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写真を無断使用されて仕事を失う?

好きなタレントの写真を自分のPCに保存する。それだけなら個人の趣味の範囲としてカワイイものですが、それを勝手にビジネスで使ったらはっきりと問題です。下手をすれば訴えられます。

写真の無断使用といえば、北野武さんがネタにしている昔話があります。若手時代、歌舞伎町を歩いていたら知らないオジサンが近づいてきて、写真を撮らせてほしいとせがまれ「いいよ」と応じた。そしたら数日後、ある風俗店の看板にそのときの写真が貼り出され、「たけしさん推薦の店」と書かれていたとか。本人が「ひでえよなあ」と笑って話しているので問題にはしていないのでしょう。しかし、写真の無断使用は、場合によってはタレントが深刻な被害を受けることがあります。今回は、タレントにとっては踏んだり蹴ったりのお話です。

「事件」の発端

数年前、タレントの眞鍋かをりさんの顔写真が某政治家のポスターに使用されたことがありました。これにより、眞鍋さんは当時レギュラーだったTV番組の出演に「待った」がかかりました。これはTV局各社のルールで、特定の政治家を支持しているタレントが公共の電波で顔を出すことは選挙の公平性を損なうとみなされるからです。ただ、眞鍋さんは自分の写真が使われたことはまったく知らなかったと困惑。そして、自分のブログで「特定の政党や政治家の応援はしていませんし、応援コメントも出していません」とはっきり意思表明したのでした。(なんと某スポーツ紙には、その政治家を応援する眞鍋さんのコメントまで掲載されていたのです)

意外な展開

これでポスターは撤去され、政治家お決まりの「スタッフがやったことで私は知らなかった」みたいなコメントが出ると予想していたら、話はややこしくなります。政治家氏が「紹介者を介して眞鍋さんの事務所に許可を得ているので、ポスターを撤去するつもりはない」と強硬姿勢を見せたのです。

じゃあ「紹介者」ってだれ? という世間の疑問に応えるように、あるキャスティング会社(おっと同業者)の社長が名乗り出ます。以前に眞鍋さんはその政治家氏と対談したことがあるらしいので、その際にキャスティングを請け負った人でしょう。紹介者氏は、「自分の説明不足で迷惑をかけた」と陳謝し、政治家氏も「眞鍋さんに迷惑をかけるのは本意でない」とポスターの撤去を決定。眞鍋さんも仕事に復帰し、いちおう事態は収束したのでした。けど、どう見ても紹介者氏が一人で悪者を引き受けた印象。なんだかなあと思ったものです。

開かれることのない「演説会」

ここでちょっとした豆知識。眞鍋さんの写真が使われたポスターは選挙ポスターではなく、政治家のPRポスターでした。選挙公示前に選挙ポスターを作って貼ったら公職選挙法違反なので、そうではないですよ、という建前のもとに作成されるのがコレ。選挙活動でないことを明確にするために、多くの場合、ポスターは「演説会の告知ポスター」とされます。画面にはポスターを作った政治家本人ともう一人誰か(たいてい所属政党の代表者)の写真が並べられ、「演説会」なので「弁士」と書かれていたりします。が、この「演説会」が開かれることはありません。

騒動の政治家氏も、並べるのは自分のボスの写真を使えばよかったのに。過去に対談したとはいえ芸能人の写真を並べたのはうかつでした。まあ、写真を勝手に使われたらボスでも怒るか。

呼び屋の考える「事件」の真相

想像するに、政治家氏の陣営は無断で眞鍋さんの写真を使ったのだと思います。事務所に問い合わせて許可が出るはずがないし、キャスティング会社の社長も相談されれば絶対止めるはずです。タレントに特定の政党や政治家の色がついたら確実に仕事が減ります(元首相の孫であるDAIGOさんが選挙期間中にNHKに出られないのは有名な話。彼は自民党を支持していると言ったこともないのに、そういう扱いなのです)。そんなリスクを押して、親類でもない政治家に肩入れする理由がありません。

ただ、政治家氏もここまでコトが大きくなるとは思わなかったのでしょう。すぐにポスターを撤去すればよかったのに引っ込みがつかなくなり、かといって写真の無断使用を認めるのはさすがに政治家として格好がつかない。そこで、キャスティング会社の社長氏に泥をかぶってもらったのではないかと。あくまで想像ですよ。

皆さんも、もしタレントと写真を撮る機会があったとしても、撮った写真は自分だけの宝物にしておいてください。あなたが政治家ならとくに。

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