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ピラルクは私に笑いかける 第1章・邂逅

 大きい生き物って、わくわくしませんか。

 子供の頃の好奇心が大人になっても消えず、水族館で海や川に住む大きな魚や哺乳類を見ることが楽しみの一つになってしまいました。旅先に水族館があれば、ほぼ必ず訪れるようにしています。

 動物園ではなくなぜ水族館なのかと言いますと、水族館は展示のほとんどが室内なので、季節を問わず快適に見て回れます。また、生き物との間にガラスを一枚挟むので、動物特有のけもの臭さが苦手な人でも生き物を近くで見ることができます。個人的には、暗くて閉じた空間が落ち着くので好きというのも理由のひとつです。

一番の“推し”

 一番の“推し”魚は、世界最大級の淡水魚・ピラルクです。

 南米のアマゾン川流域に生息しています。下の写真は、かごしま水族館(鹿児島市)で先月(2022年10月)撮影したものです。


 隣に写っているのは私(全長1・5メートル)なのですが、こんなに大きいのに川の生き物なんです。わくわくしてきませんか。

ピラルクってどんな魚?

 「講談社の動く図鑑move mini魚」、「ゆるゆるアマゾン図鑑」(学研プラス出版)などによると、ピラルクは全長3〜4・5メートル。平べったい頭と体の後ろにかけて赤く色づいた部分が特徴です。大きな鱗は1枚10センチほどもあり、現地では靴べらやヤスリに利用されることもあるそうです。1億年前からほとんど姿を変えていない、いわば「生きた化石」です。心なしか顔もおじいちゃんっぽく、他の小さな魚よりも表情があるように見えます。そこがいい。


出会いは突然に

 記憶にある中で初めてピラルクに出会ったのは5年前、神戸市須磨区の須磨海浜水族園でした。



 トンネル状の水槽で頭の上をたゆたう姿に心を奪われてしまいました。ふと足元を見ると、水底すれすれで休んでいる子がいたので、控えめに記念撮影させてもらいました(現在、ピラルクがいたアマゾン館を含む本館以外のすべての施設は再整備中のため観覧できません。再開時期など詳細は下部から公式HPへ)。

 2度目の出会いは、鳥羽水族館(三重県鳥羽市)。日本一の飼育種類数を誇る「鳥羽水」、いるだろう。会いたい気持ちを抑えながら水槽に向かいました。


 いた。


 ちょっと待って。足元まで降りてきてくれた。


 顔をお見せできないのが残念ですが、ぴたっと横で記念撮影できたのが嬉しすぎて、本当はうまく笑えていません。

 水槽を覗くと、こちらの存在を認識しているような表情を見せてくれることがあります。子供に混じって子供みたいな大人が来たというのを、見透かされているのかもしれません。私が疲れているだけなのかもしれませんが、こちらに向かって笑いかけてくるような気がします。好きなアーティストのライブに行って、「絶対目があった」と思うくらいのことなのでしょう。しかし、この表情に出会えたときの多幸感は何にも代え難いのです。たとえ気のせいでも。


次回以降、ピラルクのよりリアルな姿を知る旅(取材)に出る予定です。


広瀬聡子