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舌ブラシでは不十分! 口臭の原因となる舌苔を減らす、歯科医師が推奨する『正しい舌のケア』とは。(前編 舌苔とは)

皆さん毎日舌のケアしていますか?

最近では、風邪・肺炎・インフルエンザ等のウイルス感染の予防にも有効と言われ、取り組まれている方も多いのではないでしょうか。

舌のケアというと、「舌ブラシで、舌苔をお掃除するんでしょ。」とお答えになる方が殆どです。
しかし、『舌ブラシで舌苔を掃除するだけでは根本解決にならない。』のです。歯ブラシで歯垢(歯の汚れ)を取り除くのと、舌ブラシで舌苔(舌の汚れ)を取り除くのとでは、少し意味が違います。詳しく見ていきましょう。

お急ぎの方は、前編-3か、後編-1からお読みいただいても良いかと思います。

舌ブラシ(舌専用の清掃用具)

舌の表面はどんな形?(前編-1)

舌を鏡やスマホで見ると、表面がツルっと滑沢ではないと分かると思います。舌の表面は、無数の舌乳頭(突起状の特殊粘膜)で覆われています。

舌表面の状態と糸状乳頭の模式図

糸状乳頭は、図の様に微細な凸凹を舌表面に形成していて、皮膚などのターンオーバー(皮膚や粘膜の新陳代謝)と同じく、一定の器官で新しい細胞に置き換わり健康な状態を維持しています。

舌苔って何?(前編-2)

舌苔とは、糸状乳頭(舌表面の突起状の粘膜)の新陳代謝により剥がれたカスと、食渣(食べかす)と、細菌やたんぱく汚れが蓄積した汚れの塊です。

舌苔の模式図
舌苔が付着した状態

この舌苔は、はじめは薄い白色をしていますが、細菌や食物残差(食べかす)が堆積し厚みが増すと、徐々に黄色味がかった色に変わっていきます。さらに、抗生物質(化膿止め、細菌をたたくお薬)を沢山服用したり、長期間のみ続けたりしていると、菌の性質が変わってしまい黒色に変化することもあります。他にも、お薬の残留とお茶の影響によって黒くなることもあります。

高齢期の舌の状態

舌苔の状態にも上の写真のように、湿っているが付着している(1)、乾燥して付着している(2)、乾燥して黒色変化し付着している(3)など様々です。また、加齢により絶対付着してくるものでもありません。上図は、皆さん85歳以上の方の写真ですが、4のように目立った舌苔の無い方もおられます。

舌苔は何故たまるの?(前編-3)

舌苔の原因として次の様なものが考えられます。

  1. お口の乾き(口呼吸や薬の副作用での口腔乾燥)

  2. 唾の減少(唾液分泌量の低下)

  3. 舌の力の衰え(舌筋力の低下)

  4. 舌の動きの巧妙さの低下(舌の巧緻性低下)

  5. お口の中が汚れている(口腔衛生状態不良)

この様に、単にお口の中が汚れているからだけではなく、お口の機能の低下によって舌苔は付着し増加していきます。このため、舌の表面を舌ブラシでお掃除するだけでは、根本解決にならないのです。
少し詳しく見てみましょう。

1.お口の乾き
2.唾の減少
唾液の効果である自浄作用(生体に備わったキレイにする力)が低下してしまうために舌苔が堆積してしまします。
『口の乾き』の原因には、唾のタンクである唾液腺の萎縮や炎症、シェーグレン症候群という自己免疫疾患(自身の免疫が自分を攻撃してしまう病気)、糖尿病、お薬の副作用、放射線治療、ストレス、サルコペニア(筋量・筋質の低下)、口呼吸が考えられます。

3.舌の力の衰え
4.舌の動きの巧妙さの低下
舌は、焼き肉のタンを想像していただくと筋肉の塊なのがわかるかと思います。そして、本来リラックスしている時の舌のポジションは、舌先が上の前歯の裏位、中央は上顎と触れる様な形で維持しています。
咀嚼(もぐもぐ)、嚥下(ごっくん)時に上顎としっかり擦れることで舌に付着した汚れは落とされます。
しかし、舌の筋肉の中に脂肪が入り込み筋力が低下すると、上顎と擦れる機会が減ります。さらに、話す機会が減るなどの影響でも、舌の動きが落ち、唾の量が減ることで自浄作用は低下してしまいます。

この結果、舌苔は堆積していくのです。

ではどのような対応をしていけばよいのでしょうか。後半は、日々実施できる具体的対応について見ていきましょう。 



少し専門的な話になるので、ここからは参考程度に。ストレスでは交感神経優位になるため、唾液量が減少します。極度の緊張や、集中をしいられる作業によっても生じます。糖尿病では、糖を含んだ濃い尿が排出されるため、全身の中で尿管側に水がかたより脱水を引き起こし、口の乾きがでます。
お薬の副作用では、抗コリン薬(抗不安薬、抗うつ薬、過活動膀胱治療薬)、抗アレルギー薬(抗ヒスタミン薬)、胃薬(H2ブロッカー)、抗がん剤、降圧薬(カルシウム拮抗薬)などが挙げられます。お薬の説明を頂いた際の副作用の欄に『口渇』と記載があればお口の乾きがでる可能性はあります。


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