〔戯曲を稽古して通してみようの会〕全員稽古場日記/顔合せ編(part 1)

「背信」稽古場日記を全員で書いてみようという企画。
初回は先日行われた顔合せの全員稽古場日記です。

まずはpart 1。

※掲載は原稿到着順です。

【灘波愛】

ピンターの「背信」は私が好きな戯曲トップ5に入る作品なのですが、久しぶりに読んでもやっぱり面白い!を再確認した稽古初日でした。8年くらい前?に初めてこの作品に触れたのですが、私自身8年分歳を重ね、演じるエマという役の年齢に実年齢も近づいていると思うと何だか感慨深いです。演劇以外でこんなに長く続けられていることってないなぁと…。これからの稽古が楽しみです☻これは余談ですが、参加している方々から出身地の名物お菓子を頂きまして…東京出身としては羨ましいなと思いました。東京ばな奈(多分食べたことない…)とか差し入れたら良いのですかね、こういう場合?

【佛淵和哉】

自分ごとだが海外戯曲を読んだ事はあっても出演した事は無く、唯一フリードリヒ・フォン・シラーの『群盗』という作品に出演する事が決まったのだが、コロナで中止の末流れてしまったことがある。元々海外戯曲には興味があったのでいつかまた挑戦できればと思っていた矢先、今回上演とまではいかずともハロルド・ピンターの作品に俳優として関われる絶好の機会を頂いた。
実はハロルド・ピンターの『恋人』という作品を19歳の頃僕の尊敬する先生におすすめされて読んだことがある。当時の僕には難解で、読んだ上で先生に「これの何が面白いんすか?」と尋ねてみると先生は「面白さくらい自分で見つけろよ!」とややお怒りになりながらも丁寧に面白さを解説してくれた。思えばそこから戯曲に対する関心が深まったのだろうと思う。そう言った意味ではこうしてまたピンターに出会えた事は感慨深いものがある。
今回扱わせて頂く『背信』も噂に違わぬ面白さで、家で目を通し始めてからあっという間に読み終わってしまった。しかし、いかにも色んな解釈ドゾ!と言わんばかりの本なので、実際に演じるのは艱難辛苦しそうだなぁと思いながらも稽古初日の読み合わせで、心配は期待に変わった。小川さんと文さん以外初めましての方々で少し緊張もあったのだが、いざ本読みが始まるとその人の読み方に表れる個性が役の生き様に反映されて面白い。思わず笑ってしまった所があり、本読みでこれなのだから動いたらもっと面白くなると言っても過言では無いかも。と少し先が見えた気がした。
こうゆういわゆる「初読み」のとき、人の台詞を聴いて、真っ先に笑いを探しに行く自分に気がついた。俺にとって演劇の、はたまた戯曲の面白さとは、どこにも書かれていない笑いなのだと改めて気付かせてもらった日だった。昔先生が仰った「面白さくらい自分で見つけろよ!」は胸のどこかで息づいて、確かに成長していた。

【都倉有加】

顔合わせ前日当日と地元の山梨にいたわたしは、山梨から稽古場へと向かった。電車の中で「背信」を読もうとしたのだけど、久しぶりの中央本線の揺れにやられ電車酔い。諦めた。大学時代は毎日2時間かけて通っていたのに。往復4時間。信じられない。

自己紹介と読み合わせで初めて声に出す瞬間は緊張で心臓の音がみんなにも聞こえてるのではと思った。みなさんのお声で戯曲をきいて、とても楽しかった。みんな違うけどみんなおなじひとに感じるしすごい。読み合わせのあと感想を言い合った時間がとても楽しくて有意義でとても勉強になった。ひととつくることの楽しさ実感した。みなさんいいひとでそしてすごい。

以前ちがうワークショップで「背信」に取り組んでいるのを見学した。その際は3組の「背信」を一日でみたのだけど、ずっと飽きずに観られたし、どの組もシーン毎に印象的で強く覚えているやりとりが必ずひとつはあって、なんか絵画的だなと思ったのを覚えている。美術館でいろんな絵を次々に見ていくあの感じ。
せっかくだからいろんなこと準備していろんな挑戦したい。あんまりやったことのない役だからとても難しいけどとても楽しみ。新しい景色を見たい。(言ってみたかった)

個人的反省としてはなんだか小さくまとまってしまったな、相手への集中力が少なかったな、目的、関係性、早くセリフ覚えよう。
セリフを早く自分のことばにしたい。ひとつひとつのセリフの背景が多く選択肢がたくさんあると思うので、もちろん自分で解釈をするけれど決めつけず、相手とのやり取りの中で自由に選んでいけたらいいな。句読点がとても面白いので、戯曲の句読点は正確にやってみたい。句読点にシーンを面白くするヒントがある気がする。そのためにはもっと本を読まなければ。こういうふうにもっと読み込まなければと思う本があるのがとても嬉しいし楽しい。いただいたシーンとても好き。でも全編もやりたい。よくばり。全編読み合わせしてみたいな。より担当シーンのこと分かる気がするしいろんなことに挑戦できる気もする。そう挑戦したい。良いシーンをつくりたい。予想できないシーンがつくれたらいいな。本当に楽しみ。読む。

【綿貫美月】

こんにちは、綿貫美月です。
初めて稽古場日記を書くもので、緊張しています。変な文章になるかもしれませんが、温かい目で見ていただけたら幸いです…笑

せっかくなので、上野さんがあげてくださった項目について書こうかなと思います。

①稽古場に来るまでの時間の過ごし方
直前というか、その日は「稽古に間に合わせるぞー!!」という気合いで仕事してました。
余裕持って着くつもりが、迷子になってぎりぎりになったので、やっぱり時間のゆとりは大事だなと思いました…間に合って良かった…( ´ー` )

もっとその前の、初めて戯曲読んでから顔合わせの日までは、内容整理、状況把握しようと時系列の整理をしました。
整理するとスッキリする分、書かれてないこと、空白の時間(時間が1年後に飛んだりするので)など、解釈しがいのあることがいっぱい出てきて、稽古場で皆さんの話を聞くのを楽しみにしてました。(話せる時間あったのにどれくらい喋っていいかわかんなくてチキってしまった…これからもっと話せますように…!)

今回私が演じるのは、不倫する前のエマ。
私個人は不倫したことがないので、不倫のハードルがとても高いのですが、エマにとってはどうなんだろう…どうしてその一線を越えたんだろうと考え中です。
この時代で不倫ってどれくらいタブーだったのかなどもまだ勉強不足なので学んでいきたいし、エマの価値観ももっと自分の中で明確にしていきたいな。
あとエマがジェリーにどれくらい最初好意を持っていたのか等、今後詰めていきたいなぁ…エマチームで共有したいなぁ…なんて考えています。
(全く好意なかったらあれだけ言い寄られようが心動かないと思うんですが、どうだろう…ロバートとの結婚生活どうだったの?ってことについても考えていきたいですね)

②顔合わせ&本読みの感想
知り合いが全然いなかったので、少しびくびくしてましたが、あたたかい雰囲気の方ばかりでほっとしました。
皆様と仲良くなれますように…!いろんなシーンの稽古観たい…!

本読みも楽しかったです!
戯曲って、人が読むと一気に色が変わる(色がつく?)感じがします。他の人の読みを聞くと、自分が読んだだけでは見えなかった視点や解釈、雰囲気を知ることができて好きなんです。
今回特に、どうとでもとれる台詞や、私が難しく捉えてしまいがちな台詞が多く、想像以上に想定と違った展開を見ることができ勉強になりました。
(この戯曲で笑えるシーンて作れるんだ!ってことも驚きました。)

他の方のシーンも、自分が出るシーンもこれからの作り込みがすごく楽しみです。魅力的な作品に仕上げられるよう頑張るぞ!

【上野友之】

総勢14名の俳優と上野とで顔合わせ。

自分の思いつき企画に人が集まってくれて感謝感謝。
(ご応募いただいたのにお断りした皆様すみません。)

稽古場で通してみよう、というサークル活動なので、主宰する自分としてはいつもほどは緊張せずに準備をして皆様を迎えたのだが、俳優側はだいたい皆緊張しているようだった。

まあそうだよね。顔合わせして、しかもそのまま本読みするんだもんね。
そしてどんな状況であれ演技するということは緊張しますよね。
良い演技の為には、いかにリラックスできるかが至上命題だと思うのだけど、一方で同じくらい緊張感も大事だったりするという、いつも思うことを思った。

顔合わせの流れとしては、

上野の挨拶

稽古場のルールとか感染対策とかの説明

全員自己紹介

ハラスメント対策説明

休憩

本読み

感想など言い合って解散

だったのだが、俳優三名に協力して頂き、上野も加えた四名の「ハラスメント対策委員会」を設置していたので、その説明もする。

規模の大きな公演、法人格のある劇団では、法律的にも様々なハラスメント対策が推奨されているし、実際にどんどん導入されている。

今回は、実質的に上野個人が呼び掛けた同好会的な企画で、そもそも収益事業でもないけど、そうは言っても稽古をする以上は、何らかの対策はとりたいと思っていた。

いわゆる小劇場のいわゆる小さな現場、また最近多い俳優主宰の一人ユニットなどは、「組織」としての実体がほぼ無い現場も多いしこれからも増えていきそう。

そういう場合に、今回のように、参加する俳優サイドにもハラスメント委員のような役職についてもらって、窓口を多くするのも一つの手なのではないかなと今のところは考えている。委員に過度の負担がかからないことも大切で、それも含めて学んでいきたいと思う。

全員での本読みでは、演出家と(配役後の)俳優の戯曲の読み方が基本的に違う、という当たり前の事実を認識した。
演出家は、全体のストーリーラインや場面毎に求めることを俯瞰してイメージするのに対し、俳優は多かれ少なかれ、自分が演じる役を中心として読むわけで、そもそもの視点の置き場が違う。

「最初はできるだけ自分の配役がわからない状態で戯曲を読みたい」という俳優もこれまでに複数いたことを思い出した。

終わって、行けるメンバーで軽く飲みに行った。意外と若手が多め。
顔合わせの後に、そのまま飲みに行くなんていつぶりだろうね、という話もする。
コロナ禍以降、公演からあらゆる種類の飲み会が根絶されて、「飲みニケーションってほぼ必要なかったね(何なら飲まない方が俳優は本番のコンディション良いね)」と思う面も多々あるし、
飲み会を打ち上げなどの「公式行事」としてやると、主宰側は幹事業務も発生する「仕事」になるので正直めんどくさいと思ってた部分もあるけど、
特に稽古序盤の全員人見知り探り探り状態の時は、一発飲みに行くだけで前進することもあるよなあ、と。
なので、有志で飲むのは楽しかった。

今回は「背信」という戯曲を場面毎にチーム分けして稽古するので、次回からはチーム単位、一気に少人数に分かれての稽古になる。
それも楽しみ。

【太田旭紀】

いよいよ始まりました。上野さんの【戯曲を稽古して通してみようの会】

顔合わせの日の前に今回の会で使うハロルド・ピンターの戯曲『背信』を自分で読み、台詞の行間が多くて頭がパンクしそうになったのですが、顔合わせで皆さんの声で改めて台詞を聞くともっとパンクしそうになりました。

でも、行間が多いことで役者さんごとにそこの解釈が違って色んな登場人物像が湧き上がってめちゃくちゃ面白かったです。これが舞台公演であればそこからひとつにすり合わせていくのでしょうが、今回の会は戯曲の場でチーム毎に分けて発表なので、それぞれのチームがどういう役作りをしてくるのかがとても楽しみです。

今回の顔合わせでは本読みをした後に少し感想を言い合ったりしたのですが、もうこの時点でいい作品が出来る予感がしました。なんて贅沢な会なのだろう。

太田旭紀

【齊藤由佳】

今回給仕役をやらせていただいている齊藤由佳と申します。拙い文章ですがご容赦ください…。顔合わせ&初読み合わせ楽しかったです!顔合わせは毎回緊張するのですが、最近は同じようにお芝居をしている方と出会える!という嬉しさの方が強いです。伝わりますかね…。それにしても人数が多く感じました!14人で4(3と言いたいけど給仕役としてここは大きな声で4と言うべきなのだきっと)人芝居をするって面白過ぎる(笑)。あこれは“おっかしい”もあるのですが、ほとんど“奥深い”の方です。人間の色というものが人数分降ってくるので、個人個人の魅力や役の解釈にうっとりしながら各場を聞いていたのですが、終わってみると、登場人物3人各々が非常に複雑で多面的な人間に思えたのです。つまり一人の人物にまとまったということです。いろんな顔をもつ人に。面白っっ!逆時系列がポイントな「背信」なので、毎回無知な状態で読みたいし聞きたいし観たいですよね…。不可能だけど。”!?!?!?!?!?“と”!!!!!”と”?????”と”……(納得的なやつです)”の大渋滞な戯曲ですので。伝わりますかねこんな表現…。あと、個人的に起承転結をあまり感じないのですが、それも逆時系列だからですかね。各場が、展開の役割を担っているというよりも、全力でその一瞬の人と人の接触を魅せてきている感じがします。あーあとあとあと、舞台は毎回全く同じお芝居にはならなくて、役者さんたち自身が自然に生まれた感情や言動の差異に敏感になったり従順になったりしてその次のお芝居が生まれていくのが面白いと思うのですが、逆時系列だとどうなるの!?ほえ!?ってなります。追求したい…。単にちょっと嬉しかったことを言うのですが、第四場の終わりのト書きが好きで、今回ト書き担当でよかったです。「彼の肩に頭をのせ、静かに泣く」。涙のワケをあれこれ想像しますよね。エマとロバートの一番聞きたい会話が描かれていないので、このト書きの”私意味ありますよオーラ”がすごいです…。いい意味で。結構字数いっていることに気づいたので、最後にぞくっとした点を話して初回の日記を終わります。不倫の恐ろしさや愚かさを第一場から散々みてきたはずなのに、最後の第9場でニヤニヤしている自分にぞわっとしました。自分で読んだときはもう少し冷静だったのに。ジェリーのピュアな恋心がピュアな恋心すぎて(笑)。つまり、こんな感じで、皆さんの声で聞くことによって「背信」の面白さを倍になって感じる素敵な一日でした!今後も楽しみです。このような機会をつくってくださってありがたい限りです。

【夏アンナ】

◯稽古場に来るまでの時間をどう過ごしてたか
海外戯曲は今までシェイクスピアなどの古典しかやったことがなかったので、どう取り組めば良いのだろうと模索する時間になりました。(今回に限らず、舞台をやるたび毎回そうなりますが...)
とりあえず、時代背景をザッと調べてから、時系列順に出来事(会話の中で出た話題)や年齢、人物名、地名をメモしながら4度くらい通しで読みました。
時間が逆行しているものだったので、試しに一回逆から通しで読んでみました。やっぱり今まで見過ごしていた、新しい発見がありました。
また、地名や人名を調べて、「日本に置き換えたら何かな...」とかいろいろ考えていました。今のところノートには「キルバーンは吉祥寺」とメモしてあったりしています。これは作品に取り組むにあたって必要なことだからというよりも、自分がグダグダ考えたり調べたりするのが好きだからです。好きな作品に出会うといつのまにか2次創作ばっかり見ているようなタイプですので...。

◯顔合わせand本読みの感想
まず、稽古に参加できる場があるというのが本当に幸せです。一方的に存じ上げている俳優さん達の中で、私も入って演技出来るのかと思うと、嬉し過ぎてひっくり返りそうです。ガチガチに緊張していましたが、幸せでした。
勉強熱心な方が多い印象を受け、参加者の俳優さん皆様素敵でした。なんとか食らいついていきたいと思います。
ハラスメント対策についてしっかり時間を割いて説明がされ、信頼が出来る稽古場だと感じました。私も自分の言動を省みるきっかけになりました。
不倫ものということで、俳優さん達の個性の化学反応を観られるのが楽しみです。自分の余計な野次馬根性の血が騒ぎそうです笑。

part2へ続きます。

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