記野式：サクッと！ゲーム業界講座　9月後半号

9月末になりました。まだまだ暑い日が続くようですので皆様も体調管理にお気をつけくださいね。

週末に東京ゲームショウ（TGS）2023が終了しました。私も今年のTGS 2023 は多忙を極めましたが、ポストコロナの大きな反動で、業界の皆様も一様にお忙しかったことだろうなと。

4年ぶりに幕張メッセ全館で9月21日～9月24日に開催されたTGS 2023は、「ゲームが動く、世界が変わる。」をテーマに行われ、たくさんの来場者が入場しました。

コロナ前の2019年総来場者数には届かなかったものの、前年比10万5,046人アップとなりました。

初日にあたる9月21日（木）のメインホールがサウナ状態になっており、熱中症の心配さえ感じられましたが、一時空調が壊れているという情報もありました。事務局からの情報では、最低温度に設定されていなかったのですぐに最低温度に設定したものの、一旦上がった温度や湿度を下げるまでには至らなかったとのこと。2日目は最初から最低温度に設定したとのことで、だいぶ涼しくなっていましたが、まだ人数が制限されているビジネスデーでの出来事なので3、4日目の一般公開日が心配されていました。一般公開日は「暑い」などのクレームは上がっておらず、無事終了を迎えたようです。ホっ。

TGS 2023自体は入場者もたくさん見られ盛況だったと言えますが、プラットフォーマーの不在、ハードウェアも含め大型新作の発表などに欠け、業界としてのプレゼンスとしてはそれほどのインパクトはなかったとの総評です。ヨーロッパの Gamescom 2023、アメリカの PAX West 2023 などを終えた後のTGS 2023ですから、欧米からのメディア来日や商談もいまひとつだったと感じているのは私だけではないでしょう。

ただし、アジアの勢いは感じましたね。Netease、Mihoyoのブースの大きさにも驚きました。Tiktokもいましたね！

そんなTGS 2023明けの9月後半号、もりだくさんのデータでお送りします。アメリカ市場データCircana（旧NPD）の8月分、ヨーロッパ、イギリスの8月のゲーム市場、8月のPSNゲームランキング、それから8月の世界のモバイルゲーム市場についても報告します。

なお、本記事での為替レートは1ドル＝148円で計算しています。さらに円安が進んでいます…。

＜記野式まえがき：「ポリコレ」のお話＞

最近よく話題になっている「ポリコレ」ってご存知でしょうか？正式には「ポリティカル・コレクトネス（political correctness）」。政治的な妥当性や公平性を求めることを指しています。この言葉には社会の特定の人たちに不利益や不快感を与えない意図で計画された政策、さらに進化して人種、信条、性別、体型などの違いによる偏見や差別を含まない中立的な表現や用語を使用することを指す言葉です。

総じて「偏見や差別をなくす」ことを指していますが、最近この言葉が独り歩きしているなと考えていました。

このトピックを書くことを私は長い間躊躇していました。なぜならナーバスな話題であり、書き方によっては誤解を生んでしまう内容になるからです。しかし、TGSのちょっと前にアメリカ大陸出張をしてある発見をしたのです。その話はまえがきの最後までお待ちくださいね。

１．ポリコレで変わったコト

実は私は「LGBTQ」を取り上げることが好きじゃなかったんです。なぜならずっと感じてきた「女性蔑視」や「人種差別」は含んでないから。どうせならマジョリティではないことを全部含んだ「ダイバーシティ」や「ポリコレ」のほうがすんなり来るなと思っていました。

ま、その流れで日本でも無意識に使っていた言葉まで変わってきましたね。保母さんから保育士、看護婦から看護師、スチュワーデスからCA（客室乗務員）。ジェンダーフリーな言い方になりました。これなら男でも女でもノンバイナリー（性自認が男性でも女性でもなく、どちらかの枠組みに自分を当てはめない考え方）でも当てはまりますからね。

２．ポリコレのコンテンツへの影響

コンテンツ業界にいると、最近「ポリコレ」の流れを強く感じるのですが、皆さんいかがですか？ポリコレを意識した映画は、人種、性別などに配慮がされており、特にキャスティングの意味で黒人やアジア人が採用され、女性メインのストーリーになりやすい傾向にあります。

しかし、ポリコレを守るために物語の前提をくつがえすことにもなり兼ねず、原作や世界観を変えてしまうことにもなります。誰もが受け入れられる差別のまったくないコンテンツは、もしかしたら刺激を求めて消費するエンターテインメントには向かないのではないか？という声も聴かれます。