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(ガバメントクラウド )ガブクラ認定CSPがAWS/GCPになった話の議論について

書く題材を探していたところ、そういえばこんな投稿見たなと思いまして、実際のところどのくらい日本にとって都合が悪くなるのかなと調べてみようと思い立ちました。最初は面白おかしく書こうと思ったのですが実際自分も調べてみたいし真面目に調べてみるかとなったのです。

元々はどこからこんな議論になったか

ABEMA TVの「ひろゆき&柏木由紀と考える総選挙」でひろゆきさんが牧島大臣に「サーバーとかネットワークでお金かかり続ける。データセンターに落ちる金が外国を選んだのは?」と聞いたらしいです。そこに対して楠さんがTwitterで「古風なんだな」と呟いたと。もう少し二人とも語っているのですが長ったらしくなるので最初はそこまで詳しく書きません。

各人何が言いたかったかを読み解く

もうABEMA TVの視聴期間過ぎちゃったので大臣やひろゆきさんの言いたいことは記事からしか読み解けないのですが、私の読み解きとしては下記のような感じかなと思いました。

牧島かれん大臣:要件(仕様書)を定めてクリアした業者を選定した。入札の結果で技術的な選定基準もあるため公平である。

ひろゆきさん:イノベーションするためのお金を米国のサーバー会社に払ってる。トラブルを起こさないだけで選ぶと日本が成長しない。みんな米国になる。日本のITが浮上することはないなって確信しました。僕がやるなら日本のサーバー事業者を標準にする。

楠さん:日本企業からサーバーを買ったところで台湾製、部品も米国、韓国、中国製で日本に金が落ちる訳ではない。予算が湯水のようにあるわけでもなく、スケールすることも考えにくい日本で合理的に判断する場合、外資CSP(クラウドサービスプロバイダー)を活用してその利用方法を公共SEが勉強する方が即効性がある。

前置きはこんなところで

さて、上の意見が噛み合ってないというのはTwitterでも一部呟いてる人がいましたがその通りだと思います。かれんさんは質問に回答してないし、楠さんはタイトルくらいしか中身を見ない傾向があるので今回も同様なのでしょう。少しずれてるというか局所的にしか回答できていません。で、そんな中私が何に気になったのかというと「クラウドのコスト構造ってどんなんやろ。実際日本リージョンでやるんなら影響もあんまない気がするな」ということです。それでは本題に入って調べてみましょう。

※日本リージョンでやることは調達仕様書に明記されていました

クラウド(データセンター)のコスト構造は?

ただ、クラウドの管理階層はそんなに簡単ではないので分かりやす目のデータセンターを基準に考えてみました。正直外為法など法律を熟知してるわけではないのである程度営業利益から先のものについては説明を省いていきたいと思います。あと、補足ですが先ほど当たり前のように「日本リージョンでやるんなら」って書きましたが、これは調達仕様書にそれが明記されていたからです。

リンクを貼った記事のように、データセンターが外資CSPと契約してるからと言ってその中身全部が外資由来かというとそんなことはありません。少なくとも「人」、「ビル含めたインフラ」、「土地代」は現地で確保する必要があります。ただ、サーバ・ネットワーク・ストレージあたりはBIOSレベルで本国仕様になることが考えられるためこれらは本国側営業所、OS以上のソフトウェアはもちろん本国でしょう。

外資ベンダの本国からすれば、「売上」からこれらのデータセンターにかかった費用、そして日本法人で働く人の人件費を引かれることになります。この先は営業利益から先の話になるので飛ばします。

結局どれだけの金額が外資ベンダに流れるか?

先ほどまで整理した内容をまとめますと、

(国内)土地、運用費(現地管理)、データセンター(電気等含む)

(国外)ハードウェア、ソフトウェア、運用費(遠隔管理)、営業利益

となります。ハード、ソフトは日本でもほとんど外国のものを利用している方がほとんどだと思いますのでそれは置いといて、やはり営業利益分が問題だということでしょう。クラウドベンダの営業利益率の中央値を取りたかったのですがAWSが大幅プラスでGCPが赤字ギリギリぽいのであまり参考になりませんでしたが、AWSであれば少なくとも支出の1/3くらいは国外にお金を出していると言えそうです。これをイノベーション代として国内に出せというのがひろゆき氏の考え方のようですが、AWSとGCPであればポータビリティも良いですし別出して並行して進める形でもいいんじゃないかと個人的には思います。

もちろん、このクラウド環境を作り上げるには使われるツールだけではなく、運用含む設計部分だったりサービスとして使うためのフロント構造の検討が必要でもあるため上記のような簡単な計算だけでは成り立ちません。エンジニアとしては見逃せませんが、その辺りは国民感情的に意識されない部分かなと思いましたため今回私の考察には入れていません。そこまで言い始めると接したこともないエンジニアの質だったり経験についての言及が必要なため不毛なんですよね。

多分自分なんかよりも正確に理解されている方がいるだろうとは思うのですが、一般人からすればこれくらい理解すればいいかな。。。

最後に、今回の騒動の所感として

中にいる人ではないのであくまで推測の域を超えないのですが、今回のガブクラ選定は令和4年3月までとなっていますし、それに合わせて自治体の先行事業を行うためのものと考えられます。リフト&シフトのみしか許されない条件を出されておりJ-LIS ASP関連の事業者も入ってこれない条件なので現時点でガブクラに入るメリットがあまりないです。そのため、国内クラウドベンダも今回の選定結果自体はさほど気にしていないと思います。仕様書がえぐかったのでこれからその仕様を落とす攻防戦みたいなのは発生するでしょうが。。。まぁそれは大手の一部が考えれば良いこと。

何が言いたいかというと、誰でもいいのでなぜ「今回の選定は来年3月までの契約となり、その先に協力いただける事業者を国内にも募っているところです。日本国内の事業者の皆様、是非皆様のお声を政府に届けてください」と言えなかったのかということです。印象悪くしたまま臭いものに蓋をするのでなく、一緒に協力して良いものを作りあげようぜという雰囲気を醸成するのもデジタル庁の広報的役割だと思いますので頑張って欲しいと思います。

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