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【京都「丹後・魚っ知館」】5月末で閉館の水族館 飼育員さんの話、もっと聞きたい!

 京都府宮津市にある府北部唯一の水族館施設「丹後・うお館」(以下魚っ知館)が2023年5月30日に閉館します。京都新聞のニュースサイトでは、魚っ知館の4人の飼育員さんに、閉館前最後の連休にぜひ見に来てほしい生き物と、魚っ知館の思い出をお聞きした記事を配信しました。

 実は、魚っ知館の飼育員さんは全部で6人いらっしゃいます。今回は、取材時にお会いできなかった残り2人飼育員さんの紹介と、記事本編では書き切れなかったこぼれ話を紹介します。

▼推しはミノカサゴとクラゲ、糸井美奈さん

糸井さんとカミクラゲ。現在は「アカクラゲ」という別の種類のクラゲが展示されています

 スタッフ歴2年の糸井美奈さん。ニフレル(大阪府吹田市)、名古屋港水族館(愛知県名古屋市)など3つの水族館で飼育員として働いた経験があります。以前お勤めだった水族館は、どこも魚っ知館に比べると大規模な施設ばかりの糸井さんですが、飼育員さん目線で魚っ知館の魅力を教えてくださいました。

 「大きい水族館だと、それだけ1人の飼育員がお世話をする生き物の数も多くなります」

 「魚っ知館は、生き物の種類はよそに比べると少ないですが、その分一つ一つの生き物を丁寧に見ることができるようになりました。また、お客様とお話しする時間もできました。水族館の配管やろ過槽(バックヤード)の仕組みをゆっくり教えて頂くこともでき、良かったと思っています」
 
そんな糸井さんの「推し」はミノカサゴとクラゲ。ミノカサゴは、魚っ知館のキャラクター「ウオッチくん」のモチーフにもなっている魚で、エサをあげる際に水面に上がってくる様子が可愛らしく、お気に入りとのことでした。

▼アザラシ腹筋の生みの親 吉田優明さん

 飼育員歴10年の吉田優明さんは、ゴマフアザラシ(ゴン太くん)のメイン担当です。

 ゴン太くんは「腹筋」をすることで有名になったアザラシですが、「腹筋」をできるようになるきっかけを見つけたのが吉田さんでした。

 「7~8年前、ゴン太くんが偶然した仕草がきっかけでした。最初は背中から反り返るような動きをしていたんです。この動きをお腹側からできるようになれば、得意技になるのでは…と思いました。 

 鼻先を飼育員の手にタッチする動作を「ふんタッチ」と言います。腹を上にした状態で吻タッチできた時にエサを与え、腹筋する姿に見えるよう何度もトレーニングしました。お客さんに楽しんでもらえるような動きになり、よかったと思います」

 吉田さんに、閉館に向けてメッセージを頂きました。

 「魚っ知館の魅力は、生き物たちとの距離の近さだと思っています。お客さんには、最後まで生き物に対する親近感、身近さを感じてもらえればうれしいです」

 ▼思い出の生き物たち、姿を変えて

 ニュース記事では、希少淡水魚についてお話してくださった原口哲史さん。実は、もう一匹思い出の魚がいました。

 「2018年、イガグリフグというハリセンボンの仲間が、近くの定置網で見つかったことがありました。全国でも飼育例の少ない希少な種類だったので、当時はニュースを見て遠方から見に来て下さるお客さんもいて、とてもうれしかったです。2年ほどで寿命を迎えましたが、今は標本にして展示しています」

魚っ知館の入り口を入ってすぐの壁に展示してあります

 死んでしまった後も、姿を変えて展示し続けられている生き物は他にもいます。

2021年の京都新聞紙面から

 2018年に死んでしまったゴマフアザラシのカン太くん。京都新聞の記事は、ペンギンとのエピソードをお話してくださった南大昭さんが、外部の学芸員さんと一緒に2年かけて骨格標本にしたという内容でした。

▼自然でも缶バッジでも「希少」なアユモドキ

 魚っ知館で販売している公式グッズの中でも、「うおっち館バッジ」というオリジナルの缶バッジは大人気。ゴールデンウィーク以降は毎週2000~2500個ほどのペースで売れているそうです。

4月24日の取材時はvol.3が売り切れていました

 実は、私も取材の帰りにどきどきしながらガチャガチャを回しました。すると、天然記念物のアユモドキの缶バッジが…!

 これらの缶バッジは、グッズ売り場でセット販売をしているものなのですが、アユモドキはガチャガチャでしか手に入れることができないそうです。なぜでしょうか。

 缶バッジのデザインを担当されている原口さんによると「アユモドキは、自然で数が減ってしまっている生き物です。缶バッジを通じて『数が少ない』ということを知ってもらい、希少な生き物たちに関心を持ってもらえればと思い、ガチャガチャ限定にしています」とのことでした。

 思い出の生き物たちの標本からオリジナルグッズまで、6人の飼育員さんたちの細やかな心遣いが随所に光る魚っ知館。閉館は、2023年5月30日です。


廣瀬 聡子


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