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誰がVtuberを殺したか?

本noteのタイトルは名著『誰が音楽を殺したか?』より引用しました。

先に補っておかなくてはならないのですが、このnoteはホロライブの潤羽るしあさんが契約解除されたことを機に書いたわけではありません。
元々2/24の夜に投稿予定だったものであります。

そしてこんばんは、競馬実況Vtuberの京野聖也です。

長くなるのでさっそく本題です。

・四天王の時期からVtuberは好きだったけれど、
 最近のVtuber業界に違和感を感じている。

・昔からVtuberは好きだったのに、
 いつのまにか心が離れていた。
・今でもVtuberを追ってはいるが、
 昔ほどの楽しさはない。

統計を取ったわけではなくただの持論ですが、そう感じている方って結構な数いるのではないでしょうか。

私もその一人で、現状Vtuber業界に対して思うことを以下にまとめました。

現状トップを走る層のVtuber運営企業に対して辛辣な物言いもあるため、そこのファンが読めば不快に感じる可能性が高い内容です。

ですがそれ以上に、自分と同じ境遇のVtuberファン(もしくはかつてファンだった方)に届いてほしいと願って記載している次第です。

先にちょっと宣伝。
過去に「Vtuberは何故流行ったのか」というnoteを書いたりしました。
お時間ある方はぜひこちらからご覧ください。

私がVtuberを知ってから熱が冷めるまで

過去に何回か記載している内容ではありますが、改めて私がVtuberを知ったきっかけや推す熱量について記載いたします。

私がVtuberを好きになったのは2017年12月16日。
何故ここまで詳細に日付を覚えているのかと言いますと、富士葵さんが「なんでもないや 歌ってみた」の動画を投稿した日だからです。

確かTwitter上と記憶していますが、
「凄いVtuberがいるぞ!」とバズっていた。

当時大学生だった私は「Vtuberとは何か」すら全く知らなかったのですが、
漠然とではありますが「将来はエンタメ業界に入りたい」と考えており、
噂されている動画を観てみました。

そうしたらもう驚きました。
伸びやかさのある歌声に圧倒されただけでなく、
現実と融合したトラッキング技術。

全てが新しく、一瞬のうちに富士葵さん並びにVtuberというものに心惹かれました。

「Vtuberって何なんすか!?」

時間とエネルギーだけはあった私は、有り余る活力の全てをVtuberというジャンルの掘り下げに費やしました。
具体的な数は覚えていないのですが、1日に5時間以上はVtuber関連の動画を視聴していたし、そのなかでも特に気に入ったVtuber、少なくとも50人以上はチャンネル登録していたと思います。

それだけ熱を持って追っていて自身もVtuberになったのに、Vtuberへの熱もいつのまにか冷めてしまいました。

ハマったきっかけはあるのですが、冷めたきっかけは特に思いつかないんです。
何か具体的な出来事があったわけでもなく、追うことに疲れてしまったわけでもなく。
まあ熱したものはいつか冷めます。

自分のなかでのブームが終わった。
なんとなーくVtuberから心が離れてしまった。

そう思っていました。

ところが、昨年の12月に起きたあるVtuberと衝撃的な出会いは、心の中にモヤモヤと残っていた「Vtuberから心が離れた理由」が言語化されるきっかけとなりました。





あるVtuberとの出会い

「サンリオバーチャルフェスでとんでもないパフォーマンスをして話題になったVtuberがいる」
そんな内容で、昨年の12/31に行われたぽこピー批評にて、ゲスト登場されたのがキヌさんです。

お恥ずかしながらぽこピー批評にて、初めてキヌさん知ったのですが、
その際に流れた映像に2021年で一番の衝撃が走りました。

まだご覧になっていない方は、以下のリンクから観てください。
というかこのnoteに関してはこの動画が答えなので、以下の長々した文章は読まなくていいです。
誠にありがとうございました。

これを初見で観たときに本当に涙が出そうになりました。

心に浮かんだ単語は「ヤバい」「凄い」、語彙力消失。

縦横無尽に飛び交う言葉がキヌさんの世界に落とし込まれて溶け込んでおり(ニコ動コメント機能に影響を受けていそう)、ポエトリーリーディングの洗練された一言一言は2017年からVのオタクをしていた自分に鋭く尖って突き刺さりました。

目から入る情報、耳から入る情報、全てが凄かった。

そして何よりも湧き上がってきた感情は「エモい」
12/31から連続で10日間ぐらい、毎日この映像を5回は観ていたと思います。

そしてあるときにエモさの正体に気がつきました。

「これ2017年の自分がVtuber業界に期待していた光景だ……」





言語化された冷めたきっかけ

のじゃロリさんがポッキーを振り回していたころの自分は
「Vtuberの技術は今後ますます進化して楽しませてくれる」
と思っていました。

同時に、
「Vtuberだからできることはまだわからないけれど、ここにいれば常に自分をワクワクさせてくれる」
Vtuberという場所をそのように感じていました。

今はどうでしょうか。

今のVtuberの業界に対して
「ここにいれば自分をワクワクさせてくれる」
っていう感覚を持っている人って、ほとんどいないのではないでしょうか?

いや、Vtuber業界今でも十分面白いんですよ?

でも、ここでいう「ワクワク」は「面白い」とは別物です。
ワクワクはニンテンドーダイレクトを観ているような感じで、
面白いは漫才とかテレビ番組を観ているような感じ。

なんとなく皆様に伝わっていると信じています。

だとすれば、私がVtuber業界に期待していたワクワク感。
これが消えたきっかけや理由があるはずです。

ありました。





Vtuber運営企業の功罪

Vtuber業界の流れを省き倒して説明すれば、
「四天王(動画勢)からにじさんじホロライブを中心とした企業勢(配信勢)に勢力が移った」
ということができると思います。

ここの動画から配信へという変化が、
恐らく私の熱が冷めたポイントでした。



まず、それらの変化をもたらした企業について良いように言います。

これらの企業のおかげでコンテンツの運営方法や制作方法が軌道に乗り、Vtuberファンの母数が爆発的に増えました。

そして何より大切なことですが、2017年の1月にYouTubeがスーパーチャットを実装したことをきっかけにライブ配信での投げ銭・グッズ展開などVtuberに関するマネタイズがバシッと確立されました。

しっかり儲けることで技術にも投資を行い日本発のエンタメとして拡大、Vtuberが世界に広く知れ渡ることとなります。

Vtuber業界を圧倒的に成長させた、間違いなく企業各社の功績です。




そして悪いようにいいます。

「実績ある配信者(生主)をVtuberとして新しくデビューさせ稼がせる」という今のビジネス形態が企業によって確立されました。
制作の現場も、最早テレビの現場と大差ないものです。

あれだけワクワクしていたVtuber業界は企業各社の登場によって、
めっちゃありふれた活動をして
めっちゃありふれたマネタイズで稼ぐ
新しさは微塵も感じない
地下アイドルと生主を融合させてVtuberという皮を被せたビジネス
になってしまいました。

作っているものは確かに面白いんです、それは間違いない。
「元々ニコニコ文化が好きだったし、だからかわからないけれど今のVtuberが好きだ」
そんな方も大勢いるでしょう、その方々を否定するつもりは毛頭ありません。

私だって、今のVtuberをそれはそれとしてめっちゃ楽しんでいます。

ただ、今のVtuber業界は2017年の私が期待していた成長曲線と全く異なる方向に進んでいってしまった、それだけの話です。

企業を随分と悪くいってしまいましたが、これって例えるならば
「手塚治虫によって隔週アニメが確立されたけれど、労働現場は過酷なものになってしまった」
みたいな話で、功績のほうが圧倒的に大きいです。
この例えは芯を食っているかはわかりませんが。

ちなみに「手塚治虫はアニメーターの低賃金・過酷な労働環境を生み出した」と言われますがこれは半分間違いで、当時の虫プロは鉄腕アトムを中心としたマーチャンダイジングによって関連商品が爆売れし、働けなくなった者にまで給料を払うほど豊かな資本状況でした。

話が逸れたのでVtuberに戻しましょう。

(2022/2/25追記)
今のVtuberの流れが確実なものとなった瞬間はどこかと言われれば、
ENTUMの解散を挙げます。

もちひよこさんや届木ウカさんのようなクリエイター気質なVtuberも多く所属していたこともあり、企業がVtuberサポート事業から手を引いたことに当時強い衝撃を受けました。

企業ですから何よりもまず儲けなければいけません、経営判断としては当然のことをしたに過ぎないのです。

だからこそ「Vtuberを運営するにおいて配信者(生主)の転生が企業の戦略として正解だった」ということが証明された瞬間でもありました。





なぜVtuberが生まれてヒットしたのか

まずVtuberというものが何故これほどまでにヒットしたのかについて。

詳しくは冒頭に貼ったnoteを観ていただきたいのですが、そこで触れなかった「10年周期理論」について少しお話したいと思います。

10年周期理論とは
「一度流行したエンタメでも10年の時が経てば再び流行る可能性がある」
というものです。

代表例はいくらでもあるのですが一つあげるとすれば大人数女性アイドル
1987年 おニャン子クラブ
1997年 モーニング娘
2007年 AKB48
2017年 乃木坂46、欅坂46、私立恵比寿中学
などなど

何故10年周期でコンテンツが再び流行るのかを自分で考えてみたのですが、

①物心ついていないときに流行ったコンテンツだから改めて観てみると新しく感じる
➁当時コンテンツを満喫していた層が10年経てば社会でいいポジションになっていて「あのときのムーブをもう一度」みたいなことをする

という感じかな~と分析しています。

Vtuberに関してはこれがジャストで当てはまっている。

そしてアイデアは掛け算で成り立つというのも何かコンテンツを作り出すにおいて鉄則です。

Vtuberの技術にあの頃のニコ生を掛け合わせた。

それが企業が作り上げたVtuber像であり、
今Vtuberという言葉が示すものです。

Vtuberに着目したのは慧眼ですし、
形にするまでのスピードもとても早かった。

Vtuber史を観ればわかる通り、企業各社どれもが成功したわけではなくファーストペンギン以外はほとんど倒れてしまいました。

まずチップの文化が全くない日本においてスーパーチャットをマネタイズの軸にできると考えたところが凄いです。

これら企業の経営者は実に敏腕、
私もその元で働いていろいろと学んでみたい。

ただ考えてしまうのは、
「その企業たちがVtuberに金の匂いを嗅ぎつけるのがもう少し遅かったら」

Vtuberは私が期待していた方向に成長していったような気がしてならないのです。

今後のVtuber業界はどうあるべきか

というか、今後のVtuber業界はどうなってほしいかという願望の話です。

端的に言えば、
「今最先端を走っているVtuberさんたちにはそのまま頑張っていただきつつ、技術面で頑張っているVtuberさんにもっともっともっとスポットライトが当たってほしい」

技術面で頑張っているVtuberさんとは例えば
上記のキヌさんですとか
3Dでいろいろやっている衛星ライトさん
VRジャグリングの三珠さくまるさん
などなど

企業各社のおかげでファンの母数は大きく増えましたが、私と同じような境遇でなんとなくVから離れてしまったファンも確実にいると思うんです。

メタバースのブームにも乗っかって、

技術力を持った方が自己表現のためにVtuberの世界に飛び込んできて、
2016年前後に起きた技術的なパラダイムシフトがもう一度起きる。
私のように離れてしまった層が帰ってきて、
新規のファンも増えていく。

そんなサイクルに入る為の先駆けとして、
前述のような技術で頑張るVtuberさんにもっとスポットライトが当たってほしいと思っています。

私なんて技術力はないですし、表現したい世界観もない。
どこまでいっても提供できるものは競馬実況だけですから。
一方的にエンターテインメントを享受する側として、そんなVtuber業界になってほしいなと心から願っています。


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