シニアモデルの奥様方
最近はいわゆる「シニアモデル」のお問合せをいただくことが増えました。世の中が高齢化し、高齢者向けの商品やサービスが増えたせいで、それらの広告に高齢者のモデルが求められているというわけです。無料素材もおじいちゃん、おばあちゃんの写真やイラストがずいぶん充実してきました。とはいえ、オリジナルの写真でWebサイトやパンフレットを作りたいという企業は多く、我々にお声が掛かります。
シニアモデルの手配を依頼されたら、著名人を指定されるのでなければ、たいていはモデルクラブにお願いして登録モデルを紹介してもらいます。最近は「未経験でも登録可」をうたうモデルクラブがちらほら出てきましたが、モデルという仕事を甘く見てはいけません。サマになるポーズを取ったり表情を作ったりするのは立派な技術、それなりに経験を要するものです。そういうわけで、私が仕事を依頼するシニアモデルは、ちゃんと「基礎のできた」方をお呼びしています。
シニアモデルの女性の多くは、若い頃からモデルの仕事をしていて、結婚を期に一度は引退し、子供が一人だちした後に仕事復帰した人が多いですね。比較的裕福な暮らしをしている方が多く、やはり美人はお金持ちと結婚しているのだなあ、とため息のひとつもつきたくなります。実際、「モデル業で生計を立てている」人は皆無で、むしろ「一年に数回、気分転換に仕事する」副業感覚の人がほとんどです。「条件(ギャラよりむしろ拘束時間)がよろしければお仕事をお受けいたしましてよ」な感じで、それでいて一日で新卒一年目の月給分くらいは稼いでしまう奥様たち。モデルが簡単な仕事ではないと理解しているつもりでも、何となく複雑な気持ちになるのは分かってください。
ひがみ半分でちょっとだけ苦言を披露させていただくと、シニアモデルの奥様方の撮影に立ち会うと、若いモデルよりもはるかに消耗します。よくあるのが「迷子」事案。登録モデルは現場にマネージャーがついて来ることはないので、よく迷子になるのです。
ある奥様は電車の駅の真ん前のスタジオにお呼びしたのに、一つ隣の駅付近から「場所が分かりません~」と泣きそうな声で電話がかかってきました。別の奥様は郊外のロケ地での撮影後、現場まで自家用車で来たというのでその場で別れたら、約30分後に「道が分かりません~」とやはり泣きそうな声で電話がかかってきました。そのとき私は帰りの電車に乗る寸前だったのですが、引き返して奥様を「救出」したのでした。
迷子ではありませんが、こんなこともありました。あるシニアモデルの奥様は、電車の駅で待ち合わせて一緒にタクシーでロケ現場に行く約束だったのに、「遅刻しそうだったから」と自宅から夫の運転する車で直接現場に行ってしまったのです。連絡もなく。約束の時間を過ぎても奥様が現れないので私がロケ現場に「モデルさんが来ません!」と連絡を入れると、代理店営業氏は「もう来てますけど」。現場は私が単独で遅刻したと認識していました。それはないよ。予定外の行動を取るなら連絡を入れるとか、社会人として最低レベルの常識は持っていてほしいもの。
こんな感じで、シニアモデルの奥様方は「お嬢様」がそのまま年をとったような世間知らずの人が多いのです。ただ皆さん性格はよろしくて、行動は間抜けなのにどうにも憎めない。まあいろいろありますけれども、基本的には頼りにしていますので、今後ともよろしくお願いします。
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