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学校づくりのスパイス~異分野の知に学べ~

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学校のリーダーシップ開発に20年以上携わってきた武井敦史氏が、学校の「当たり前」を疑ってみる手立てとなる本を毎回一冊取り上げ、そこに含まれる考え方から現代の学校づくりへのヒントを…
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2021年7月の記事一覧

#8 学校は「生きて」いる~福岡伸一『動的平衡』より~|学校づくりのスパイス

 「学校」という場所にはいくつもの顔があります。行政にとっては数ある公共施設の一つであり、保護者にとっては教育機関であり、子どもにとっては学びの場であり、地域住民にとってはしばしば精神的シンボルでもあります。近年少子化が進み、学校の配置見直しに着手せざるを得ない自治体が増えてきましたが、多くのケースで地域の反対に遭って軋轢(あつれき)を引き起こしています。公民館や警察署などの他の公共施設と異なり、学校という施設には、特有の地域感情がついて回ることが多いからです。今回はそうした

#7 公教育の「埋蔵金」~ リンダ・グラットン、アンドリュー・スコット『LIFE SHIFT』より~|学校づくりのスパイス

 「人生100年時代」という言葉を頻繁に耳にするようになりました。2017年には内閣官房に「人生100年時代構想会議」が設置され、2017年の流行語大賞にもノミネートされました。ただ、急速に広まったためか言葉だけが一人歩きしてしまい、長寿命社会の展望を生産的に議論する向きは少ないように思います。これはもったいないことではないでしょうか。長寿命社会についての話題の火付け役となった、ベストセラー『LIFE SHIFT――100年時代の人生戦略』(東洋経済新報社、2016年)には、