手に対してもハキハキと応対でき、社交的で活発な人というところでしょうか。逆に内向的で、自己表現に躊躇するような人は「コミュ力」が低いと呼ばれるのかもしれません。  けれどもちょっと考えてみてください。コミュニケーションとはそもそも関係のうえに成り立つもので、相手や集団によって望ましいコミュニケーションも当然異なります。  一方で「○○力

#17 自然の知・人間の知・人工の知~ステファノ・マンクーゾほか『植物は〈知性〉をもっている』より~|学校づくりのスパイス

 今回は、『植物は〈知性〉をもっている――20の感覚で思考する生命システム』(NHK出版、2015年)を手がかりに「知性をどう捉えるべきか」という教育の基本課題について考えてみたいと思います。著者は植物学者のステファノ・マンクーゾ氏と科学ジャーナリストのアレッサンドラ・ヴィオラ氏です。  彼らは知性を「問題解決能力」と定義したうえで植物の知性の性質を論じていますが、これは私たちが「頭がよい」と表現するように、知性というものを脳の属性・産物と捉える思い込みの再考を迫るものです