赤字ローカル線の廃止を進めるべき

コロナ禍で鉄道業界の体力が弱り、ローカル線の存廃問題が各地で議論されている。北海道では留萌本線が廃止になったし、JR東日本、JR西日本にはかなり多くの赤字ローカル線があり、都市部の収益で支えきれなくなった。
コロナ禍でも2021年に唯一黒字だったJR九州、東海道新幹線という強い経営基盤があるJR東海は、2023年5月5日現在、今のところ地元と赤字ローカル線の廃止協議を考えていないとしている。しかし他のJR各社は既に協議を始めている。特に広島県では、日本一の赤字ローカル線である芸備線の存廃をめぐってJRと地元自治体が対立していて、地元が話し合いを拒否するまでこじれている。

私は赤字ローカル線の廃止に賛成である。
35年近く前の選挙で、国民が国鉄分割民営化に賛成の民意を示した以上、国鉄が民間会社になって、営利企業になったから、赤字路線を廃止して利益を上げるのは当然の企業行動である。これは選挙でも国鉄分割民営化反対派が主張していたから、当然予測できた。私はこれを踏まえても国鉄の巨額赤字を解消するには分割民営化しか合理的な方法はないと多くの国民が判断したと考える。自分たちで国鉄分割民営化を賛成して、今更赤字ローカル線を残せというのは決定に対して無責任で支離滅裂としか言いようがない。

しかし株式を国が保有している実質国有企業の北海道と四国は国策に従い残す必要がある。既に完全民営化を果たしたJR東日本、東海、西日本、九州は私鉄と同様、比較的自由に廃止できるようにすべきである。

もし、それでも赤字ローカル線を残したければ、民営化した各社を再び統合国営化する議論をすれば良い。鉄道の経営体は、ほぼ40年ごとに変わってきた。JRで問題が見えてきて、実際企業の存続も難しい会社もあるから、再び経営体を変える議論があっても良い。しかし少なくともJRの現在の体制で行くなら赤字ローカル線は廃止すべきである。

今、存廃が議論されているところは、利用が多い少ないと言う以前に、人が住んでいない。JR西日本の芸備線や大糸線は、乗ったことがあるが、1日数本しか走っていない列車に数人しかお客が乗っていなかった。周りを見回してもほとんど人が住んでおらず、明らかに人の流れと合わないどころか、人の流れのない所を走っている。これらの路線は、バス転換してもバスの経営すら成り立たないだろう。決まった高校生の通学需要しかないなら、拠点駅にタクシーを待機して、通学時間に合わせてタクシーで高校生を運べば十分である。芸備線に至っては、並行する中国自動車道すらほとんど車が走っていないので、長距離需要は皆無と言ってよく、1日3本、時速25kmで走る鉄道を残す意味が分からない。今議論されている、輸送密度2000未満の路線の実態はこんな感じである。

実際問題として、廃止協議を行っている赤字ローカル線沿線住民は、人生で何回鉄道に乗ったことがあるのだろうか?実際子供の頃に遠足で1度乗った思い出があるなどと言う人もいる程だから、全く乗ったことがない人も少なくないだろう。
地方では、成人のほとんどが移動手段として自家用車しか使わない。鉄道駅周辺は閑散としていて、遠くの国道沿線が賑わっているのはよくある地方都市の姿である。街も鉄道利用を前提としていない。鉄道は運転免許を持たない高校生の通学に特化しているのがローカル線の利用実態である。成人は、どこへ行くにも車を使うし、本数が少なくて遅く、車を使うよりも時間がかかる鉄道を使う理由はない。

こういう実態で赤字ローカル線を税金で残すのは税金の無駄遣いである。その税金を、国道の整備や自動車関連税の減税に使った方がよほどその地域の住民に利益をもたらす。

実際お客が乗っている鉄道路線は、新幹線、大都市の通勤路線、時速130km以上で走行し、高速道路を使うよりも速く目的地に着く列車だけである。高速走行出来ないローカル線は、既に交通機関としての役割を終えたから、廃止してその分自動車交通の利便性を高める方向に税金を使うべきだと言うのが私の持論である。赤字ローカル線でも時速130km以上で走れるようにして、現代の交通機関としての役割を果たせるようになって需要喚起できるならこの限りではない。

犀藤 創生

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