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新宿のウツボ

【油彩 F40キャンバス】
新宿の大久保のドンキホーテにデカい水槽がある。その中には威風堂々と漂うウツボが2匹いた。それがこの絵のモデルでわたしが描いた絵の中で今のところ最も大きいサイズのものだ。誰が店頭の水槽にウツボを置こうと言い出したのかわからないけど、新宿の雰囲気とウツボのグロテスクさというのは妙に合う。新宿に実際に住んだことはないが、ここで生きて行くにはそれなりのタフさと図々しさが必要なのは肌で感じる。新宿はあらゆる層の人間が共存していて、ビルを何棟も所有しているような大金持ちと、明日の生活もままならない破綻者が隣の席で酒をかわすこともある。どこに魑魅魍魎が潜んでいるのかわからない。ひとりひとりの境遇は本人が口を開かない限り知ることはないので、誰もが得体の知れぬ存在に見えてくる。そういった凄みのようなものを自然に感じさせる者もいれば、必死に虚栄を張っている嘘つきもいる。和気藹々と飲んでいるよう見えるけど、それぞれが「自分はタダモノではない」と思わせるマウントを繰り広げているように感じられる。それがわたしが感じた新宿のイメージだ。


実際の写真

わたしが住んでいる本厚木から新宿までは電車で1時間ほど。滅多に行くことはないし、正直言って用もない。ただ、たまに行くと何かありそうな期待はある。変な人に会えるかも、なんて思ったりする。ウツボはいつ見ても変なヤツだ。海のギャングなんて言われてるけど、あどけない目と少しニヤついているような口元が可愛くてたまらない。顎下のシワシワなところなんか最高じゃないか。ウツボの気持ちはわからないが、話してみるといい奴かも知れないと思わせる何かがある。新宿でもときどきそういう人に会う。

このウツボの絵は神奈川県大和市行われてる大和展に応募したが、賞に引っかかることはなかった(当たり前だけど)が、その代わり一緒に出した牛の絵が大和展市長賞に選ばれた。牛の絵の話はまた今度。

「新宿のウツボ」はわたしのお気に入りの絵で、賞には漏れたが一部の人たちから絶賛された。厚木のスナックのママさんが店に飾りたいと言ってくれたので、買っていただいた。それは賞をもらうより嬉しかった。あのウツボは新宿から連れてきて今もそのまま絵の中で悠々と漂っている。

きょん

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