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月と六ペンス


あるカフェの名前になっている小説

だから気になっていた。

昨日のPlay a Lifeを観劇して
少し世界に興味を持ったから、これを機に買ってみた。

早々に不倫の話が出てきて、おやと思った。

「フランス文学は、
男と女が出てきたら、不倫の話しかないんだ!」

大学のフランス文学の教授が
声高にそう言っていたことを思い出した。

イギリスの作家だと思っていたが、
検索すればパリ出身だと書いてあった。

笑いが漏れた。


「あんた、窓開けてるんだから、
大音量でそれ流さんでよ!
近所のみんなに、変なもの勉強してると思われるでしょ!」

教授の声高な叫びと同時に、
それを聞いていた母親の叫びも思い出した。

コロナ禍で、緊急事態宣言の合間を縫って、
実家に帰っていた時の講義だった。

リビングの窓を全部空け、
ソファに寝転びながら、その教授の声高の叫びをiPhoneでスピーカーを大音量にして聴いていた。

あの時の光景は、全てが滑稽で面白かった。

そうしてそれを思い出して、また笑いが漏れた。


モームには共感出来るところがあった。

その人自身の事が好きなのでは無い。
ただ、その人の思考回路と感情、それに基づく言動に興味がそそられること。

そうして、自らでは理解し難い人の思考回路にこそ興味がひかれ、暴いてみたいと思ってしまうこと。

作家というものはそういうものだとモームは書いていた。

自分に文才と想像力が無いだけで、
根の気質はそうなのかもしれないと思った。

やっぱり、笑いが出た。

そうして、自分もまたこの主人公と同じように、
人への興味がそういうものでしかないから、
その人自身の解釈が終わった瞬間に興味が失せ、
恋愛も無意識に終わらせてしまっているのではないかと危惧した。

ちょっと恐ろしくなった。


2時間半ほどで読み終わった。
解説まで読む元気はなかった。

立ち上がったら、ぐわんと目眩がした。

本当に久しぶりに、
異国の街並みを見て、空気を吸ったような気がした。

目眩が直れば、
そこは居座っていたチェーンのカフェで

見たことも踏みしめたことも無い
想像上の石畳の道は消え、
少しふやけたような油で滑る殺風景な床を踏みしめていた。


あぁ、これぞ六ペンス…



だけど、どうしても
カフェの名前をこれにしたのかは分からなかった。


夢と現実
理想と俗世


この対比だけで、あのカフェの名前が決められていなければ、それでいいと思った。



 

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