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松田昌大さん-大躍進する海士町のふるさと納税の裏側に迫る!-

To Be Dozen』プロジェクト
 2020年から現在まで、新型コロナウイルスの影響で島前地域の多くの人々の生活や交流に変化があったが、この変化は島前地域の魅力について深く考える一つのきっかけにもなったのではないだろうか。そして、この島前地域はこれから、さらなる変化を遂げていくことだろう。
 そんな今、「働く場所が島前である」「学ぶ場所が島前である」「人生の1ページを刻む場所が島前である」意味はなんなのか。「島前が島前である」ためには何が大切で島民は何を願うのか。そんな島前地域の人々のストーリーと想いをのせた記事を作りたい。そして、これから私たちはどこへ向かうのかを皆さんと一緒に考えたい。        
                    隠岐島前高校2年 高橋恭介

             
『(株) AMA holdings』が海士町の第三セクターとして積極的に取り組んできた「ふるさと納税事業」。納税と返礼という単純な関係を超えた『海士町未来共創基金』の仕組みはこの会社のコンセプトである「あらゆる境界を超えて」を体現しているように感じる。

2020年12月、海士町のふるさと納税寄付総額は1億円に達し、2021年には2.15億という新たなボーダーを超えていった。そんな怒涛の2020年に海士町に移住し、このふるさと納税事業に取り組み、偉業の立役者の一人となったのが松田昌大(まつだまさひろ)さんだ。

松田昌大(まつだ まさひろ)
1994年 生まれ・鳥取県出身 / 2017-2018年 世界一周旅行を経験 / 2019年 バンコクの人材会社に就職/ 2020年 海士町に移住・(株) AMA holdings
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コロナ禍の柔軟性に惹かれて移住 

世界各地を旅した青年が次に選んだ舞台は行ったこともない島根県の離島だった。松田さんは今、海士町の(株) AMA holdings でふるさと納税事業担当として働いている。2年前まではタイ・バンコクの人材会社で駐在員営業マンとして働いていたが、新型コロナウイルス感染症の影響で会社の事業が縮小。駐在員には帰国命令が出たため、急遽東京での仕事を言い渡されたが、会社から提示された仕事は松田さんの心を惹くものではなかったという。

そのため帰国する直前に転職活動を開始し、多くの企業に問い合わせたが、どこも「面接は対面だけ」と跳ね返されたそうだ。そんな中、タイと日本のリモート面接を快く受け入れてくれたのが以前から関心を寄せていた海士町の(株) AMA holdingsだった。

「その時、日本海に浮かぶ島の会社、ましてや自治体が出資しているほぼ自治体の会社が、当時まだ多くの企業がコロナ禍での対応に足踏みをしている中で、こんなにも柔軟に対応してくれるのかと驚いた」と松田さん。この頃、海士町は島前高校のオンライン授業実現の圧倒的なスピードでも注目されていた時期だった。

また、松田さんは元々学生時代から島後(隠岐の島町)との関わりがあり、機会があれば60代くらいで隠岐に移住したいとも思っていたそうだ。このような経緯から、面接から2ヶ月後の2020年8月、未上陸の島に直感で移住した。

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海士町だからこその1億円

2020年、海士町はふるさと納税寄付総額1億円を達成した。人口約2200人の離島としては異例の結果だ。前年の2019年の海士町の納税額は4000万円弱。それを「1年で2倍以上に」。

なぜこんなことが実現できたのか。その理由を聞くと目標であった1億円を達成するために行ったふるさと納税改革は大きく分けて二つあったと教えてくれた。

「一つ目は返礼品をどんどん増やすことです。改革を始める前まではそもそも出品数がとても少なく、海士町の魅力が十分に発信できていなかったんです。それは凄く勿体ないことですし、海士町のことを知ってくださった方々から”この商品が欲しいのに、返礼品の中にない”というご意見もいただいていたので力を入れました」。そう言われ確認してみると、2019年の出品数が77品目に対し、2020年の出品数は200品目強(2021年 11月 時点)。現在の返礼品には、海士町を代表する商品である「岩牡蠣 春香」や「隠岐牛」だけではなく、海士町で作られた米や酒、茶碗などもあった。

二つ目は過去納税された方や、海士町と関係を持っていただいている方々に片っ端からアタックしたことです。」元々人材畑で働いていて、通販事業についてのノウハウが無かったため、やれる事はその時あったリソースをフル活用することだけだったと松田さんは語る。確かに海士町は離島の小さな町だが、その「攻め」の戦略が注目され「町のファン」も多い。(株) AMA holdingsは「島内外のリソースをつなぐ会社」と銘打っており、まさにその「関係人口の多さ」を活かしていると言える。

松田さん自身、「もう一度海士町に力を貸してください!」と多くの方々に連絡をする中で、この島が愛されていることや皆さんの島への思いいれを肌で感じたそうだ。

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広がる可能性

 話を聞けば聞くほど、ふるさと納税一億円越えは奇跡でもなんでもなく、緻密な戦略と大人たちの必死の努力の上でなされたことで、必然の結果だったのだと感じとった。松田さんにこれからの目標を尋ねると、「3億円」という答えがすんなりと返ってきた。

が、そこには確かな自信があるように感じられた。21年には『ふるさとチョイスアワード』で大賞(未来につながるまちづくり部門)を獲得するなど快進撃が止まらない海士町のふるさと納税事業。これからもまだまだ事業の幅、人の環が広がっていくことだろう。

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(松田さん)事務所でのワンショット

「まずは、3億円。そして将来はこのノウハウを海士町だけでなく西ノ島や知夫里島、島後にも展開し、足し算ではなく掛け算で新たな商品やサービスを作っていきたいと考えています。隠岐四島、『All 隠岐』で一緒に盛り上げていきたい」と松田さんは語る。

 急激に変化していく社会の中、圧倒的なスピード感でそれにくらいつく海士町に魅せられた松田さん自身が既にその船の舵をきるひとりになっているのを確かに感じた。これこそが私たちの目指すべき「みんなでしゃばる島づくり」の形なのではないだろうか


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